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冷静なやつ

理解する瞬間が、一番怖いのかもしれません。


ここから、少しずつ変わっていきます。

第3話「冷静なやつ」


「……死んだのかよ」


誰かが呟く。


誰も否定しない。


できるはずがなかった。


目の前で、人が倒れた。


そして――動かない。


「ふざけんな……」


その場にいた全員が、同じことを思っていた。


でも。


誰も声にできない。


「……ねえ」


隣で、幼馴染が震えている。


「これ、本当に……」


分かっている。


言わなくても。


「……ああ」


短く答えるしかなかった。


喉が、やけに重い。


空気が冷たい。


さっきまでの“いつもの場所”は、もうどこにもない。


「……落ち着け」


その時だった。


少し離れた場所から、声がした。


大きくはない。


でも、不思議と通る声。


「……騒いでも意味ない」


ざわついていた空気が、少しだけ止まる。


視線が集まる。


そこにいたのは、一人の男だった。


同い年くらいか。


壁にもたれかかりながら、状況を見ている。


表情は、ほとんど変わらない。


「……なんだよ、お前」


誰かが睨む。


男は肩をすくめる。


「見れば分かるだろ」


淡々とした口調。


「ここは“そういう場所”だ」


その言葉に、ざわめきが戻る。


「は?何言ってんだよ」

「ふざけてんのか?」


当然の反応。


でも、男は気にしない。


「さっきの見ただろ」


倒れている男に視線を向ける。


「ポイントが0になったら終わり」


「それだけの話だ」


簡単に言う。


まるで、当たり前のことみたいに。


「……終わりって、何だよ」


誰かが震えた声で言う。


男は少しだけ目を細めた。


「分かってるだろ」


一瞬の沈黙。


誰も、続けられない。


「……死ぬってことだ」


その一言で。


空気が完全に固まった。


幼馴染の手が、強く服を掴む。


「やめろよ……」


誰かが言う。


「そんなの、ありえねえって……」


「ありえる」


即答だった。


「現に、一人死んだ」


逃げ道を潰すような言い方。


残酷なほど、現実的。


「……じゃあどうすんだよ」


別の声。


少しだけ、怒りが混じっている。


「このまま何もしなきゃ、また減るんだろ!?」


その通りだ。


さっき、確かに減った。


何もしていないのに。


「……だから、考えるしかない」


男は静かに言う。


「減る条件と、減らない方法」


「ルールを見つける」


「それが生き残る唯一の方法だ」


その言葉は、正しい。


でも。


簡単じゃない。


「そんなの……」


誰かが言いかけて、やめる。


否定できない。


「……お前、名前は?」


気づけば、口に出していた。


男がこちらを見る。


一瞬だけ、目が合う。


冷静すぎる目。


「……好きに呼べばいい」


少しだけ考えてから、言った。


「どうせ、ここじゃ名前に意味はない」


その言い方に、少しだけ違和感を覚える。


まるで――


もう慣れているみたいな。


「……変なやつだな」


小さく呟く。


男は、わずかに口元を歪めた。


笑ったのかどうかも分からない。


「それより」


男が、自分のスマホを見る。


「次が来る」


その瞬間。


スマホが、小さく震えた。


画面を見る。


95 → 90


「……またかよ」


誰かが絶望的な声を出す。


「……早すぎる」


幼馴染が震える。


「ねえ、これ……どんどん減っていくの……?」


答えられない。


でも。


「……多分な」


否定できなかった。


「……時間で減るのは確定」


男が呟く。


「あともう一つ」


全員が、そいつを見る。


「“何もしない”のもリスクだ」


「……は?」


意味が分からない。


「さっきの減少、早かった」


「つまり――」


一瞬だけ間を置く。


「何かしないと、もっと削られる可能性がある」


その言葉に。


背筋が冷えた。


(……動かないとダメ?)


でも。


(動いても減るかもしれない)


どっちにしても、地獄だ。


「……ふざけてる」


誰かが呟く。


誰も反論しない。


できるはずがない。


「……ねえ」


幼馴染が、また小さく言う。


「どうすればいいの……?」


その問いに。


答えられる人間なんて、いなかった。


ただ一人を除いて。


「……簡単だ」


あの男が言う。


全員の視線が集まる。


「“試す”しかない」


その言葉は。


あまりにも冷たくて。


そして――


正しかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


少しずつ、このゲームの形が見えてきました。


ただ、それを理解したからといって――助かるとは限りません。


よければ、この先も見届けていただけると嬉しいです。



――あなたなら、何を試しますか?

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