↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪に正義を、阿呆に脚光を!  作者: 広炉ひろ
第三章:乙女奔走編
PR
19/25

第十九話:オポチュニスト・逃避行9/オン・ユアマーク・デュエリスト

前回のあらすじ


令嬢風賞金首狩りカードゲーマー、ティエルと遭遇。

コガラさん、ゲーム開始。

そして第一ターン終了。

〇


ターンは再び、コガラさんへと渡る。

「経過」の数値は、案の定二に増えた。

コガラさんが、デッキからカードをドローする。

私は、私たちの反応で相手のヒントにならないように、コガラさんの手札が見えない位置に立っているので、よく見えない。

でも、おそらくいいカードではなさそうだ。

そんな感じがした。


☐


いま、私が引いたカードは、「時の歩行者」ですね。

いい紙牌(カード)ではありますが、まだ発動の条件が満たされていませんので、少しお預けです。

「それでは、ダイス・ロール!」

出た目は、二。

「あれ? さっきは運が良すぎたのかな?」

ゆずちゃんが、心配そうにこちらを見ている。

かわいいですね。

「いえいえ、今の私にはこれで十分ですよ。 前のターンに使用しなかった余りがありますから」

手札を混ぜて、使いたい紙牌を先頭に持ってくる。

ちなみに、「紙牌」というのは、私が勝手にそう呼んでいるだけで、本来の呼び名は「カード」と言うのです。 これは師匠の受け売り。

「六の遊星を消費して、手札から『井蛙低操(せいあのひそう)』を召喚しますよ」

彼女の神秘で生成されたであろう机から、オーラがあふれ出し、私のカードのイメージを組み上げる。

数秒も経たないうちに、蓮の花の上で眠る二匹の蛙のイメージが現れた。

「へえ。 やはり、あなたは随分とニッチで貧弱なカードをお使いになるのですね」

「それは、試してみないとわかりませんよ?」

再び、紙牌の上に手を乗せる。

「それでは効果を発動。 この式神を解放状態に変更し、場に存在するほかの式神一体を手札に戻すことで、効果を発動できます」

場に出ている「蝸蟄(かくれ)」を手札に戻して、「井蛙低操(せいあのひそう)」を解放状態にし、横に倒す。少し、カードが光った。

「自身の手札を二枚、好きな回数山札へと戻します。 その後、これを行った回数だけ、両者の残機を一点減らします」

先ほど整えた手札を、一気に鷲掴みにして山札に戻す。

これが、なんとなく気持ちが良いのです。

すぐに、選択した六枚は全てデッキに戻った。

「それでは、両者の残機から三点を引きますが、その時に私は、このカードの効果を発動しますよ」

手札に残した二枚のうち、一枚を表向きにする。

「っ!? それは……」

「そうですね。 『天使の掌握』です」

「見てよ、すず! キラキラカードだよ!」

これは、師匠が考え付いた、あんまり強いのかは今でもよくわからないコンボ。

「この魔法は、自分が、自分の手番中に失点を受ける際にのみ、即座に発動できる『反応魔法』です。

効果は……」

山札を丸ごとつかんで、切る。

かつて師匠の言っていたことを思い出す。

「いいかい、コガラ。 よく見ておきなさいな。

シャッフルするときはな、ここに小指のお肉をひっかけるのだ。

それで、お肉でマーキングしたところを下からひっぱりながら、一番上に持ってくるんだ」

あの時は、師匠は手も体も小っちゃくてかわいいな、としか思っていなかったのだが、初めて他人と対戦してわかった。 ……つまり、如何様ってことですね。

師匠との思い出をいくつか思い出しながら、使いたい紙牌が上になった状態の山札を三つの束に分ける。

「さあ、選んでください。

その紙牌が『天使族』であれば、私はそれを、ただで使うことができますよ」

実は、どれを選んでも同じなのだが、師匠は「相手が何かを選ぶときは、完全に平等で運でしかない、と思い込ませるのじゃ! わっはっはー」と言っていた。

「では、これにさせていただきます」

ティエルさんが選んだのは真ん中の束でした。

「捲っていいですよ」


☐


「行きますよ……」

ティエルさんが、手に取った紙牌を勢いよくひっくり返す。

捲れたカードは、もちろん当たりのカードでした。

「あらら。 マジですか……」

「ありがとうございますね。 それでは召喚しますよ。

『雲玉竜(ひぎょくりゅう)』っ!」

机から、大量のオーラが放出され、疑似的な雲の中から巨大な竜が姿を顕現させた。

「おぉ! かっこいいーっ それに星がめっちゃあるよ!」

「私の能力でも、あれ出せないのかしら……」

珍しく、すずちゃんも反応していますね。

「いきなり十二星の式神ですか⋯⋯

でも運が良かっただけですからね!

余り調子に乗りすぎると、痛い目をみますよ」

「ふふっ。 でしたら、運がある間は調子に乗らせてもらいますね。

『雲玉竜(ひぎょくりゅう)』の登場時効果を発動します」

机上の雲竜が咆哮している。

カッコいい。

そういえば、これは師匠がくれた紙牌でしたね。

「自身の現在の残機を、二十から引きます」

「えぇっと、コガラさんの残機は、さっきまで十八で、自爆(スーサイド)のカードを使っているから…… 十四ですか!」

「おしいですね。すずさん。 十五です。 ここにも書いてありますよ」

「あっ、はずかしい……」

うぅん、やはり私の弟子はかわいいですね。

「それでは、二十と十五の差は五ですね。

ということで、私は山札から五枚を表向きにして、星五以下の式神を二対まで召喚します」

「そのために、随分と残機を減らしたのですね……」

「さっすが師匠!」

敵が何もできずに眺めていることしかできないこの時間というのは、遊戯の醍醐味ですよね。

「それでは、一枚目」

捲れたカードは、魔法の「処刑人の躊躇い」なので対象外ですね。

「魔法ですかぁ。 それでは二枚目っ」

次なるカードは、星六の式神「狼煙燈(ともしび)」

「今度は、星が六個ですか。

これでは、出せませんよね」

「あらまあ。 どうやら先ほどまでの運とやらは、どこかにいってしまったようですね」

「うるさいぞ! 師匠はこれから巻き返すんだから!」

弟子も応援してくれていますし、そろそろ出てくれないとまずいですね。

「安心してくださいね、次で出ますよ。 えいやっ!」

折角なので、三枚一気にめくってみた。

「おおーっ、さすが師匠!」

捲ったカードはすべて星五の式神だった。

「まだ、調子に乗れそうですね」

使わなかった紙牌は、山札の下へと戻っていく。


☐


場に呼び出したのは、「侃鰐(かんがく)」、「金兎(かなう)」、「華猫(かびょう)」の三体。

具現化されたイメージたちが、雲竜を取り囲んで、戦闘態勢に入っている。

「それでは、さらに『金兎(かなう)』の効果を発動します!」

「出た! 師匠の式神コンボだ!」

ふふっ、見せたこと無いのに。

「この式神が出たとき、自身の残機から五点を取り除きます」

「えっ! でも、そんな事したら負けちゃうんじゃないですか」

「ゆず。 コガラさんがそんな阿呆な事するわけ無いでしょう……

意味があるのよ、きっと。」

そんなに信頼されるのは、師匠冥利に尽きますね。

あの時の師匠も、こんな気持ちだったのでしょうか。

「では、山札から三枚を表向きにします」

それと、実は先ほどのゆずちゃんの言っていることは半分ほど合ってます。

私のプレイスタイルは、カード間のつながりを深く意識せず、その場その場で強力な妨害、除去効果を持つ紙牌を使い続けられる「グッドスタッフ・コントロール」と呼ばれるタイプなのです。

なので、今回はかなり多く紙牌が連鎖してると言えますね。

運がよかったのです。

「その後、相手は自身の残機を半減させることで、自身でこの中から一枚を選べます。

半減しない場合は私が選べるようになりますから、よーく考えてくださいね」

悩んでいる。

「ああ、強いなっ。 あっ、強いのはあなたではなく、カードの方ですからね!

調子にのらないでくださいよ」

これは、負け惜しみでしょうね。

「で、どうするのですか。 選びますか、選びませんか」

悩んでいます。

どちらを選んでも、そもそもあなたは不利だというのに。

今、あなたがすべきなのは、私に振り回されないようにプレイすることですよ。

貧乏ゆすりが激しくなってきていますね。

「チッ。 そっちで選べよ」

「あーっ! 急に口が悪くなったよ、すず!

化けの皮が、イラつきで剥がれてるよ」

「あらぁ、ダメですよー。 遊戯で最も大事なのは、平常心で冷静なプレイをすることなんですから」

「……心得ております。 しかし、そこの何もしていない阿呆面どもは、口を出すべきではないだろう!」

「まあ、私のかわいい弟子たちを阿呆面呼ばわりしますか…… このゲームが終わったら、お仕置きが必要そうですね」

少し、間が開いた。

「いいから、さっさと選んでください!」

ああ、そうでした。

「では、私は山札から『糾尾妖(きゅうびのあやかし)』を召喚します」

これで、場には「雲玉龍」、「井蛙低操」、「糾尾妖」、「侃鰐」、「華猫」、「金兎」の計六体の式神が召喚された。

「すごいよ! 一ターンで六体もカードが出てきたよ!」

「ふっふー。 すごいでしょう。 これが終わった一緒にやりましょうね」

しかし実は、このゲームは十年ほど前に絶版になっています。

「前のターンに出した『蝸蟄(かくれ)』は、もう場にはいないので、攻撃できる式神は無し。

では、ターン終了です」


〇


「はぁ、長かったわ。 それじゃあ、私のターン、ドロー!」

ティエルは、ただただコガラさんのターンを眺めているだけだった。

いや、そもそもカードゲームってそういうものなのか?

でも、コガラさんの場には、モンスター……じゃなかった、式神が六体出ているのとは別に、最初のターンに伏せておかれた、もう一枚のカードが存在している。

もしかしたら、これが相手ターンに関与する方法なのかも。

「ねえねえ、すずだったらどんなデッキ使ってみるの?」

「うぅん、そうねぇ。 私だったら、やっぱり……」

突如、怒鳴り声。

「うるっさいわよ! あなたたちお荷物どもは、黙ってみてなさい!」

この空間では、暴力が使えないということを忘れて殴りかかろうとするゆずを抑え込んでから、ゲームは再開された。

「うりゃっ」

ダイスをふるった。

出目は……八。

「よしっ、運がいいですわ!」

さっき、「運だけで調子に乗るな」って言ってなかったっけ。

「これで、遊星が十個溜まったわね……

思ったよりも早かったですわ」

なんだか、よくない予感がする。

次回


「遊星」が十個溜まったティエル。

召喚される巨大な式神。

勝負の行方は……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。