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ログホライズン外伝if ~1人で行う世界制覇~  作者: 夜の狼
第4章 -そして、世界へ向けて……ー
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アンジェロの目的

今回で、「奈落の参道アビサルシャフト」の攻略が終了します。

「た、倒した……。」

 最終ラスボスである「九なる庭園のウル」の消滅を確認したアンジェロは、さすがにその場でへたり込んだ。

 手持ちの回復アイテム、特にHPよりもMPを回復する水薬はかなり消費されており、そのうち最後には自力回復のみで戦わねばならないところだった。

「よくぞ試練を乗り越えましたね」

 結界から出て来た菫星きんじょうが、床に尻餅をついている状態のアンジェロに話しかけた。

「これで、残りのボスも倒せと言われたら、さすがにあたしは投げるぞ」

 アンジェロは、菫星を見上げながら思わず普通の言葉遣いで言った。

「それはありません。『九なる庭園のウル』が倒された時点で、あなたの戦いは終わっています」

 菫星にそう言われて、アンジェロはやっと肩の力を抜くと、「ふぅ」とため息をついた。

「ところで……。」

「何でしょう?」

「ウルを倒した戦利品は、どこですか?」

 アンジェロは、周囲を見回しながら言った。大規模戦闘レイド最終ラスボスを倒したのに、床にはそれこそ金貨一枚落ちていなかったからだ。

「それはありません」

 菫星は首を横に振って言った。

「ここを守護する『九なる庭園のウル』を倒す事で、あなたは好きなだけこの場所の金貨を持ち帰る権利を得たのです。つまり、それこそが戦利品であり、この『奈落の参道アビサルシャフト』を攻略した報酬という事になります」

 菫星のその言葉に、

「まあ、それもそうか」

 と、アンジェロは納得した。

 確かに、良く考えたらシロエ達も攻略の報酬と呼ばれる物は何も受け取っていない。なぜなら、この場所の金貨を1枚も持ち帰らなかったと言う事は、すなわち「攻略の報酬を受け取る権利」を放棄した訳だからだ(しかし、その代わりに、例の特権を手に入れた訳であるが)。

「それでは、改めてあなたにこの場所の金貨を好きなだけ持ち帰る権利を差し上げます。それがいくらであっても、私には止める事が出来ません」

 菫星の言葉に、アンジェロは立ち上がって、

「解りました。では、申し訳無いのですが、こちらも一切の遠慮をいたしません」

 そう言うと、近くにある黄金の流れの中に近寄り、魔法の鞄マジックバックの中から、用意した別の鞄を次々と取り出した。さらに、「攻略完了クリアーしたからもう要らない」とばかりに、片っ端から持っているアイテムを廃棄し始めたのだ。その中には、余った回復薬だけで無く、これまで倒した雑魚ざこやレイドボスの戦利品なども含まれていたが、それらをアンジェロは一切惜しみなく廃棄した。

(戻ってから売れば金になるのでは?)と思うかも知れないが、すぐに現金化出来ない様な物や、受け渡しと売買が不可能な物は、あっても邪魔になるだけだったからだ。

 そして、最大の大きさの鞄から、まばゆく輝いている黄金の流れの中に突っ込んだ。鞄の中が全て金貨で一杯になると、また次の鞄を投げ入れ、それを空の鞄と手持ちの鞄の容量ぎりぎりまで繰り返した。

 もっとも、物理的では無く、金貨に触れた瞬間に回収される仕組みの為、黄金の流れの上に鞄を投げ入れるだけで、一瞬のうちに容量限界までカウントされるのである。

 ちなみにだが、ゾーンの購入などをする場合、時に億単位の枚数の金貨を支払う可能性のあるーー値段が設定されている以上、それは可能という事であるーー冒険者の鞄というのは、普通サイズーーつまり、最初から持っている鞄ーーでも相当な枚数の金貨を収納する事が出来る。それが一杯になるという事は、想像を絶する程の金貨を、1つの鞄に詰め込んでいる事になる。

 最後の鞄が金貨で一杯になると、アンジェロは菫星にこう切り出した。

「報酬は頂きました。けれど、あたしは『この場所のあなた』にもう1度会う必要があります」

「それは、なぜですか?」

 菫星に問われると、アンジェロは、

「アキバの街及び円卓会議とあなたとの盟約を、完全なものにする為です」

 と答えた。

「それは、どういう事でしょうか」

 と、菫星が再び問いかけると、

「今はお答え出来ませんが、その時になれば自然と解ると思います」

 アンジェロはそう答えた。

「そうですか。ですが、あなたが再びここへ来るならば、また同じ事を繰り返さなくてはなりませんが、あなたはそれだけの苦労をしても、そうなさらなければならないのですか?」

 菫星の三度の問いかけに、

「はい。これは私の『けじめ』でもありますから」

 アンジェロはそう言うと、金貨の詰まった鞄を全てしまった。そして、菫星に一礼して別れを告げると、安全になった「奈落の参道アビサルシャフト」を脱出してから、帰還呪文でアキバの街へと帰った。


 アキバの街へと戻ったアンジェロは、早速銀行へ向かうと手持ちの金貨を預けにかかった。次から次へと金貨の詰まった鞄を取り出すアンジェロに、銀行を預かる供贄一族はさすがに驚きを隠せなかった。

 窓口へと預けた金貨は、数字だけの残高となって再びあの黄金の川へと戻って行くのだろう。アンジェロが報酬として得た、恐ろしく莫大な枚数の金貨を再び引き出す時は、またどういった顔をされるのか解らないが、そんな意味の無い嫌がらせ染みた事を、アンジェロがするとも思えなかった。

 アンジェロは、あらかじめ金貨専用に用意した鞄の中身を全て預け終わると、手元に残った金貨の枚数を確認したが、それだけでも普通の冒険者からしたら桁違いの金額があった。

(もしPKに会ったら、これ全部ばらまくのか)

 アンジェロはそう考えると1人苦笑いした。もっとも、例えフルレイドの人数でPKに挑まれても、アンジェロには勝つ自信があった。っと言うよりも、今は何と戦っても負ける気がしなかった。奈落の参道というレイドを1人で戦い抜き、ザコを殲滅してレイドボスを何体も倒して奈落の参道を攻略したアンジェロは、まさしく最強だった。

 いかなる盾役でも、現在のアンジェロの一撃に耐えられる者は居ないし、あらゆる状態異常が無効になるアンジェロには、弱体や行動阻害などの魔法も効果が無い。

 ダメージソースで言うならば、現在のところ最高のダメージを出せる攻撃スキルや魔法でも、同レベル帯の冒険者を即死させる事は、おそらく出来無いからだ。

 一撃でアンジェロを倒せないと、アンジェロは手近な前衛職を一撃で切り伏せて、HPを回復してしまうだろう。前衛がやられてしまえば、中衛職や後衛職には成す術が無い。

 囲んで集中攻撃というのは、あくまでも盾役がその機能を果たせたらの話である。一撃で倒されてしまえば何の意味も無い。

 それに、あまつさえアンジェロには「口伝・半月斬」がある。遠距離攻撃の手段があっても安心出来ないのだ。もっとも、それを知った時には相手は神殿送りになっている事だろう。

 銀行で預金を済ますと、アンジェロは執務室のシロエに会いに行った。

「おかえりなさい、アンジェロさん。またさらにレベルが上っていますね」

 シロエが言う通り、アンジェロはレベルが98になっていた。今回は、雑魚だけでは無くボスも倒したからだ。恐らくだが、現在この世界セルデシアでは最高レベルの冒険者だと思われる。

「ただいま。まあ、レベルアップは必然だからね。さてと、君に会いに来たのは、少し大事な話があるからだよ」

「少し大事、ですか」

 シロエが聞き返すと、

「うん。今はまだそれくらい」

 アンジェロはそう答えた。

(今は、って事は、これからもっと大事になるのだろうか)

 シロエはそう考えたが、とりあえず今はアンジェロの話を聞く事にした。

「それで、その話とは?」

「あたしは、もう1度だけ奈落の参道へ行く」

 それを聞いてシロエは、

「なぜです?」

 としか言えなかった。

「今度は、前よりものすごく大事な用事がそこにあるから」

 アンジェロはそう答えた。


 アンジェロは、三たび奈落の参道へ行くと、これまで通り途中の雑魚モンスターに加え、「一なる庭園のヴァンデミエ」「五なる庭園のエルレイーダ」を始めとしたレイドボスを倒した。

 そして、前回同様「七なる庭園のルセアート」のHPを適当に削ると、扉を開けて現れた「三なる庭園のイブラ・ハブラ」の脇をすり抜け、ゴール地点の最後の部屋へと入った。

「宣言通り、会いに来ました」

 アンジェロは、そう菫星に告げた。

「1度ならず2度までも、たった1人でここまで辿り着かれるとは、本当に大したものですね」

 菫星はそう言った。

「有言実行、ってやつです」

 アンジェロは少し余裕の笑みでそう答えた。

「それで、今回の望みは何ですか?」

 菫星にそう尋ねられて、

「今回は戦いが目的ではありません。あたしは、前回言った様にアキバの街及び円卓会議とあなたとの盟約を、確固たるものにする為に来ました」

 そう言うと、アンジェロは一枚の書類を鞄から取り出した。

「それは何ですか?」

 菫星に聞かれて、

「これは、この『奈落の参道』を含めた一帯エリアの契約書です。前回ここで入手した金貨を使ってあたしが買いました。つまり、現在のここの『所有者』はあたしと言う事です」

 この世界のありとあらゆる場所ーー街の施設などは言うに及ばず、一般のフィールドゾーンに至るまでーーには値段が付いていて、金貨さえ払えば誰でも購入する事が出来る。無論、それはダンジョンとて例外では無い。

 もっとも、街の一角にある建物1つとは違い、各都市部のエリアのゾーン1つだと億を越える金額、さらに広大なフィールドゾーン丸ごとともなると、恐ろしく莫大な金額になる。

 アンジェロの言葉を聞いて菫星は、

「そうですか。それで、一体が目的なのですか?」

 あくまでも表面上は冷静に、菫星はアンジェロにそう尋ねた。

「これを、こうします」

 そう言って、アンジェロはかつてシロエがやったのと同じ様に、菫星の目の前で奈落の参道の契約書を破り捨てた。破られた契約書は炎に包まれて一瞬で消滅し、代わりに膨大な枚数の金貨が空中に溢れ出た。それは、このダンジョンの値段がいかに高額であったかを示していた。

「これで、この場所の所有権はあなた方『供贄一族』--っと言うよりヤマトサーバーそのもの--に渡りました。盟約はより強固なものになった訳です」

 それを聞いて菫星は、

「あなたの考えとお気持ちは確かに受け取りました。私が、供贄一族の菫星が認めます」

 そう言ってうなづいた。

「ありがとうございます」

 アンジェロはそう言うと、菫星に対して一礼をした。これで、この最終ラストエリアでは、冒険者に好き勝手な事が許されなくなった。つまり、これまで以上にシロエ達の持つ様な特権や、アンジェロの様な無尽蔵の金貨の入手が難しくなった訳だ。

 どういう事かと言うと、まずウルの隙を突いて金貨の川から戦わずに金貨を掠め取る様な、裏技的な事が不可能になったという事である。

 これからは、正規の手段ーーウルを倒して権利を得る事ーーでしか、ここで金貨を獲得する事は出来無いし、仮にウルを倒して権利を得る事が出来たとしても、金貨の獲得が無尽蔵に行われる事も無くなるだろう。

 それは、現在の世界セルデシアにおいて、おそらくだが最も公平で正しい姿だと思う。何より、菫星の機嫌を損ねる様な行いをする冒険者--先にも述べたが、戦わずに利益のみを得ようとする者や行動の卑しい者など--は、エリアの所有者の権限をもって、強制的にここから放り出されると同時に2度と侵入出来無くなる事になる。アンジェロの取った行動は、菫星にとって十分に納得の行くものであると同時に、これ以上無い程の条件だった。

 菫星を始めとした供贄一族は大地人(つまり、NPC)であるが、すでにゲームではないこの世界においては、冒険者と同等の権利を有する事も出来る。アンジェロの行為は裏技的なものであった。

この話も、原作とアニメを参考にしながら、ほとんど想像で書いています。なので、おかしい部分や気になる部分などありましたら、どうぞ遠慮無くご意見をお願い致します。

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