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第二十七話 正体は分かれど

マシロのせいでやりにくいけど後でしっかりとサスペンス要素は触れるよ

        第27話

「……えー、貴方方に集まって貰ったのは他でもありません。

食料が何者かに燃やされた件について、こちらがわかっている事をご報告させていただきます。」


初めてここに向かった時と同じ様に、ライザさんが土台を土魔術で作って、目立つ場所に立っている。

その後ろに、無言でマシロとヴィルが立っている。


ここに初めてきたのはまだ2日前の事なのに随分遠く感じる。

ちなみに大魔獣についてなど一切の説明もなく、ライザさんはあそこに立たされている。


全ては全員を集めて、大魔獣が判別できるかもしれない、っと言うマシロに判断させる為だ。


今は登塔家達は静かだが、顔はとても険しい。

大魔獣を倒す為には、彼らの協力は必要だ。

だが問題は、彼らにとってはそんな事情は関係ないのだ。


「そうだ!どうなってんだよ!それにあの魔獣の群れはなんだ!?」


剣を持った男の登塔家の一人が声をあげる。

腕章の色から、紫班の様だ。

内容自体はは一分の隙のない正論だ。


唾が出そうな勢いで喋る彼は、“俺”の目には人間にしか見えない。

マシロを見るが、反応はない。


どうやら完全に人間の様だ。“俺”などはまだましな方で彼らは一切の情報もなく、この騒動に巻き込まれたのだ。


「どこかであったか?」


紫班の男をどこかで見た気がしたが、多分戦場で会ったのだろう。


「その件に、関しましては現在調査中で…」


ライザさんも情報に関しては彼らと似た様な物だ。

答えられる事などあるはずもない。


「そればっかね!」


白い外套…今は土で茶色に変わっているのを着た黄班の女登塔家が同調する。

やはりダメだ、周囲を見渡すが誰をどうみても人間にしか見えず、逆に全員疑わしく思えて来た。


「…アル。きょろきょろしないで。どこ行ってたの?」


いつの間にかアイリーンが背後に立っている。

驚いたと同時に大魔獣の可能性もあるか…?ととも思ったが、彼女はずっと“俺”達と動いていた。入れ替わるタイミングはない。


それで言うと青班の面々も、多少薄いと思って良いだろう。そこだけは安心できる。


「ごめん、マシロに呼ばれてて…」


「そう…でも、あまりマシロの事を信じすぎないで」


マシロと“俺”、そしてヴィルには転生者と言う共通の秘密があるのだ。


その点だけは信用できる、だがそれをアイリーンに説明はできない。


彼女から見ると、接点もあまりないのに、確かに信用しすぎている様にも見えてしまうのか。


「…十分気をつけるよ」


良い返しが思いつかずに、気まずくなって周囲に意識を戻す。


「ですから、異変を調査する為の今作戦であり、不測の事態に対応できる人員、物資は十分用意したはずで…」


「じゃあなんだ!?俺らが無能だって事か!?」


「ふざけないで!」


議論はどこまでもヒートアップしており、それこそ何かがあれば爆発しそうだ。


いやもう爆発はしているか。

都市防衛隊にも、登塔家達にもピリピリとした殺気の様な物が空気を張り詰めさせている。


「えー、だったら。もう帰ることにしよう。

調査は終わり!封鎖は解除!勿論今回の騒動の分の報酬は出すよ。それで良いんだよね?」


マシロが良い意味で空気を読まない反応を返し、登塔家達は一気に静かに変わる。


「ちょっと、勝手には…」


「まーまー、ライザ。作戦終了を判断する権利は、私にもあるよね?ここまで、不測の事態があったんだったら、ここに残ってても仕方ないよ」


そう言われるとライザは眉を顰めて引き下がる。


「……そう、だな。それで良いぜ」


最初に声をあげた剣を持った登塔家がそういうと群衆は水を打ったように鎮まる。

誰も彼も納得している訳ではないと思うが、帰れるなら拒否するつもりはないらしい。


「じゃあ、出発は1時間後。魔獣の妨害、或いは襲撃があるかもだから各員しっかり休みたまえ」


良い感じにマシロが纏めたと思うが、大魔獣が分からなければ、そこまで長い道のりではないとはいえ、視界の悪い霧の森で魔獣が襲ってくる中、背後も警戒しなくてはならない。


休もうと座り込む登塔家の波をかき分けてマシロの元まで辿り着いてこっそり聞く。

ヴィルも一緒にいる様だ。


「んで?分かったのか?てか居たのか?」


「やっぱり居たし。分かったよ。犯人は彼だね。」


マシロが視線を向けた先には、一人の登塔家がいる。

頭はスキンヘッドで、背中に槍を2本背負っている赤班の腕章をした大男が座り込んで目を瞑っている。


「ちょっと待て…あいつって確か…」


ヴィルが何かを言いかけて止める。


「あ!ヴィルっち!アルっち!どうしたんっすか!?悪巧みっすか!?」


「探しましたよ。」


フィリとエルがこちらに向かって手を振っている。

その後ろには、ロアが付いておりどうやら探されていたらしい。


「……あの男って、レイって名前で確か…」


目の前の、3人の、孤児院の兄貴分だったはずだ。

……やっぱり、誰にとっても、最悪な話になりそうだった。


「…一応聞いとくけど、どうやって気がついた?」


これに関しては両手を上げて、信用しよう、とは思えない。

誰が大魔獣でもおかしくはないと思っていたが、

一応の仲間の知り合いとは。


「視線、細かい筋肉の動き、歩き方、呼吸の感じとかかな」


マシロに判断の根拠を聞くが、どれもピンと来ない。


確かに…それが分かれば、人に化けた大魔獣かは判断できるかもしれないが、あまり接点のない“俺”はどうみてもレイ本人…少なくとも人間としか分からない。


と言うか接点があってもそこで判断できる気はしない。


誰がどうみても、大魔獣だ、と判断できる証拠が欲しい。

切り掛かるのもありかもしれないが、外れていた場合不和の元だ。


最悪の場合、“俺”が裏切り者、ないしは魔獣を手引きしたナニカ、扱いされかねない。


そして“俺”は、その根拠の塊だ。

胸を切り開けば誰がどうみても魔石がある。


「証拠がいると思うけど…どうする」


そして魔石がある、と言う点においてはヴィル、マシロも同様だ。

つまり証拠がなければ攻撃できないと言う事になる。


「んー、彼の知り合いがいるなら、会話で違和感を植え付けるのが良いだろうね。思い出話とか。

記憶までは再現できないだろうしね」


それなら適任なのが3人いる。

問題は、どう切り出すか。

フィリや、エル、ロアに事情を話す…と言うのは全然ありな案な気はする。


大魔獣の説明自体はしているのだ。

他の人に話を通すより、そっちのが多分楽だ。

だがハードルはかなり高い。


『やぁお三方。君達の兄貴分は、既に殺されて大魔獣っていう奴に成り代わられているかもしれないんだ!』

なんて言えない。その判断の根拠も、マシロのみしかわからない話とくればかなり厳しい。


「…はぁ。まどろっこしいな」


ヴィルが溜息をついて面倒そうに首を横に振る。

確かに、ウジウジ悩んでいても、仕方がない。


「そうだね。だったら、名案があるよ」


「それでまともな案だった事あったか?」


マシロの一筋の光を嘲笑う様にヴィルが即座に否定する。


「簡単な話だよ。青班と、彼を含めた何人かで偵察…って名目で外に出ればなんらかのアクションがあるはずだよ」


大魔獣だけの指定しないのは、気づいたと言う疑いを向けられない様にする為だろうが、それつまり…。


「それ囮じゃん」


「そうなるね」


とはいえ代案などないし、事情説明抜きだとそれが限界そうだ。


アクションが無くても、3人に違和感を持たせる事ができれば、動きやすくなるはずだ。

少なくとも登塔家+大魔獣vs“俺”達は避けられるかもしれない。

強硬手段に出るとしても、大多数は相手しなくて良い…考えたくはないが。


「…はぁ。まぁ頑張れよ。」


何故かヴィルが“俺”に同情する様に肩に手を置いたのだった。

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