7――勘違い
今回は予約掲載になります。
一斉に攻撃したが、見えない何かに阻まれた。
「おいおいどうなってるんだよ…」
そこにはユウ、リゼ、レッソ、ザット、カリィがいた。
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全く、どうなっていやがる。
捕まっていると思って駆けつけたらアインスが仲間四人から一斉攻撃を受けていた。
リゼにすぐ血を飲ませてギリギリ防いだが…なぜ仲間同士で争っているのか。
「ユウ、そこをどけ」
物凄い威圧感だ。シェリーはこんな表情もできる女性だったのか。
「おいおい、何怖い顔しとるんじゃ」
「そうだよ、レッソたちにも説明してほしいよ」
「うむ、そうだな。妾たちにはどく変わりにその理由を聞かなければならん」
三人がそれぞれ言う。確かに理由を聞かなければどけない。
「そう言うなら話してやろう」
シェリーは事の経緯を簡単に語った。結果を言うと俺以外はアインスから少し離れた。
「ユウ、お前もだ」
シェリーが言う。だが俺には気になったところが一つあった。
「アインスは紋章が無いと言ったのか?」
「あぁ、紋章が無いと…」
「そこを一字一句間違わずに丁寧に話してくれ」
「なぜそんなことを…」
シェリーはわかっていないようだが、俺にはそこがとても重要に思えたのだ。
「封龍の紋章を見せろと言われたから『無理よ。私には封龍の紋章という名の紋章は無いもの』と言ったわ」
以外にも本人から言われた。他の騎士たちの反応を見る限り、これを本当に言ったようだ。
俺の思い込みは合っていた。あとはそれを確定に近くするためにアインスに一つ訪ねなければならない。
「なぁアインス、お前…歳はいくつだ?」
「は?」
盾の騎士シェリーとは思えない声だった。他のメンバーもなぜこんなことを聞くのだろうと思っていることだろう。
それどころかアインスも思っているだろう。だがこれはとても重要だ。今この場においては、だが。
アインスは静かに答えた。
「4歳よ」
…予想通りで安心した。シェリーが驚いた声で言う。
「えぇ!?4歳!?!?どう見ても16やそこらじゃない!ええええええ!」
こんなシェリーは初めてだ。だがここに俺が説明を挟む。
「ホムンクルスは生み出されてから約一年でこれぐらいまで成長し、そこからは老けない。師匠から聞いた」
「そ、そうだったんだ~!すっご~い!」
レッソは感動しているが、他の皆はそうではなかった。
「で?その子の年齢のことはわかったけれど、紋章が無いことの説明にはなっていないよ」
リゼが厳しく言ってくる。それを今から説明する。
「アインスはシェリーに『封龍の紋章を見せなさい』と言われて、『私には封龍の紋章という名の紋章は無い』と言った」
「そうよ。それは紋章が無いということ、私たちを殺す機会を窺っていたということじゃない!」
これを聞いてアインスの表情が少し動いた。感情は無いのかと思っていたが、少しの感情の変化はあるようだ。
今ようやく彼女は自分が置かれている状況を把握したのだ。これは演技でできるものじゃない。ましてや4歳なのだ。
そしてシェリーは勘違いをしている。それを正さなければ。
「シェリー、お前は勘違いをしている。アインス、紋章を見せてくれ」
「だから無いって…」
「はい」
シェリーの言葉を遮りながらアインスは紋章を見せてきた。それは右腕の手首にあった。封龍の紋章だ。
「な、なんであるのよおおおお」
シェリーが発狂すると同時に皆が困惑する。
またしても予想通りだ。
「ど、どうして紋章は無いなんて言ったのよ…」
まだ勘違いをしているようだ。
「違うぞシェリー。アインスは『封龍の紋章という名の紋章は無い』と言ったんだ」
「?どういうことじゃ??」
「つまり…これは封龍の紋章であって封龍の紋章ではない」
「…は?」
そりゃあこうなるわ。だがこの質問をアインスにすれば解決する。
「なぁアインス、お前のマスター…メビウス・レイロークは封龍の騎士なんじゃないのか?」
「ええ、そうよ」
またもや皆が固まる。どうやら俺の考えは当たっていたようだ。
「そう、本物の封龍の紋章はメビウスが持っている。つまり、この紋章は封龍の紋章の偽物ってわけさ!」
「な、なんだって!?」
魔術師の中には、自らの身体の一部を他人に複写できる者が存在するという。もちろんそれは『ギアス』という両者が同意のもとで効果が発揮される契約書を用意し、お互いがサインして初めて行える行為だというが。
恐らくメビウスは紋章が宿ったとき、他の研究をしたかったのだろう。それで作ったホムンクルスに複写し、それを送ったのだろう。
最も、メビウスが複写能力を持つ魔術師とは知らなかったので、予想でしかなかったが。
「そ、それでは紋章を見せればいいじゃないか!」
シェリーが言う。俺がなぜこれを導き出したのかわかっていないらしい。
「シェリー、お前は『封龍の紋章』を見せろと言ったんだ。これは厳密には封龍の紋章ではない。『封龍の紋章のコピー』に過ぎない」
「な…」
そういうことだ。つまりは店に青いリンゴしか無いのに、赤いリンゴを出してくれと言っているようなものだったのだ。
全てはお互いの勘違いだ。
「それでも見せてくれればよかったものを…」
「4歳の子供にその言葉の裏を感じろと言っても無理な話じゃないか?」
「あ…」
そう、これが年齢を聞いた訳だ。
「でもそれを聞くということはお前は年齢が低いことがわかっていたんじゃろう?なぜじゃ?」
「メビウスがホムンクルスの研究をし出したのは6年前だ。それならもし彼がその分野でも天才で一瞬で作ることができたとしても6歳のホムンクルスしか作れないだろ?」
「なるほど」
こうしてアインスの疑いは限りなく0になった。しかし
「いや、まだわかりませんよ」
口を開いたのは以外にもカリィだった。
「メビウスがもし、騎士に選ばれていなかったら?」
「あ」
そうだった。この話はメビウス・レイロークという人間が封龍の騎士に選ばれていて初めて成立する話だ。もしメビウスが騎士でなかったらこの話は破綻する。
あ、でも問題無いや。
「じゃあ行く?」
「どこにですか?」
「…メビウスの家」
「……え?」
そう、ならばメビウスの家に直接行けばいい話なのだ。
「メビウスの家はどこにあるの?」
レッソが素直に質問してくる。だがそんな心配は無用だ。
「俺たちはこのまま北に進むと、ラファスという町がある。そこに彼は住んでいる」
キースが代弁してくれた。そう、進行方向にあるのだ。
「なら決まりだな。その町に向かうぞ」
シェリーが言う。これで納得してくれたようだった。
ラファスに行ってメビウスに会う。話はそれからだ。
俺たちはようやく北へ向けて歩き出した。
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