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ブラック企業のホワイト支店  作者: マツグチラムネ
12/35

第11話 帰ってきた人事

登場人物


宮本→主人公

藤原→同期

笠原→同期

石川→同期

山本→同期

古田→人事担当

人事が部屋から出て行ってもう二時間が経過しようとしていた。


おそらくこの後どうするのかで揉めているのだろう。ここまで来るとこんなブラック企業でもさすがにかわいそうだなと思えてくる。

時計を見て藤原さんは少し不安げに言う。


藤原「本当に全然帰って来ないね…もう三時になるんだけど。」


そんな不安げな藤原さんとは対照的にスマホのアプリで遊んでいる笠原がこう答えた。


笠原「いろいろ揉めてるんじゃないですかね?あーも人が帰っちまったんだから、さすがにねぇ。」


藤原さんの呟きに石川さんもゲームをしながらこう反応を返す。


石川「いいじゃない、私たち何も悪いことはしてないし。今はのんびりしてよーよ。あっやった!ゴールドゲットだ!」


中々人事が戻ってこないため、今この部屋はみんなケータイゲームをしたり、喋ってたりとのんびりとした時間が流れていた。 


因みに俺はのんびり窓の外の景色を眺めていた。


ここの会社、意外な事にここは近くに港が見えるのだ。そして中々に景色が良い。

海のない岐阜で生まれ、ずっと過ごしていたせいか、海を見るとなんか少し感動する。


多分海無し県の性なのだろう。


ずっと窓の外の海を眺めていたのだが、ふと一つ気づいた事があった。

朝からいろいろありすぎて忘れていたが、本当だったら今日は大学の卒業式を迎えるはずだった訳だ。


宮本(あーあ、みんな今頃何してるんかな…?) 


そう考えるとなんとなく切ない気分だ。


山本「…宮本くん、ため息なんかしてどうしたの?」


 窓の近くで黄昏れている俺が気になったのか、山本さんが俺に声をかけてきた。


宮本「へっ?あぁ〜実は本当は今日、自分大学の卒業式だったもんだから、ちょっとね。」


山本「あっ、そうなんだ。私といっしょだね。やっぱり皆と一緒に卒業式迎えたかったなー」


山本さんもどうやら俺と同じで入社式と重なってしまい、卒業式に出られなかったみたいだ。彼女もまた俺の横の席に座り、深いため息をついていた。


宮本「山本さんもそうなんだ。なんかいろいろとついてないね、俺たち。」


山本「うん…ちょっとね。」


こんな会話をしているが、俺の頭の中は正直『山本さん、マジでカワイイ。』しかなかった。だってショートボブにホッソリとしたスタイルに顔も結構ドストライクだ。


よし、此処は勇気を絞って山本さんのラインを聞こう。


そう決心した俺はいざ勇気を振り絞り、山本さんにライン交換の話を持ち出した。


宮本「ねぇ、山本さん…」


山本「ん?どうしたの?」


宮本「俺とライ…」


古田「おい、いつまでダラダラしている。さっさと座れ‼︎今から予定を伝える。」


せっかく勇気を振り絞って彼女のラインを聞こうとしたのだが、タイミングの悪い事に小言を挟みながらようやく人事が帰ってきた。


宮本(クソなタイミングで帰ってきやがったな‼︎てかえっ、待って…はぁ⁉︎)


俺を含め、同期の皆全員人事の顔をみて驚愕した。


なんと人事の顔は真っ赤に腫れ上がってパンパンになっており、顔の至る所にガーゼや絆創膏が貼られていたのだ。


絶対何かあったに違いない。

そう肌で感じたがそれ以上は聞きたくなかった。

多分あの顔の腫れ具合からみて、誰かにかなり殴られたのだろう。てか誰にやられたんだよ。リアルパワハラもいいところだ、こんなの今の時代には中々みられないぞ。


慌てて俺たちは当初の席に戻った。


そして一番前の席に座る俺はチラチラっと人事の方を見たり見なかったりと視線をずらすよう努力した。じっくり人事の顔を見ると、傷がかなり痛々しくて恐怖心が沸いてくるからだ。


多分みんなも俺と同じ様な事を思っているだろう。右横の席を見るとさっきまで楽しげに会話をしていた森本さんや石川さんなんかは机に目をやっていたのだ。


しかもかなり膝がガクガクと震えており、怯えている感じになっていた。。

俺たちが座ったのを確認すると、人事は話し出した。


古田「大変長らく待たせたが、今からこの後の予定を発表する。三時半より、社長の挨拶。そのあと会社概要・就業規則の説明、配属先の辞令。

最後は写真撮影。以上の流れに変更だ。答辞、懇親会は省かせてもらう。以上がこの後の流れだ。分かったか?お前ら。」


皆「…………………………」


宮本(あんたの顔が気になって話が頭に入ってこないんだけど‼︎)


本当にマジで気になって仕方がない。ねぇ誰か聞いてくれよ。ねぇ、ねぇ?


また再び静寂がこの部屋に訪れた。そして多分人事もその意味を理解してるのだろう。

はぁとため息をついて腫れ上がる頬を痛そうに撫でていた。しかしまたその静寂を破るように今度はさらに増した大声で人事は怒鳴った。


古田「おい!返事もできんのか⁉︎ゆとりは‼︎」


皆「‼︎‼︎‼︎‼︎」


びっくり仰天。なんて声色だ。あまりの怖さに俺たちは反射的に大声で答えた。


皆『ハイ‼︎」


それはそれは実に素晴らしいぐらいの統一された返事だった。そんな俺たちの返事に少し満足したのか、人事は話を続ける。


古田「では今から社長をお呼びしてくる。お前たちは起立したまま待ってろ。」


そう俺たちに強く言い放つと人事は再び部屋から出て行った。


ようやく社長のおデマしみたいだ。

このブラック企業の親玉はマジでどんな奴なのだろうか、結構興味深いところだ。


正直俺は興味津々だったので、早く来い、早く来いと心の中でそう思っていた。そして数分たたずにその社長は目の前に現れた。

暴力ダメ、絶対

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