24.
黒竜討伐という前代未聞の騒動はあったが、大狩猟祭は無事に? 幕を閉じた。
ちなみに優勝者はリュシオンだ。
理由は黒竜を見事に仕留めたからである。
わたくしが購入した呪われたブレスレットを使って……。
◇◇◇
大狩猟祭から三日後のことである。
離宮に東の国の商人が呼ばれ、大量の翡翠のアクセサリーが持ち込まれた。
「さあ! 好きな物をいくらでも選ぶが良い」
リュシオンが黒竜を倒した褒美として、翡翠を扱う商人を呼んでほしいと父に願い出たからだ。
翡翠はわたくしに贈りたいと一言付け加えたせいで、目の前にはこれでもかというほど翡翠のアクセサリーが並んでいる。
「セシル、好きな物を選んでいいよ」
「ええと……」
選べと言われても、たくさんあり過ぎて困るのだが?
「いい機会だから、カザリーンもいくつか購入したらどうかな?」
なぜかアレクシスお兄様とカザリーンお義姉様も離宮に来ている。
国のスリートップが抜けて、政務は大丈夫か?
「あら! 嬉しいです。せっかくだからセシリア様とお揃いの物がいいわ」
カザリーンお義姉様とお揃い? それはいいかもしれない。
「それでは、そのガラスケースの中の飾りを見せてくださる?」
ガラスケースの中に収まっている丸い装身具のような飾りが気になった。対になっているのか二つある。カザリーンお義姉様とお揃いで持つにはちょうど良さそうだと思った。
商人にそうお願いをするとなぜか彼の顔は青ざめた。
「こ、これをお選びになられるとはお目が高いと言いたいところなのですが……」
商人は言いにくそうに口ごもる。
「何だ? 良い物なのか? はっきり申せ」
父が凄むと商人はますます顔を青ざめさせる。
怯えさせてどうする!
だが、商人は覚悟を決めたように深呼吸をすると、口を開く。
「こちらの装身具は玉佩と申します。実はこの対の玉佩には言い伝えがございます」
言い伝え? 何やら嫌な予感がする。
「その昔、東の国には絶世の美女と謳われた女性がおりまして、王の目に止まったのですが、なにぶん身分が低かったのです。当然結ばれることはかないませんでした」
何やら昔語りが始まった。
「そこで王は対の玉佩を作らせて、一つをその女性に贈りました」
あれ? いい話っぽい?
「しかし、女性を妬んだ王の妃が彼女を殺してしまったのです。玉佩は彼女の血を浴びて夜な夜な……」
「もう分かりましたわ! その玉佩は呪われているのですね!?」
「よくお分かりになられましたね。皇女殿下はこの話をご存知で?」
はい! 呪われたアイテムきた!
知らなくても、その流れなら大体読めるわ!!
「それでその玉佩は爆発するのですか?」
カザリーンお義姉様の声が弾んでいる。ワクワクしているのが伝わってきた。
「爆発ですか? いいえ。ただこの玉佩を離れ離れにすると祟られるのです」
「では、離さなければ問題ありませんね!」
いやいやいや! 問題ありまくりですよ!?
カザリーンお義姉様! まさか買う気ですか!?
「……まあ、離さなければ問題はございません……よ」
お~い! 商人の目が泳いでいるぞ!
絶対、まだ他にも何かあるに違いない!
一応わたくしは止めたのだが、結局その呪われた玉佩はお買い上げとなった。
カザリーンお義姉様がいたく気に入ったからだ。
ちなみにシンプルではあるが、きれいなネックレスをカザリーンお義姉様とお揃いで購入した。
こちらはアレクシスお兄様が選んだので間違いはないだろう。
◇◇◇
その夜、寝る前にリュシオンから贈り物用に包装された箱を渡された。
「セシルに僕からプレゼントだよ。開けてみて」
「ええ」
促されるままに箱を開けると、翡翠のブローチが輝きを放つ。
「まあ! きれい!」
花の形に細工された翡翠は澄んだ緑でとても美しい。
「気に入った?」
「ええ。ありがとうリュシオン」
今日来た商人から購入したのだろうが、いつの間に選んでいたのだろう。
「翡翠は幸運や繁栄をもたらし、魔除けの効果もあると言われているんだ」
「そうなのですか」
そんな石が呪われるとは……。
商人の話に出てきた美女の怨念は凄まじいものなのだろう。
カザリーンお義姉様は大丈夫か?
「わたくしからもリュシオンにプレゼントがありますの」
同じく贈り物用に包装した小箱をリュシオンに差し出す。
「セシルから僕に? 開けてみてもいい?」
「どうぞ」
鼻歌を歌いながら包装を解いていくリュシオンはものすごく嬉しそうだ。
「翡翠のカフスボタンじゃないか」
認めたくはないが、わたくしが選んだものは大抵呪われた何かなので、テレサに鑑定してもらった。どこから仕入れてきたのか、鑑定の魔道具をテレサが持っていたのだ。
「リュシオンに似合うのではないかと思いまして」
するとリュシオンはわたくしを抱き上げる。お姫様抱っこというやつだ。
「きゃっ!」
「セシルありがとう! すごく嬉しいよ!」
ものすごく喜んでいる。久しぶりに見た。感極まるリュシオンの姿。
普段は冷静な人なので、こんな様子のリュシオンを見れるのはなかなかレアなのだ。
「喜んでいただけて何よりですわ」
「毎日肌身離さず着けるよ。寝る時も湯浴みの時も」
「……さすがに寝る時や湯浴みの時は外したほうがいいのでは?」
くすりと微笑むと、ふいに頬に口づけられる。
「セシル愛している」
毎日額や頬に口づけられて愛を囁かれているが、慣れない。
いつか「わたくしも愛しています」と言える日が来るのだろうか?




