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No Name's Awakening  作者: 大道福丸
覚醒者の王
141/160

変わるもの、変わらないもの

「皮肉だな……数日前に車を襲撃した我らが今度は襲われる側になるとは……!」

 因果応報を肌で感じ、苦虫を噛み潰したような顔になりながら、杖を手に取ろうとするネイザン。彼に続くように外に出ようとするバーズリーとザット。しかし……。

「ここはオレが出ます」

 それを傷だらけのアストが制止した。

「お前……さっき勝った相手だからって余裕ぶっこいてんなよ。今のボロボロのお前だとエヴォリスト二人相手は……」

「それでも皆さんが戦うよりマシですよ」

「な!?てめえ……!!」

「オレ達の戦いを見ていたならわかるはずです。あの二人は……強い」

「しかも先ほどとは目の色が違うからな……」

 ネイザンはこちらを睨むダドリーとレスコットから先の戦いにあった油断や慢心といった類いのものを感じ取れなかった。代わりに鬼気迫る、死に物狂いといった言葉が過ぎる。

「オレやアルトゥルの影響でしょうね」

「人間はほんの一秒あれば劇的に変化できるものだ。それが良くか悪くかは別にしてな」

「なんにせよ元々ポテンシャルが高かったあの二人が気合を入れ直してきたなら、対抗できるのはオレだけです」

「悔しいが、そういうことだザット」

「くそ!!」

 ザットは悔しさからまた自らの太腿を叩いた。

「すまないが我らはまた足手まといだ。力を貸してくれ青のエヴォリストよ」

「そのつもりだって言ってるでしょ。あとオレの名前はアスト・ムスタベです」

 そう言って名前を名乗ると、アストは車から出て、再び覚醒タッグと相対した。

「お待たせしました」

「あぁ本当にな……車ごと吹き飛ばしてやろうと何度思ったことか……!!」

「だが、そんなことをしても我らの溜飲は下がらない!覚醒状態になったお前を打ち破らなければ……!!」

 二人の情念がおぞましいオーラとなって立ち上るのがアストには見えた。先ほどにはなかった迫力を伴うオーラが……。

(本当に別人みたいだ。手負いの今、この人達に勝てるのか……だが、オレがやるしかないんだ!!)

 アストは傷だらけの肉体に鞭を打ち、闘志を燃え上がらせた!

「アウェイク……オレ」

 戦闘形態への変身を開始

 優男と形容されるアストの全身がみるみるうちに優しい青色をした鱗に覆われ、異形の形に。そして瞳が金色に爛々と輝く。

 いつもよりも傷だらけのアスト覚醒態、今回は襲撃から解放戦線を守るために降臨!

「そうだ……それでいい!」

「その姿のお前を倒してこそアルトゥル氏に我らの価値を証明できる!!」

「他人のつける価値なんかに振り回されても仕方ないだろ。もっと自分に自信を持てよ」

「その自信を砕いたのはお前じゃないか!!」

「必ずお前を倒して取り戻す……全てを!!」


ドロドロ!!


 最初に動いたのは泥のエヴォリスト、ボビー・レスコット。足下から通常のものよりも遥かに粘性が強くまとわりつく泥を地面に広げていく!

「一回見た技なんかに引っかかるか!アウェイクスピード!!」

 基本形態からスピード、そして飛行能力特化形態に。更なる異形の姿に変化したアストは各部から水蒸気を噴射し、空に逃げた……が。

「俺が一度破られた技をそのままやるバカだと思うか!!」

「な!!?」

 上昇するスピードアストの頭上、彼の更に上に現れたのは巨大な泥の手のひら。レスコットは腕を変形させて、虫を叩くようにその巨大な手のひらを振り下ろした!

「潰れろ!羽虫!!」


ヒュン!!バシャアァァァァン!!


「……ちっ!!」

 けれどスピードアストが急速方向転換!上昇に使っていた推進力を横方向へスライドする力に変えて、地面と手のひらにサンドされることをギリギリで避けた!

(さすがだムスタベ氏。この攻撃を躱すとは、どこまで俺の上を……だが、俺達の攻撃はまだ終わっていない!!)

(近くに水がないから地下で使った戦法は使えない。やはり龍輪刃でうまいこと泥の鎧だけを……)

「うおりゃあっ!!」

「!!?」


ガアァァァァン!!


「ぐっ!?」

「ちいっ!!」

 逃げた先に覚醒ダドリーが回り込んでいた!彼はそのままカウンター気味に蹴りを放ったが、これまた驚異的なスピードで体勢を立て直したスピードアストにガードされてしまった。

「また泥から脱出してからの空中戦か……!」

「そうだ!だが、前回とは違う!!」

 覚醒ダドリーは以前と同様ラッシュを仕掛けた!


ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュヒュッ!!


「くっ!!?」

 けれど、結果は変わらず。パンチもキックも今回もスピードアストを捉えることはできなかった。前回よりも小さい、最小限だけの動きで、ものの見事に全部回避されてしまう。

(格闘の腕は変化無し。これなら経験した分、余裕を持って対処できる)

「ウオラァッ!!」

 覚醒ダドリーは渾身の力を込めて、右腕を振り被った。そして直ぐ様撃ち下ろ……。

(これも避けられ――)


ピタッ!!


「――ッ!?」

 寸止めのダドリー!アストに振り下ろした右拳を急停止させた!そしてその代わりに……。

「シュッ!!」

 コンパクトなモーションで左のボディーブローを放つ!

「はあッ!!」


ゴッ!


「――ッ!!?」

 それでも届かず。アストは肘を撃ち下ろして、ボディーブローを迎撃した。

「駆け引きを覚えたのはいいが、付け焼き刃でやってもオレには通用しない」

「くそ……!!」

「格闘戦はオレの方が上だ!!」

 反撃のミドルキック!青き龍の爪先が……。


ドゴッ!!


「――ぐふっ!!?」

 ダドリーの脇腹に突き刺さった!そしてそのまま吹き飛ば……。


ガシッ!!


「何!!?」

 吹き飛ばそうとしたが、ダドリーは必死に耐え、さらに龍の脚を抱え込むように腕で掴んだ。

「悔しいがお前の言う通りだ……いきなり技術でてめえを上回れる訳ねぇよな……ならおれにできるのは根性見せるしかないよな!!」


ブゥン!ブンブンブンブンブンブン!!ブゥン!!


「くっ!?」

 ダドリー、アストを掴んだまま空中で大回転!そして遠心力が極限まで高まったところでリリース!

 スピードアストはそのままアスファルトに……。

「アウェイクパワー!!」


ゴッ!!!


 スピードからパワーに!全身の水分を移動させ、強化した腕でアスファルトに亀裂を入れながら、激突を防ぐ。

「どこまでも忌々しい……素直にやられろよ!!」

「そうだ!お前が死ぬのが一番丸く収まるんだよ!!」


ババババババババババババババババババッ!!


「ぐっ!?」

 勝手なことを言いながら覚醒ダドリーは斜め上から光弾を、覚醒レスコットはサイドから石のように固めた泥団子をパワーアストに浴びせかけた。その圧倒的な物量に青龍は巨大化した身体を小さく丸めて耐えるしかない。

(こんな攻撃もできたのか。それともできるようになったのか……なんにせよまずい。このままだと嬲り殺しだ……!!)

「このまま圧殺するぞレスコット!!」

「おう!!この身が果てるまで、俺は手を緩めない!!」


ババババババババババババババババババッ!!


 焦るアストの気持ちに比例するように覚醒タッグの連射スピードが止めどなく上がっていく。

「二人がかりであんなの卑怯だ!!」

 その一方的な様子に我慢の限界を迎えたザットが飛び出そうとする……が。

「やめろザット」

 リーダーにまた制止されてしまう。

「コルバックさん!だけどこのままじゃ青いの……アストが!!」

「地下の時だったらともかく、今の覚醒タッグ相手に我らは何もできることはない。予想ではなく、この目で奴らの戦いぶりを見て確信した」

「でも、隙を見て一撃与えるくらい……」

「半端な攻撃なら無視される。無視できないほどの攻撃ならムスタベに向けている手の一つがお前に向き、あっという間に始末されるだけだ」

「だけど……」

「何よりムスタベに助けはいらん。バナンとアチェルビを倒したあいつがこの程度でやられることなんて……」

「オラアッ!!」


ドッ!ドゴオォォォォォォン!!


「「「――ッ!!?」」」

 タイミングを見計らったようにパワーアストが動いた!渾身の力で殴ったのだ……地面を。

 その衝撃は局地的な地震を発生させ、車内にいる解放戦線の面々を揺らし、そして覚醒レスコットの体勢を崩して、攻撃を中断させた。

「よし!!」

 そしてその僅かな隙を突いて、アストは自分だけに降り注ぐ光と泥の雨から脱出した。

「ほらな」

(あんな無茶苦茶なやり方で……いや、あいつはずっと無茶苦茶だった。あいつとヤービッツの悪魔は普通の人間ではどうにもできない領域にいる……!!)

 本来なら喜ぶべきところなのにザットは素直に喜べなかった。むしろ自分との力の差、スケールの違いを見せつけられたようで悔しくさえあった。

 そんな彼の気持ちなど露知らず、アストが更なる力を披露しようと動き出す。

(まず先に倒すべきはダドリーだ。奴から先に落とす)

 決意を固めたアストの意思が全身を駆け巡る。

「アウェイクテクニック!!」

 それに呼応し、肉体が変化。逞しい巨大な身体が縮まり、右腕がライフルになった細身の姿に。そして即座に……。

「落ちろ!ダドリー・モア!!」


バシュッ!バシュッ!バシュッ!!


 発砲!圧縮した水の弾丸を連続で発射した!しかし……。

「撃ち合いなら負けねぇ!!」


ババババババババババババババババッ!!


 ジグザグと回避機動を取りながら光の弾丸をばらまく覚醒ダドリー!そのせいでテクニックアストの放った水の弾丸は時に光弾に相殺され、時に躱され、一発たりともターゲットに命中させることはできなかった。

(レスコットに頼らず対処してきたか。で、地下では身を盾にしてダドリーを守っていたあいつは……)

「…………」

 覚醒レスコットは突っ立っているだけであった。相棒を守ろうともせず、加勢することもなく、ただ直立不動で立っているだけだ。

(何故動かない?何か策があるのか?それともこうしてオレを惑わせることが策なのか?ならばここは一旦奴のことを忘れてダドリーに集中することが吉なのか?)

 けれど、その立っているだけという戦闘では不可解な行為がアストを疑心暗鬼に陥らせていた。その結果……。


ジュッ!!


「――ッ!!?しまった!?」

 テクニックアストは肩口にダドリーの光弾をかすらせてしまった。

「ようやく……これだけやってようやくファーストヒットかよ!!」


ババババババババババババババババババッ!!


「ちいっ!!」

 ダメージこそほとんどなかったが、ダドリーを調子づかせてしまった。手のひらから放たれる光弾は威力、速度、数、全てが上昇し、テクニックアストは各部噴射口を総動員し限界まで機動、回避に専念するしかなかった。

(エヴォリストの力は精神に左右されることはわかっていたのに、奴に勢いを与えてしまうようなことを!やはりここはレスコットのことは置いておいて、ダドリーに集中する!)

 決意を固めたテクニックアストは高速で後退しながらも、しっかりとライフルの銃口をダドリーへと固定する。

(水花火なら何発かは奴に届くだろう。仮に避けられても、攻撃の手を止められれば、その隙にもう一発……!!)

 アストが水の弾丸を発射しようとしたその時であった。


ガシィッ!!


「――ッ!!?」

 突然、何かに後ろから羽交い締めにされ、動きを止められた。

「何が……!?」

「捕まえたよムスタベ氏……!!」

「レスコット!!?」

 青き龍を捕らえたのは泥のエヴォリスト、レスコット!立ったまま一切動かなかったはずの彼がアストの背後に回り込み、彼の動きを止めたのだ!

「何で……!?お前はあそこに……」

「俺の本体を見たお前ならわかるはずだよ」

「まさか!!?」


ドロリ……


「ッ!!?」

 アストの視界の中で突っ立っているだけだと思われたもう一人のレスコットが泥となって崩れ落ちた。その中から枯れ木のようなみすぼらしい本体は……いない。

「泥の鎧だけを残して……!!」

「正解!だが、今さらわかったところでもう遅い!!」


ドロ……バシャッ!!


「ぐっ!?泥が!?」

 青龍を拘束していたレスコットの身体も崩れ完全なる泥になると、青い身体にさらにまとわりついてきた。

 一方枯れ木のような本体はというと、蛹から蝶が羽化するかの如く、ぱっくりと割れた背中から飛び出し、一目散にその場から離れていく。

 何故ならこの後、ここにはとてつもない攻撃が放たれることになるのだから……。

「ダドリー氏!!今です!!」

「おう!!よくやった!!とどめはおれが!!」

 覚醒ダドリーは両手のひらを突き出し、そこにありったけの力を注ぎ込んだ。地下ではテクニックアストに避けられた彼の最大火力を誇る攻撃をするつもりなのだ。

「あれは……ヤバい!!」

 アストは慌てて退避しようとするが、泥の拘束が邪魔でその場から動けない!じたばたと動く度に泥が跳ね、体積は減っているのだが、このペースではとても……。

「無駄な足掻きだ!!勝負は決した……お前への恐怖を乗り越えたおれ達の……勝ちだ!!」


ビビシュウッ!!


 覚醒ダドリーのポジティブ、ネガティブ、どちらの感情もエネルギーに変えた彼の集大成のようなビームが放たれた!

(ヤバい。これはマジで……)

 視界一面に広がり、今も近づいてくる強烈な光に死の匂いを感じるアスト。しかし……。

「全く世話が妬けるなぁ君は」

「「「!!?」」」

 龍とビームの間に黒いボディーに鮮やかな赤い半透明のパーツが取り付けられたともすれば奇怪な姿のピースプレイヤーが割って入る。それが……。


ビシュウゥゥゥゥッ!!


 その赤い半透明なパーツでビームを全て吸収してしまった。

「おれの最強の攻撃が……」

 そのあり得ない光景に攻撃を放ったダドリーは呆然とした。

「気をしっかり持てダドリー・モア!!何だかわからないが、未確認のピースプレイヤーが増えたんだぞ!!」

「そ、そうだ!まだ戦いは終わってないんだ!!」

 相棒の言葉に我に返ったダドリーは闘志を震い立たせ、謎のピースプレイヤーを睨むと……。

「チッチッチッ!」

 そいつは小生意気な態度で人差し指をメトロノームのように横に揺らしていた。

「……何のつもりだ……!?」

「何のつもりも何も君達の言ってることは間違ってるよって教えてあげてるのさ」

「おれ達が……」

「間違ってる……!?」

「あぁ……増えたのはぼく一人だけでも、ピースプレイヤーだけでもない」


ドスゥゥゥゥン!!


「「「!!?」」」

 彼の言葉を合図にまた新たな“何か”が二つ、アストの前に降ってきた。

 緻密な装飾の施された銀色の鎧に、手には身の丈ほどもある巨大なランスと身を隠すほどの盾を装備した騎士のようなピースプレイヤー。ただアストの記憶にあるものよりも各部が大型化している。

 そしてもう一つは氷のような透明な鬣を持ったアストの覚醒態によく似た龍だった。

「急に涌いて出てきやがって!!お前らは一体……」

「何者だ!!?」

「そこのブルードラゴンの幼なじみその一、『イクライザーV4』」

「同じく幼なじみその二、『スーペリアナイティン』」

「そいつの……兄貴だ」

 故郷カウマからの予期せぬ援軍……到着!


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