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ブラック企業のホワイト支店  作者: マツグチラムネ
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第8話 まさかまさかのバックレ事件

登場人物


宮本→主人公

馬渕→仲良くなった同期

毒島→マナー講座の教授

同期1.2.3.4→同期

十二時を少し超えたところでようやくマナー講座は終わった。


皆くたくたの中、講師の毒島はなんとも清々しい表情だ。実にムカつく限りだ。


毒島「はい、お疲れ様でした。えー以上で私毒島からのマナー講座を終わらせていただきます。かなり厳しいことをたくさん貴方達に指導しましたが、これから先貴方達の仕事の中でこの研修の経験が役に立つ時が必ずきます。皆さん、いろいろ辛いこともあるかもしれませんが、心を強くして頑張ってください。本日はありがとうございました。」


宮本(二度と現れるなクソババア…)


皆取り敢えず感謝の意は伝えていたが、絶対俺と同じ気持ちの筈だ。『毒島死ね。』と。


毒島が部屋から出ていくのを確認して、俺たちはようやく息をつくとこかできた。

謎の疲労が溜まったのだろう、皆ぐったりだ。


少し一息つきたいところだが、そんなタイミングで人事が部屋へ帰ってきた。


古田「はははっ、だいぶ毒島さんに絞られたみたいだなお前ら。えー皆さん、マナー講座お疲れ様、今から昼休憩に入ります。隣の部屋にお弁当とお茶を用意しましたので各々取りに来てください。午後は社長からの挨拶と配属先の辞令。そしてその配属先の支店長との面談を経て、写真撮影。最後に1時間ほどの懇親会を行う流れとなっております。一時半から社長がお見えになるので、その時までには席についておいてください。くれぐれもそそうのないよう願います。あっ。あと机ちゃんと直しとけよ。ではまた。」


そう言って人事は再び部屋を出て行った。


宮本(やっと昼食か…)


机を直し、皆弁当を取りに隣の部屋へゾロゾロと足を運んだ。ただ、その足取りはやたらと重い。


そりゃそうだ。さっきまであんな馬鹿げた事をしていたんだから。


皆疲れ切った顔をしており、半数以上は弁当を受け取っても食べずに机に伏せてうなだれていた。多分疲労感の方がつよいのだろう。今は飯など喉を通らないという感じだ。


確かにあれは疲れた。

もう二度とやりたくない。絶対にあのマナー講座、意味は無いと思うのだが、会社が会社なだけにあながち必要になってくる可能性があると考えると、恐ろしいかぎりだ。

俺も食欲はないが、取り敢えず食べとこうと思い、弁当箱を開けた。


宮本(…ショボ、なんだこの弁当。肉系がねぇじゃねぇか。クソが。)


あまりのショボさに少しイラッとしているところに、馬渕が俺の席の隣に座った。

馬渕もまたひどく疲れているようだ。


馬渕「…おう宮本、一緒に弁当食おうぜ。」


宮本「…あぁ、それはいいけどお前顔色酷いぞ。大丈夫か?」


馬渕「大丈夫じゃねぇよ。何だよこの会社。普通するか?土下座の練習とか。一体何の会社なんだよ、ふざけんなよ。てかマジであのババァムカつくんだけど‼︎俺あいつになんて言われたか知ってる?ゴミ人間って言われたぞクソが。」


かなりさっきの研修でストレスが溜まったのだろう。馬渕はかなりキツイ口調で声を荒げて、怒りに震えていた。


宮本(あらら、コイツ結構怒ってるな…)


隣でそうもプンスカされても困るので、俺は何とか落ち着かせようと馬渕を諭す。


宮本「確かにそれはひでぇな。まず土下座の練習なんて普通はしないかもね。まぁ確定ではないと思うけど、俺たち中々のブラック企業に入社しちまったんだからしょうがないっちゃしょーがないと思っているよ。口コミとかもひでぇじゃん、ここ。」


馬渕「やっぱりそうだよな…てかはっ⁉︎何ここブラックなの?」


宮本「えっ、お前口コミとか見てないのか?中々評判悪いぜ、ここ。」


馬渕「えっ、どれどれ………うわっ、マジじゃん。最悪だ……」


これは驚いた。

馬渕はこの会社がブラック企業である事を知らないみたいなのだ。

馬渕は慌ててこの会社の口コミを開きまじまじと調べ出した。そして天を仰ぎ、絶望に満ちた顔をした。


宮本(入社式のメール読んだ時察しなかったのか?てか、俺以外の人達ってどこでこの会社を知ったんだろう?)


少し気になり、俺は馬渕に聞いてみた。


宮本「なあ、馬渕はどうやってここの会社を見つけたんだ?俺は就職課の掲示板に貼ってあった募集を見つけて入ったんだけど。」


馬渕「あ〜、俺も似たような感じだよ。学校の掲示板とかに募集が貼ってあったからさ。」


宮本「へー、やっぱりそんなもんなんだね。」


宮本(なるほど。この会社結構あちこちの大学を回っているんだな。ブラックのくせに。)


そう思いながら俺はショボい弁当を頬張った。そしてふと横を見ると馬渕はまだ口コミを見ていた。

そんなサイト今更見ていてもしょうが無いだろと思い、彼に話しかける。


宮本「おい、食わねぇのか?もうそんなの見てもしょうがないぜ?」


そう言ったが、彼はまだ見ていた。そして数分後急に席を立ち上り俺にこう言い出した。


馬渕「……すまん、宮本。俺今からバックれるわ。人事に俺が帰った事を言っといてくれ。」


宮本「⁉︎」


はぁ?今から?バックれる?


こいつはいきなり何を言い出しているのだ。

食べかけのおかずが口からこぼれるくらいの衝撃な告白だった。


宮本「おいおい、いきなりどーしたんだよ?突然何を言い出してるんだ…」


馬渕「言った通りだ‼︎もーこんな会社辞めてやる‼こんなところで人生を送りたくねぇよ。まさかここがブラックだったなんて…もう最悪だ。すぐにでも転職活動しないと…それに大体企業なんて、探せばこの世にいっぱいあるんだぜ?こんなブラックやところでわざわざ働く意味なんてねぇよ。あの研修とお前が教えてくれた口コミを見てハッキリしたわ。宮本、短い間だったけどありがとな!んじゃ!」


馬渕はかなりキツイ口調で俺にそういうと、食べかけの弁当を片付け、自分の荷物をまとめ出した。


おいおいおいおい、いきなり唐突すぎるだろ。


俺は慌てて説得をする。


宮本「待てよ、入社式の途中でバックレるのは流石にまずいだろ。順序があまりにもぶっ飛びすぎだぞ。冷静になれよ。」


しかし俺の声などもう気にもしないのか、馬渕は荷物を片付けるのをやめない。それどころかかなりの興奮状態だ。


馬渕「いや、俺はもう決めたんだ。こんなところでこれからずっと苦な思いをするぐらいなら、今逃げた方が絶対いい。俺はゴメンだぜ。じゃあな!」


宮本「待てよ!落ち着けって!」


俺は何度も説得を試みるが、もう彼の心には届かないようだった。

こうして馬渕は荷物を持って部屋から出て行ってしまった。 


宮本(マジかよ、あいつ…)


本当に帰ってしまった馬渕に半分呆れたがまぁ彼の気持ちも分からんわけではない。

しょうがねぇかもしれないな。でも取り敢えず人事になんていえばいいんだよ…。


そう思っていると、そんな今の俺たちのやりとりを見ていたのか、今度は周りの連中もざわめき出した。


俺はざわめく方向へ目をやった。嫌な予感がした。そしてその嫌な予感は見事に的中した。


同期1「えっ、アイツ出て行ったぞ。」


同期2「どうする?うちらもやめよーよ!」


同期3「そうだよな、俺も帰るわ。」


同期4 「確かにな。こんな所無理だわ。」


なんと馬渕の姿を見て触発されたのか他の多数の同期達も次々と荷物をまとめ、部屋から出て行き出したのだ。


宮本(えっ、皆さんマジですか?)


本当にこんな事ってあるんだ…

どうしようにもどうする事もできない俺は次々と部屋から出て行く彼らをただ、見ているしかなかった。


そして気づけば部屋には30人近くいた人数が俺合わせてたったの7人になってしまったのだった。


勇者すぎる……………

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