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ログホライズン外伝if ~1人で行う世界制覇~  作者: 夜の狼
番外編 ~西へ……~
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新しい出会い

この話以下から、番外編をお送りいたします。現在の所ですが、オリジナルの原作では全く触れられていない場所でのお話になりますので、完全な想像で書いています。また、本編が追加されますと、○○部分の数字がずれますので、そこはご了承下さい。

(え~ん、どうしよう……。)

 その少女は困っていた。しかも、ものすごく、だ。

 少女は、生産を行う為の素材集めに森へ来ていた。しかし、好戦的アクティブなモンスターに見つかり、逃げ惑ううちに同調リンクが起きて、そのモンスターが連結状態トレインとなって迫って来ているのだ。

 なお、トレインとはネットゲーム用語であり、リンクして冒険者プレイヤーを追いかけているモンスターが、まるで列車の様に連なっている様子から、そう呼ばれる様になったのである。

 つまり、少女は現在、明らかに自分の能力とは不釣合いな数のモンスターに追いかけられている。それも大量に、だ。彼女の現在のレベルは40、職業は「神祇官かんなぎ」である。当然だが、単独ソロにおける戦闘能力は、前衛職に比べると低い。

 神祇官というのは、パーティープレイでの補助サポート役に向いている職業であり、直接・間接共にあまり攻撃が得意では無い。その為に、単独では経験値の入る戦闘があまり出来無い。それはすなわち、レベルに比べて戦う力が低い事を意味している。

 彼女を追いかけているのは、ゴブリンなどが連れている「魔狂狼ダイアウルフ」の様な凶悪な魔獣ではなく、野生の「森林狼フォレストウルフ」である。レベルは30前後とあまり高くなく、厄介な特殊攻撃は持っていない。

 しかし、彼女のレベルは狼らの戦闘対象範囲内であり、比較的密集して配置されていた事でリンクを呼んだのだ。

 一応だが、戦って倒せない相手では無い。しかし、1対1の戦いならともかくとして、相手がこれだけの集団ともなると、神祇官という後衛職である彼女に成すすべは無い。

 身長は160cmに少し届かない程度だろうか。膝下20cmくらいの赤いワンピースのスカートをひらひらさせ、茶色のポニーテールを揺らしながら懸命に走っている。

 ダメージ遮断魔法である「禊ぎの障壁」をかけながら、移動速度を上げる「天足法の秘儀」も使用した結果、彼女は何とか狼達が追って来られない高い木に登って逃げる事が出来たのだが、このままでは降りる事も出来無い。彼女が登った木を囲んで、10匹以上もの狼が群れているからだ。

 帰還呪文を使えばと思うかも知れないが、実は素材アイテムの採取から戻る為に一度発動してしまっていたのだ。帰還呪文は1日に1度しか使えない。彼女が無事に帰る為には、木から下りてこの囲みを突破するか、木の上で1日を過ごして帰還呪文が再び使えるのを待つしか無かった。

 だが、それをするにはもう1つ彼女は問題を抱えていた。

(おなかすいた……)

 素材アイテムを所持限界まで持つ為に、食糧を含めた余分なアイテムを、全て置いて来てしまっていたのだ。

 元々、素材集めが目的なのですぐ帰るつもりで居た為、せいぜい喉が渇いた時に飲む清涼飲料水ソフトドリンク程度しか持ち合わせていない。

「茶腹も一時いっとき」という言葉もあるが、空腹を満たすにはとても足りない量である。

 おまけに、時刻はもうすぐ夕方になる。このまま木の上で一夜を過ごして待つなど、とても無理な相談である。

(誰か、誰か……)

 木の下から狼に吠えかかられる中で必死で考えたものの、ゲームと違ってエリア検索で同じエリアに居る人も探せないし、レーダーで近所に居る人が表示される事も無い。

 怯えた黒い瞳で眼下に群れる狼を見ながら、我慢の限界を超えた少女は、それこそ最後の元気を振り絞って木の上から思い切り叫んだ。

「誰か、助けて下さーい!!」

 しかし、どこからも何の反応も無い。

(ああ、今日は、もう帰れないのかな……)

 がっかりした少女の脳裏には、次々と暖かくておいしそうな食事のイメージがよぎるのであった。


 けれど、そんな彼女の耳に、狼の吠え声に混じって遠くから人の声が聞こえて来る様な気がした。

「……だ?」

 その声は、段々と近付いて来ていた。

「……れだ?」

 そして、少女の耳にも、やがてはっきりと聞こえる様になった。

「誰だ~?」

 それは、若い女性の声だった。

「ここです!助けてー!」

 少女は、思わずこれまで以上の大声で叫んでいた。

 その刹那せつな

「うおりゃあ~!!」

 気合の入った声と共に、少女の登っている木を囲んでいる狼が、数匹まとめて吹っ飛んだ。少女が驚いて木の下を見ると、

「そこか~!」

 気合の入った声を発しながら、1人の女性が両手で持った剣を操って、狼の群れを片っ端から吹き飛ばしている。それはまるで、旋風つむじかぜの様だった。

 最後の狼が「ぎゃう~ん」という情け無い悲鳴を上げて地面に転がると、その女性は少女が居る木の上を見上げた。

 その女性は、輝く様な銀髪に白い肌をして、全身が白で統一された服を着ていた。

(なんて綺麗な人……)

 少女は、思わずその女性に見とれてしまった。が、しかし……、

「さっき助けを呼んだのは、君か?」

 その女性は、見た目と裏腹に男っぽい口調で少女に聞いてきた。

「え……」

 少女は、その女性の言葉遣いと見た目とのギャップに一瞬絶句した。

「違うのか。じゃあ誰だろ」

 女性はそう言うと、少女の登っている木に背を向けて立ち去ろうとした。

「い、いえ。私です」

 少女はそういうと、慌てて木を降りた。

「あ、あの……。ありがとうございました」

 木を降りた少女は、その女性に向かってお辞儀をした。

「うん、まあ。礼はいいからさ。転がってる『それ』、早くぎ取らないと消えるよ?」

 女性はそう言うと、自分が倒した狼を剣で指した。

「あ、え、でも……」

 言われて、少女は躊躇ちゅうちょした。女性は譲ってくれているらしいが、そもそも狼は自分が倒した訳では無いからだ。自分が倒していない獲物から剥ぎ取り行為をする事に、少女は戸惑いがあった。

「いいからいいから、気にしない」

 女性にうながされて、少女は剥ぎ取り専用のナイフを出すと、狼の毛皮を切り取り始めた。

 なお、エルダーテイルがゲームだった時には、強キャラが弱いモンスターを多数引き連れて、ある程度の数になったところでまとめて倒し、一気に素材を集めるという違反行為ぎりぎりの方法もあった。

 しかし、現実世界となった今では、同じ行為をするとモンスターから袋叩きにされるので、誰もやろうとはしない。これも、ゲームと現実の違いというやつだ。

「何で君はこんな事になってるの?」

 女性に尋ねられて、少女は剥ぎ取りを続けながら答えた。

「ええと、その……。生産に使う材料を採取に来たら、こうなっちゃって……」

「なるほど。でも、ここは君のレベルにはあまりふさわしくないね」

 女性に言われて、

「だけど、ここでしか取れない物が、どうしても必要なんです。競売所マーケットには無い事もあるし、私には値段的に、ちょっと大量購入が難しいんです」

 少女は、少し必死そうに言った。

「で、目的の物は入手出来たの?」

「はい。見つける事は出来ました。でも、とても数が足りません」

 少女が、少し困った様な顔で言うと、

「あたしも、探すのを手伝ってあげるよ」

 女性は事もなげにそう言った。

「え、でも……」

 少女がとまどいながら言うと、

「気にしない。ただの暇潰しさ」

 女性が答える。

「あ、あの……私は マルンと言います。名乗るのが遅れてすいません」

 少女は思い出したかの様に、自分の名前を言うと慌ててお辞儀をした。

「そうか。あたしはアンジェロだ」

 女性はそう言うと、剣を背中のさやへと収めた。


「それで、何を探しているのかな?」

 アンジェロがマルンに尋ねた。

「あ、はい。これです」

 聞かれると、マルンは手荷物から円形の白い固まりを見せた。大きさはピンポン玉を横に2つ並べたくらいだろうか。

まゆ玉です。これをつむいで糸にして、加工するんです。他の材料は十分なのですが、これだけがまだ足りなくて」

「なる程、了解だ」

 繭玉を糸に加工するには、一度にまとまった数が必要になる。1つや2つではとても足りないのだ。

「マルンは、安全な所を探して。何かあったらすぐに言ってね」

 アンジェロはそう言うと、繭玉を探しに姿を消した。

「あ、でも……」

 少女は言いかけたが、全てを言う前にアンジェロは行ってしまった。

「もうすぐ日が暮れるのに……」

 夜になれば、自分の危険度は数倍に跳ね上がる。それに、彼女にはもっと怖い事もあった。

 しかし、今はそれよりも目的の物を探す方が先だった。マルンは植物の葉の裏や木の幹の陰など、繭がありそうな場所を探し始めた。

 マルンが、ようやく10個程の繭玉を集めた頃、アンジェロが戻って来た。

「これくらいあれば、いいかな?」

 そういうと、アンジェロは自分の鞄から、マルンの両手に持ち切れない程の繭玉を渡した。

「こ、こんなに一杯どうしたんですか?」

 彼女が驚いて尋ねると、

「普通に探しながら、ドロップするモンスターも倒しまくった。それだけの事さ」

 事もなげに、アンジェロはそう答えた。

「凄い……」

 両手に一杯の繭玉を抱えながら、マルンがつぶやいた。今の自分では、とてもこの森のモンスターは手に負えない。それを、自分が10個程度の繭玉を集める間に、一体どれくらい倒したんだろう。

 そう思うと、マルンは尊敬の念でアンジェロを見た。そして、ふと今まで見ていなかった、彼女のステータスを何気なく見ると、驚きの表情を浮かべて固まった。

「レ、レベル100!?」

 思わず口にしたその言葉を聞くと、

「ああ、これね。勝手に上っただけだよ」

「勝手に上ったって……」

 アンジェロの言葉に、マルンは絶句した。一体どうすれば、そんな風に無茶苦茶な上り方をするのだろうか。自分の2倍以上もあるレベルの冒険者を前にして、彼女はそう思った。


「それじゃ、あたしは後ろから行くので、道案内よろしくね」

 アンジェロが言うと、

「解りました」

 マルンはそう答えて、「燈明招来バグスライト」を使用した。暗くなった森を魔法の灯りが照らし出す。

「お、これは良いね。助かるよ」

 アンジェロにそう言われると、マルンは少し嬉しくなった。

 しかし、灯りは同時にモンスターを呼び込む可能性があるが、今のマルンにはアンジェロが居る。これより心強い護衛は存在しないだろう。けれど、マルンは1つ気になる事があった。

「あのう……」

「ん?どうかした?」

「パーティーは組まないんですか?」

 マルンの疑問は当然だった。確かに彼女とアンジェロのレベル差は桁違いだが、神祇官という職業は、1人でもパーティーに居ると、それだけで段違いの安定感を生み出す。

 っと言うよりも、神祇官はパーティーに参加していないと、その役割を十分に果たす事が出来無い職でもある。神祇官の真の価値は、パーティープレイにあると言っても良い。

「やっぱり、私が弱いから……」

 そう言うと、マルンは少しがっかりした表情を浮かべた。

「そうじゃないよ」

 アンジェロはそう言うと、少し苦笑いを浮かべて言った。

「あたしはね、パーティーに入れないんだよ」

「入れないって……」

 アンジェロの言葉に、マルンは不思議そうな顔をした。

「まあ、色々あってね。だから、気にしないで欲しい」

 そう言うと、アンジェロはマルンを先に立たせて、帰り道を急ぐ様に促した。

しばらくですが、後書きは省略させて頂きます(別に毎回書く必要や決まりも無いのですが、何か気になって……)。

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