↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪に正義を、阿呆に脚光を!  作者: 広炉ひろ
第四章:『カジノ・キュムラス』攻略編
PR
24/25

第二十四話:あなたを等価交換1/交換植物『イシニア』

前回までのあらすじ


謎の植物。

職員撤退。

身分証ゲット。


〇


身分証明書をぱたりと閉じて、ポケットへと慎重にぶち込む。

あまたの困難を乗り越えた軽快な足で、急いで二人のいたトイレへ戻る。

もちろん、ただの市役所なので、すぐについた。

だが、なんだかトイレが騒がしい。

変態が出没したのだろうか。

ゆずが変なこと、していないといいのだが。

「ふざけてんじゃァねェッ!

オタクら、いつまでトイレに籠ってやがんだァ~ッ!」

ああ、ゆずの馬鹿が喧嘩を売ったんだな、と理解せざるを得なかった。

「うるせぇよ、新参!

隣の個室使えばいいじゃねーかよ!

あんまりうるせぇと、お前の個室の紙、全部口にぶち込むぞ」

トイレに反響するゆずの声を聴いて思ったのだが、可愛らしい見た目には似合わない、随分と低い声をしていたことに気が付いた。ギャップだ。

「あれェ~? てかよォ、オタクさッ

個室で座ってるわりには随分出てんじゃァないの?

そのキッタねェ声がよォ……

ああッ! もしかして、『ふたり』いるわね?」

「ッ!?」

随分とくせの強い喋り方で、ゆずがまくしたてられている。

特にバレても問題はないが、コガラさんの存在もバレそうだ。

「キャハッ! なるほどネェ~~ オタク、市役所のトレイでヤッちゃってんだなァ。

これはッ! よろしくないなァ~ッ! このメスネコがッ!」

滅茶苦茶に激しく、ドアを蹴りつけられている。

ゆずも蹴り返しているようが、あの狭い個室で蹴ったりしたら、コガラさんにもあたってそうな気がする。 というか、ゆずはいったい何をしたらこんな奴と言い争いになるのだ。

個室なら隣も、その隣も開いているぞ。

「あ、あのー。 うるせぇーよぉ」

たぶん、ただの一般人だろうが、一応神秘を練って戦闘態勢に入っておく。

「チッ。 パンピーが来やがったぜ……」

「ぱ、パンピー?」

よくわからないが、女は一番奥の個室へ入っていった。

「すずだよー」

ゆずの個室をノックした。


〇


「遅いよ! すず。

おかげで、遊び相手がくるまで暇だったじゃん」

「一体何したの」

指の第一関節をまげて、櫛の様にして髪をとかしながら、解説してくれた。

「いやぁ、ドア開けるのめっちゃうるさかったし、革靴の足音もうっとおしかったし、すずが来なくて暇だったのもあって、つい『うるせぇよメス豚! 死ぬまで死んだつもりで生きろカス!』って言っちゃんだよね」

「阿呆」

しばらく髪をとかすゆずを眺める。

「ところで、すずさ……ちゃん。 身分証はどうなりましたか」

「そりゃあ、楽勝でしたよ」

ドヤ顔をして、身分証をポケットから取り出す。

「素晴らしいですね! 紋章、見せてもらってもいいですか」

コガラさんが目をキラキラさせている。

「いいですよぉ」

身分証の起動には、非常に微弱な神秘を練るだけでいいらしく、つけようと思う前に紋章が薄っすらと出てきていた。

空中ディスプレイの様に、滑らかに花が咲くモーションが流れる。

周りには、なにかの魔法陣のような紋章が描かれている。

「まあ、綺麗な赤いユリですね……」

しばらく私のディスプレイ・ユリを鑑賞したのち、コガラさんが口を開く。

「これは、個人個人の精神を具現化したものですから、これはすずちゃんの精神がとうえいされたものなんです。 いいですね、愛と情って感じがします」

私は、大方そんなものは持ち合わせてないはずである。


〇


夕暮れ時。

市役所を後にした私たちは、とりあえず宿を探すことになった。

「あそこのホテルとかいいんじゃん。

カジノとは違うタイプの装飾が綺麗だよ」

「まっ、まぁ。 ゆずちゃん……

まだ、そんなのダメですよぉ……」

コガラさんが、顔を赤らめている。

とりあえず、触れないであげよう。

「そうですかぁ。 じゃあ、あっちのバニーちゃんが集客してるところはどーですかー」

ゆずが指さすと、バニーガールが手を振ってくれたので振り返してあげた。

「うわぁ〜、かわいいね。 あそこにしよっか」

「わーい。 でも、ちょっと複雑」 

日が沈む前に宿が決まると、今度は別の問題が発生した。

「だ…… 助……げで……」

地面を這う、汚らしい男がゆずの足を掴もうとしていた。

変態か、性犯罪者か、もしくは地獄からの使者か。

「うひゃっ。 汚なっ」

男が助けを求め終わる前に、ゆずはティークの股を蹴り上げたときと同じ要領で、顔面に蹴りを入れていた。

「んぐふっ」

ちょうど立ち上がろうとして、不安定な体勢で立ち上がったので、思いのほか遠くまで跳んで行く。

「まぁ、いいキックですね〜」

男の体が転がって、さっきコガラさんが赤面したホテルの看板を倒した。

「クリーンヒットぉー」

そう言いながら、倒してしまった看板を直しに行こうとした。

「お…… 願……い゛……」

そういってこっちを見てくる男。

ゆずが無視して看板を立て直そうとすると、突如男の上に巨大な壺が落ちてきた。

男の頭の真上に。

「うげっ。 汚ないなぁ」

さっきとほとんど変わらない反応だった。

しかし、私はこの一瞬で理解した。

本来なら、目の目でこんなのが何万人死のうと気にはしない。

しかし、これはすでに「男」ではなかった。

「(血で濁った声。 聞き取り不可の笑い声)

移ったッ! 呪いはスデに貴様のモノだァーーーッ!!!

(血で濁った笑い声)」

潰れた顔面で「男」だったものが叫ぶ。

さらにもう一つ、壺より小さい花瓶が降ってきて、それは完全に沈黙した。

「何よ、コイツ。

大げさよねぇ。 勝手に死んだだけのくせして」

服に血が飛び散っていないか確認している。

「そうだといいんですけどねぇ……」

「あれ? 何これ、いつこんなの拾ったっけ」

ゆずが、謎の黒い花をこっちに持ってくる。

コガラさんの表情が一瞬険しくなった。

「コガラさんは、なにか心当たりがありそうですね」

「ええ…… 結構最悪な展開ですねぇ。

ですが、まだ猶予はあります。 とにかく今は、急いで部屋を確保しましょう」

特にけがをしたわけではないだろうが、一応ゆずに肩を貸してあげた。


〇


チェックインは非常にスムーズに終わった。

こんなにかわいいバニーちゃんがいっぱいいるというのに、あまり人気が無いのだろうか。

「で、師匠。 これは何なんですか……

良いものではなさそうですが」

コガラさんが、羽衣を脱いだ。

「それは、『イシニア』と呼ばれる特殊な植物です……」

また植物ですか。

イシニアと呼ばれた植物は、テーブルに置かれている。

「一体、こいつの何が特別なんですか? 

まさか、さっきのが死んだのもこれが原因だなんていいませんよねぇ?」

「いいえ。

残念ながら、十中八九この植物が原因です」

コガラさんが、胸からお馴染みの魔法の杖を取り出す。

「その植物には、特殊な生態があります。

それは『等価交換』です」

「全然わかんないです! 等価交換が何なんですか」

「私も、本で読んだことしかないですが。

その原理は理由の一切はまだ解明されていません。

とにかく、この植物は、同時に十一つの白黒の花を開花させます。

そのうち、六つは幸福を、残りの五つは不幸を等価交換するのです」

「その等価交換ってのはなんなんですか!?

それで、何が起こるんですか」

「それは…… ゆずちゃんの場合では、平たく言うと『自分を不幸させる代わりに、周りが幸福になる』のです。 それが、黒の『不幸の等価交換』を行うイシニアの生態なのです」

ゆずが、珍しく参っている。

「えぇっと、それは、任意ですか?」

「残念ながら、強制です。

ランダムなタイミング、それとゆずちゃんが幸福を得たときに、不幸との交換が始まります」

ゆずが近くの椅子に座った。

「へ? じゃあ、私はこれから、誰かのために、私が不幸になり続ける人生を送るってことですか…………?」

「いえ、そんなに生易しいものではありません。

植物が『等価交換』で起こす出来事は、交換が完了するたびに、どんどんと深刻な出来事になっていきます」

ゆずの顔がうっすら青くなる。

「ってことは……」

「ゆずは、さっきのやつみたいに、死ぬってこと…………!?」

コガラさんがうなずく。


〇


ゆずがベッドの上で暴れまわっている。

「いやだいやだいやだ! あんな風に死にたくないし、そもそも私は私の幸せを追求したよぉ!」

コガラさんが、なんとかゆずをなだめようと、私のバッグから鳥のぬいぐるみを取り出したりしてあやしている。

「ねえねえ、ゆずちゃん聞いて? この呪いは解く方法があるんだよ!」

「えーっ! そうなの?」

なんとかゆずの気を引くために、コガラさんが一人で人形劇をしている。

普段の妖しい感じの声とは打って変わって、はちゃめちゃに声が可愛い。

それはそれとして、私も自分のやるべきことをやらなければならない。

「ちょっとゆず! 落ち着きなよ!」

出会った時とは逆で、今度は私がゆずに馬乗りになる。

「うわっ。 びっくりした…… すずもこういうことするんだね」

少し、顔が赤くなっている。

「それはいいから。

どう、お話聞く気にはなったかな?」

コガラさんは、まだ懸命に人形劇を続けている。

「あ、あのぉ。 もう落ち着いたので……」

「ああ、すみません。 気が付きませんでした。

それでは、いまから呪いの解除方法、というか植物を『枯らす』方法を教えます」

コガラさんは、人形劇で説明してくれるそうだ。

次回


交換植物「イシニア」の解呪。

始まる等価交換。

不幸と幸福。

次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。