第二話 仲裁の一手
新たなる声が聞こえて来ると共に、今まで激しく吹いていた風と降り注いでいた雨がやみ、空を覆っていた分厚い暗雲が割れ、太陽が顔を覗かせる。
ゼウスとポセイドン、そしてテティスが振り向けた視線の先から、一神の男が向かって来る。
「アポロンか」
神々しさを漂わせ、ゆっくりと歩み寄って来たのは、ゼウスの息子であり、太陽神アポロンであった。
「何をなさっておるのです。神々がそうやって睨み合っているだけで、このオリンポスだけでなく地上にも多大な影響が出るのですぞ。お二方ともお分かりでしょう」
「当然知っておる。しかし此度ばかりは引けぬ」
「ポセイドンがこう申しておるのだ。儂から引く訳には行くまい」
また睨み合いそうな二人に、アポロンは傍で身を竦ませるテティスに目を向け、溜息を吐く。
「状況を察するにまた父上の病気でしょう。いい加減、お止めになったらいかがです?」
「止めよと申して止めると思うのか?」
「無理でしょうね……」
打つ手なしかと、アポロンは顔を曇らせるが、直ぐに頭上を照らす太陽のように晴れた。
「おお、こう言うのはどうでしょう。この女神にどちらが相応しいかどうか、占って貰ってはどうですか?」
睨み合っていた二神の目が、アポロンに向けられる。
「占う? おお、その手があったか! それならば兄上も文句はないでしょう」
「占いか。ならばプロメテウスを呼んで参れ」
「プロメテウスを、ですか?」
「あ奴には先を見通せる力がある。あ奴が見る未来ならば間違いはなかろう。それで良いな、ポセイドンよ?」
「確かに、プロメテウスならば問題はないでしょう」
「分かりました。ならば、お二人はその女神を連れ、万神殿でお待ち下さい」
オリンポス山の頂きに大きく聳え立つパルテノン神殿。
神殿内部の広々とした王の間の奥に備え付けられた玉座に、ゼウスがゆったりと座っている。
その左前辺りにポセイドンが立ち、それに相対する位置にテティスが立っている。
そこに、アポロンが一神の男を連れて入って来た。
「アポロンよ、少し遅いのではないか?」
ゼウスは、表情にも苛立ちを見せている。
「これでもヘルメスを遣わせて呼んでまいったのです。これ以上早くと言うのは無理と言うもの」
「まあ良い。プロメテウスよ、これへ」
アポロンは顔に少し不快感を出しながら、ポセイドンの横に並ぶ。そして、アポロンが連れて来た男神━━プロメテウスは、玉座から少し離れた位置で立ち止まり、片膝を床に落として顔を伏せる。
「お呼びでしょうか、父なる神よ」
「お前に未来を見て貰いたい者がおるのだ。テティスよ、こちらへ」
返事とともに、テティスがプロメテウスに歩み寄り、横に並んで歩みを止める。




