第四話 分かったこと
プロメテウスの顔が、直ぐに驚きと感歎に満ちる。
「これは……!?」
「ほう、もう分かったのか? それで、テティスの子はどんな子だ? 父親は一体誰なのだ? ええい、早く云わぬか」
気が急いているのか、ゼウスが矢継ぎ早に聞き質す。
「残念ながら、この女神の子の父親が誰になるのか、はっきりと分かる要素は出ていません」
「何だ。分からぬのか……」
あからさまに落胆するゼウスが少し乗り出していた体を、深々と座り直す。
「それも、その子供の未来について分かったのは一つだけに御座います」
「一つ? 何だ、それは?」
それを聞いたところで、と言わんばかりの余り気乗りしない声でゼウスが訊く。
「その子供は、将来父親の力を遥かに超える力を身に付けると出ております」
「何、父親の力を遥かに超える子供が生まれるだと?」
「はい、その一つだけがはっきりと出ております。だとすると、父親が誰であろうとその事実だけは何があっても変わらぬかと存じます」
「つまり、このゼウスが父親となれば、その子はこのゼウス力を遥かに凌ぐ力となると? ならぬ! それだけはならぬ!」
ゼウスは勢い良く立ち上がる。
その顔は嫌悪に満ちていた。
これだけの反応を見せるのには訳があった。
かつてゼウスは、強大な力を持つ両親と後々の復讐を恐れて両親の一族である巨人族をその手にかけ、殲滅させた過去を持つ。
そうして今の全知全能たる地位を得たのだ。
もし、生まれて来た子供が自分よりも遥かに力を持ったなら、今度は自分がその脅威に晒される恐れがある。
勿論、その子供が野心を持つとは限らないが、自分がそうして来ただけに、ずっと猜疑心を抱かずにはおられないだろう。
「何と言う事だ。ポセイドンよ、こうなった以上お主もテティスと添い遂げる事は許さぬぞ。お主の力を遥かに超えるとなると、それもまたこのゼウスの脅威となるやもしれぬからな」
「云われずとも分かっておりますとも。既にトリトンと云う息子に手を焼いておると云うのに、これ以上はとても」
「賢明な判断だ。それにしても……」
深い溜息と共にゼウスは座り直す。
「プロメテウスよ、もう下がってよいぞ」
占った感謝の言葉もなく、プロメテウスのには少し不服ではあったかもしれないが、それを顔や言動に出さずにその場を去って行った。
「アポロンよ、お前はテティスをネレウスの元に送り届けてやってくれ。そして、ネレウスにこう伝えよ。テティスの相手は決して天界の者であってはならぬとな」
勿論、少しばかりでも自分の脅威となる者が現れない為の対処である。
女神でありながら結婚相手を天界の者から除外された訳だが、アポロンに連れられて行くテティスのの表情は、どことなくホッとしたようでもあった。




