表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/51

黒い森の館の講義

 呪術の学びは、夜の講義とは別に、月に1回程度、昼間に黒い森の館に行くことがあった。

 伯父から直々にお誘いがあってフェルディも同行し、一緒に講義を受けていた。

 始めフェルディは私以上に緊張していたけど、徐々にその緊張感は伯父に対してではなく、講義の内容に向けられるようになった。

「月と日は常に対照的であり、月は闇に属する。日は光の象徴だ。星は闇にありながら光とみなされ、月とも離れがたい。しかし、日と月は共存し、日と星は相克する。白い月は、日の中で現れるも、闇となる。闇に引きづられ、闇に光る」

 謎解きのような言葉が唱えられ、しばらくすると呪術の実習。私よりもフェルディが質問することが多かった。

 私は、質問ができるほどよくわかっていなかった。

「魔女が月の光から力を集めるのも、闇だからですか?」

「そう、闇属性の光、という言い方をする者もいる。闇がなければ、弱い光は消える。」

「闇は悪を意味するわけではないんですよね?」

「その通り。名が闇であるだけで、そこには善悪はない。」

 呪術を学ぶと決めながらも、聞く話はいつもさらさらと頭を抜けていくような気がする。二人が話しているときは、特にそうだった。

 こんな、聞き流す状態で自分の力にできるのかわからないけど、聞いたことが何気ないことで理解できることもよくあって、今は知恵のストックを増やすことが大事なように思えた。


「腕輪を見せてもらっていいかな」

 言われて、腕輪を外して伯父に渡した。伯父はじっと、外側も、内側も観察すると、

「まだ壊れそうにないね」

と言って、私にではなくフェルディに手渡した。

「壊せるかい?」

 フェルディには前の腕輪が壊れたことは言っていなかった。

「いや、…無理だと思います」

 フェルディが指ではじくと、金属独特の音はしたけれど、びくともしなかった。もちろん、亀裂も入らない。

 もう一度伯父が受け取り、少し魔力を流した。あの時と同じように、呪いを強化しているようだったけれど、今度はひびが入ることはなかった。

「では、返そう」

 伯父が私に腕輪を手渡した。

 受け取ろうとすると、火にくべていたかのような熱さを感じ、思わず手を離した。

「っ…」

 はずみで落ちた腕輪が少し転がり、左右に揺れながら止まった。

 もう一度拾おうとしても、熱さで拾えず、手を引っ込めた。

 不思議そうな顔をしてフェルディが拾おうとしたけれど、やはり熱かったようで、ちょっと触ってすぐに手を引いた。

「テレシア、拾って」

 指名されて、もう一度拾おうと手を伸ばす。

「危ないよ」

 フェルディが横から手を伸ばした。私のほうが近かったので、先に手が触れようとした時、腕輪が何かにはじかれ、手から遠ざかった後、大きなひびが走った。そして目の前で、瞬時に劣化したかのようにぼろっともろい塊になって崩れた。

 伯父が、にやりと笑った。何か試していたのだ。不快になり、顔が歪んだ。

 フェルディは、何が起こったのかわからず、きょとんとしている。

「ああ、すまない。ちょっと魔法の入れ方を失敗したようだ。新しいものを渡そう」

 今度は熱くなっていない腕輪を私に直接渡した。


 砕けた2つ目の腕輪にかけられていた呪いを思い出した。

 「崩壊の祝福」

 この解釈は、私の宿題だった。

 崩壊、つまり、砕けることが喜ばしいということ…。

 砕けたきっかけは、熱さ。おそらく本物ではない。熱自体が砕けさせたわけではない。

 熱いと言って、手から離した。熱いとわかって、もう一度拾おうとした。「危ないよ」と言われた。

 危ないのは…私。

 私の手から、腕輪は遠ざかり、砕けた。

 以前、指輪が砕けた時は、腕輪がきついのではないかと心配していた。

 「私」に仇なすものは、崩壊し、姿を消す。

 あの呪いは、元々、試すためのものだったのだ。フェルディからあの力が出るきっかけを。

 普段から魔法が少しづつ漏れ出してはいても、何かに及ぼす力は小さい。それが特異な呪いには予想外の力を呼び起こす。

 合わせ心の呪いの時もそうだった。

 呪われた剣は、次に私の心臓を狙っていた。そして、狙いをそらすために、砕けた。

 1つ目の腕輪が壊れた時、この伯父は答えを出していた。

  「愛されているね」

 からかわれているのだと思った。

 愛、かどうかは分からない。でも、守られていたことはわかる。

 意識した途端、急にくすぐったいような、ざわざわした気持ちが沸きあがって、どうしたらいいのかわからなくなった。

「テリィ?」

 声をかけられ、目が合って、心が揺れた。

「ち、ちょっと、…失礼!」

 慌てて部屋を出て、ドアを閉じると、そのままその場にうずくまってしまった。

 フェルディじゃない。呪われていたのは、私だ。

 「崩壊の祝福」…自分がどう思われているのか思い知れ、の呪いだ。

 少し落ち着くのを待ち、ついでにトイレを借りてから部屋に戻った。

 機嫌のよい魔王と、ちょっと心配そうなフェルディが部屋で待っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ