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第2話 運命

 時が経ち、リナは死んだ。


 老衰だった。彼女は最期までクロウの手を握り、「またね」とだけ言い残して、眠るように息を引き取った。


 吸血鬼にとって、数十年など瞬きのようなものだ。しかし、彼女のいない世界は、驚くほど色を失っていた。


 クロウは旅に出た。


 ヨーロッパの古城、喧騒のアジア、凍てつく北欧の地。彼はあらゆる場所を歩き回った。


 心のどこかで、彼女が言った「輪廻転生」を信じていた。どこかの街角で、あの勝ち気な瞳を持った少女が「待たせたわね」と現れるのではないか。そんな淡い、あまりにも人間じみた期待を捨てきれずにいた。


 しかし、何十年経っても、彼女は現れない。


 百年が過ぎ、世界は馬車から自動車へ、そしてデジタル信号が飛び交う殺風景な金属の箱へと変わっていった。


 クロウの心は、彼が予言した通りに「摩耗」していった。


 誰と会っても、何を口にしても、かつてリナと過ごした夜の煌めきを超えることはない。彼女の面影を探して彷徨う日々は、終わりのない苦行へと変わっていた。


「……もう、十分だろう」


 ある夜、彼は立ち止まった。


 足元には、かつてリナと出会った場所によく似た雰囲気の、古びた廃病院があった。蔦が絡まり、窓ガラスは割れ、死の静寂だけが支配する場所。


 彼は建物の最上階へ向かった。

手にしているのは、特注の銀の短剣だ。吸血鬼の心臓を貫けば、確実に永遠を終わらせることができる。


「やっぱり、こういう結末か。」


 クロウは自嘲気味に呟き、銀の刃を自分の胸に当てた。


 迷いはなかった。ただ、深い安らぎを求めて、彼は力一杯、刃を突き立てた。

激痛。そして、冷たい感覚が全身を駆け抜ける。


 視界が急激に狭まり、暗転していく。


(ああ、やっと終わる……)


そう思った瞬間だった。


「――っ! ちょっと、何やってんのよアンタ!!」


 耳をつんざくような少女の悲鳴が、廃墟の静寂を切り裂いた。


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