回収
ラチエ博士が病院で手術を受け、無事に一命を取り留めた。
病院のベッドで窓の外を眺めている。爽やかな風が吹き、日差しが眩しい。
博士はホッとため息をついた。
SSBRのブルック専務に黒いNeon Dustの開発を急かされた。
そのせいで、危うく被験者に殺されるところだった。
(ネクサミリテックから買い取った臓器は欠陥品しかないのか・・・?)
お金を支払って臓器を手に入れて実験に使ったが危うく殺されかける始末である。それも2回も。
世界大戦時に爆死して、脳の保存状態がよかったフロラン。そして、凶悪犯罪の組織の一員で死刑になったシルヴェーヌ。どちらも生命力が強かったから実験が成功した可能性すらある。
被験者への投与は成功したが、アレを軍事転用するのはさすがに恐ろしい。
誰かがハンドクローラーのようなものを作れば、今度こそ私の命はない。
兵士が黒いNeon Dustを使えば、あっという間にこの世はひっくり返るだろう。
そのとき私が生きている保障はどこにもないのだ。
病室のドアがノックされた。『トントンッ』
「どうもイシドール・ラチエさん。入ってもよろしいですか?」
「ああ、どうぞ」
警察官が事情聴取しにやってきた。
体中に殺傷痕がある博士がどういう経緯でそうなったのか気になったらしい。
警察官「まずお聞きした住所と名前はお間違いないですね?」
ラチエ博士「ああ、私がイシドール・ラチエだ。住所も間違いない」
警察官「今回のその体についた傷は、強盗か何かですか?」
ラチエ博士「ま・・・まぁそうだな、強盗だろうな、たぶん」
警察官「では、犯人はどのような姿をしてましたか?」
ラチエ博士「さぁ覚えとらんよ。こっちも必死だったからな」
警察官「なるほど、それは本当にお気の毒でした。また何か思い出したことがありましたら私のほうにご連絡ください」
警察官が一礼をしてから部屋から出ていった。それと同時に窓から瓶型ロボットが顔を出す。
「よぉ!博士」
「なんだ、脅かすな。フロラン」
「まぁそう言うなよ。AIのラチエ博士から聞いたんだ。ズタズタにされたんだってな」
フロランはどこか楽し気だった。同情する気持ちは一切ないようだ。
「何しに来たんだ?」
博士はうんざりした様子でフロランに質問を投げかけた。
「そうそう、黒いNeon Dustが成功してデータもあるっていうから取りに来たんだよ」
「お前、ここは病院だぞ。いい加減にしてくれ」
「それがケネス・ブルックからの命令でもか?」
博士は沈黙した。
(恐らくケネス・ブルックは私が死ぬ前にデータを回収したかったのだ)
「わかったよ。データはAIの私に転送する。そっちでもらってくれ。くれぐれも変な気は起こさないでくれよ」
「ああ、じゃあそういうことなら一旦、研究所に行くよ」
瓶型ロボットのフロランが勢いよく窓から飛び出した。
「おい・・・」博士は唖然とした。
窓の外を見るとドローンに乗ったフロランが飛び去っていった。
忘れていた。アイツも黒いNeon Dustの成功例だった・・・。
フロランは博士の研究所に来たが玄関のドアがロックされていて中に入れない。
「ん・・・?」
『ピピピピコン♪』
ドアの向こうの何かがBluetoothで接続された。ハンドクローラーだ。
「なるほど、コレがAIのラチエ博士が言っていた武器か。どれどれ」
『カチンッ』内側からドアのロックが解除された音が聞こえた。
「これはなかなか便利なアイテムだな」
瓶型ロボットのフロランはハンドクローラーの上に乗って研究室に移動した。
床一面に血がついている。それだけでもハンドクローラーの威力がわかる。
モニター越しにAIのラチエ博士にフロランは話しかけた。
「博士、黒いNeon Dustのデータをもらいに来たぜ」
「ああ、さっき本物から受け取ったよ」
「じゃあこのフラッシュメモリーに入れてくれるかい?パソコンに差すぜ」
フロランはフラッシュメモリーにデータを移した。
パウルが奇妙なものを見る眼差しをフロランに向けている。
「なんだ?鎖につながれてるのか。お前、何やったんだ?」
パウル「助けてー、そこのロボットさん。私は何もやってないんだ」
AIのラチエ博士「そいつはほっとくんだ。SSBRの諜報員対策係だった奴だ。ドジ踏んだらしい」
パウル「クソ!余計なことを言うな!」
ステンレスの台の上には1つ瓶に入った脳があった。機器とつながっている。
モニターに映し出された脳波は、そこにはなかった。
「オレの目的は完了した。帰るよ」
フロランはドローンに飛び乗り、ハンドクローラーを背負って去って行った。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/nf095f3064bc3?app_launch=false
画像はnoteに置いています。




