第十三話
更新がめっちゃ遅れました!
次に移動した先は、学園所有の闘技場だ。そこにはかつて無いほどの再び緊張が走る。
先ほどまでのざわめきは消え、代わりに張り詰めた空気が支配していた。
「――第三試験」
試験官の声が低く響く。
「実戦試験だ」
その一言で、空気が変わる。
「今から名前を呼ばれた者同士で戦ってもらう」
ざわっ、と再び揺れる。
「だが、勝敗は問わん」
その言葉に、一瞬安心した空気が流れるが、それはフラグになっちまう。
「だが」
試験官は淡々と続ける。
「“実力”がないと判断した場合、その場で失格とする」
空気が、一気に冷える。
「殺しは禁止だ。だが、それ以外は自由」
なるほど。実質、何でもあり。
「では、始める」
名前が呼ばれていく。
いくつかの戦いが始まる。
火花が散り、土が舞う。
試験官の声が場をしずめる。
「……次」
一瞬の静寂。
「ハレ」
来た。
「対戦相手――」
試験官が一瞬だけ間を置く。
「アレクシス=ヴァルディア」
ざわぁっ!!
空気が一気に揺れる。
「ヴァルディアって……!あの"雷の勇者"の!!」
「名門じゃねえか……!」
あの貴族の少年が、ゆっくりと前に出てきた。
「……やっとか」
口元が歪む。
「逃げずに済んだな、平民」
俺は何も言わず、前に出る。
距離、約二十メートル。
俺とあいつ、ヴァルディアは向かい合う。
「勝負は決まってる」
アレクシスが軽く腕を回す。
「俺が勝つ。それだけだ」
取り巻き達が笑う。
「瞬殺だな」
「さっきのはここじゃ打てねーだろ」
俺は、軽く息を吐く。
(……めんどくさ、けど、怖がらすには、ちょうどいいか)
そうこうしているうちに、試験官が手を上げる。
「開始」
その瞬間。
アレクシスの足元に魔法陣が展開される。
「雷よ!纏え!」
次の瞬間には、すでに詠唱が終わっていた。
恐らくだが、短期詠唱だろう。
「第二位階魔法――雷槍」
バチバチと雷が収束し、空気が震える。
(雷、か……速いな。けど、見える)
放たれた。一直線の雷。
――ドゴンッ!!
爆音が辺りに鳴り響く。
地面が抉れ、土煙が舞う。
「終わりだ」
アレクシスが笑いながら言う。
だが、
「いや」
煙の中から声がする。そう。
「まだだな」
「……!」
土煙が晴れる。
当然だがほぼ無傷で立っている。俺の反応とは裏腹に、アレクシスの目が見開かれる。
「なん、だと……?」
俺は、軽く首を鳴らす。
「今の、ちょっと痛かったかな」
嘘だ。ほぼ無傷だ。
(でもまあ……付き合うか)
右手を上げて、先を潰した透明な剣を生成する。腰に刺してある剣を使わないのは、うっかり殺してしまう心配をなくすためだ。
そんな俺の心情を横目に、周囲がざわつく。
「剣……?」
「魔法じゃないのか……?」
アレクシスが、露骨に顔を歪めた。
「……まだそんなもの使ってるのか」
軽蔑と、一種の恐怖。
そして、はっきりとした声で俺に言う。
「時代遅れなんだよ、それは」
一歩、踏み出す。
「魔法の時代に、“剣”?笑わせるなよ!」
その言葉は、ある意味でのリミッターだったのだろう。
その瞬間、頭の奥が少しだけ冷えた。
(……あぁ。わかってるさ)
そして思い出す。剣を握り、魔物と最前線で戦っていたキーナ。
否定され続けた戦い方。
「……そうか。ならよ。証明してやるよ」
空気が、変わる。
バイロンの目が細まる。
(来るか……)
俺は、一歩踏み出す。
「ニ斬!」
空気が張り詰める。
アレクシスも同時に魔法陣を展開する。
「二撃で終わらせる!」
だが、それは遅すぎた。
「遅い」
アクレシスの視界から瞬時に消える。
「――は?」
次の瞬間。
アレクシスの真後ろに高速移動する。
遅れて気づくがもう遅い。
「なっ!?」
驚愕。
間に合わない。
「又旅」
腰と頭を狙い、2突撃を浴びせる。
音すらも、その攻撃には無い。
咄嗟に発動させたアレクシスの防御魔法ごと、“斬り突いた"。
衝撃で吹き飛び、地面を転がる。
誰も、動かない。
アレクシスは、仰向けに倒れたまま――動かない。
「……勝負あり」
試験官が、絞り出すように声を発する。
その瞬間、ざわめきが爆発した。
「なんなんだよ!今のは!」
「は……?」
「一瞬で……?」
バイロンは、静かに呟いた。
「やっぱり、怪物だね」
俺は、剣を消す。
そして、倒れているアレクシスを見下ろした。
「……剣は、弱くない」
小さく呟く。
「使い手次第だ」
その言葉は、
かつてキーナが言っていたものだった。
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