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コメコメ大商会の創始者。

結局誰が断罪されたのかしら?的で終了した、妹マリエンヌの誕生パーティー。集まって下さった方々へのフォローを済ませ、漸く我が公爵家は通常に戻りました。まあマリエンヌの婚約破棄が整った事は目出度いのです。しかし……ついついチラリと、上座のお父様を盗み見てしまう私。


「…………」


否。通常に戻った様に見えるだけよ…。


モキュ。モキュ。なるべく音を立てずに朝食を食べています。もー!料理長のお料理は最高なんだけど、こんな時に限ってコレ。私の大好きなコレ。美味しいんだけど!最高なんだけど!食べにくいのよー!ニ種をくっつけて挟んでガブリといっちゃいたい。でも殺されるわよね……ソロリとナイフを入れ、崩れた黄身を纏わせ一口大にしてパクリ。チーズがたれる!慌ててお口に突っ込み一安心。かと思った私が浅はかでした。アチチチチー!しかし声には出せません。悶えて我慢の子なのです。しかし熱い。口を閉じたら火傷しそうよ。


「今朝はアボカドとシュリンプ。トマトと燻製ベーコンね。タマゴのトロリ加減も最高。チーズも熱々。我が家のエッグベネテクト(←異世界用にわざわざ似たような名称に変えているのでなければ『エッグベネディクト』だと思います。)は最高よね」

「あら?エリザベートがお料理を誉めるなんて珍しい事。しかし確かに美味よね。特に女性は甘い朝食を好むけど、私にはこれくらいが甘すぎなくて良いわ」


お母様が添え物の人参のグラッセを口に運びながら話す。さつま芋のオレンジ煮も絶品だと、料理長を褒めたたえている。


「お母さま……私は面倒で朝はついパンケーキばかり。何時も我が儘でごめんなさい……」


「マリエンヌ。少しでも食べられる物を食べなさいと言ってるのは私たちなの。だから気にしないの。今話したのは社交界の方々のお話よ。皆さま朝からクリームタップリのフレンチトーストに、ジャムてんこ盛りの紅茶ですもの」


「そうだよ。でもマリアンヌ(←マリエンヌ)のパンケーキは色々工夫してるそうだよ。僕がたまたまつまみ食いに行ったら、これはマリアンヌ(←マリエンヌ)様専用だから駄目だと言われたんだ。野菜を入れたり甘さを控えたりと、色々と栄養を考えてるんだって」


「「つまみ食い? 」」


とたんに小さくなる弟。まあ食べ盛り育ち盛りな年頃だからね。和やかに話をしながら進む朝食。何時もなら朝食は各自の都合が有る為に別々に取る。父は仕事で登城するし、母は社交で朝から出る事も多い。弟は寮生活の為、長期休暇や週末の家からの呼びだし以外はいない。妹は朝食のみ、自分の部屋に食事を運んで貰い食べている。後は手作り品の試作の味見ですませてしまう。その試作品はお菓子類が多い為、皆が心配しているのです。ちなみに私は昼間以外はほぼ自宅で食べているわよ。


朝食を終えてのデザートタイム。今朝は家族全員揃っている。しかし父は一言も喋らない。何故無言なのかしら?デザートはフルーツヨーグルトとアップルティー。朝食だから控え目ね。弟が蜂蜜を頼みスプーンで山盛りかける。お母様が渋いお顔をする。


「ブライアン。蜂蜜かけすぎよ」


「そう言われるお母様は、紅茶にジャムを入れすぎでは? 今ので三杯目ですよね? 」


「…………」


「お母様。お兄様。喧嘩はなさらないで。今私はお豆腐を使い、色々なデザートを作っているの。大商会のお豆腐は体に良くてヘルシーなの。健康食になりそうよ。お肉擬きも開発中だから、出来たら是非味見して下さいね」


「まあ! それはコルセットに泣いてる方々に喜ばれそうね! それに大豆は我が領地の主たる農作物。それから出来る豆腐を使うなんて素晴らしいわ! 」


我が公爵領では、主に大豆と水耕米を作っている。我が国の主食はパンで有り、どの領地でも殆どが小麦を作っている。しかしその為か小麦は安い。正直他国から輸入した方が安い。そんな時に旅の商人が、米と言う物を持ち込んだ。その商人の国では主食で有り、腹持ちも良いと言う。しかしどの国でも相手にされない。畑に水を張り作物を作る。この条件を叶えられる地方が少ないからだという。


しかし当時の公爵はこの米を気に入ってしまった。幸い我が領地には周囲を囲みグルリと川がある。ならば丁度良い。水路を引き水田を作ろう。やがて公爵領では小麦に変わり米が作られる様になった。更には米と大豆を交互に育てると畑が生きる。そう言われる様になり交互に栽培を始めた。後にビールや枝豆等も広めた。それらを成功させた商人に、公爵は土地を与え永住を勧めた。


実はこの商人こそ、現在の大商会の祖先にあたるわけ。名前をコメコメ大商会という。しかし何故かコメコメが省略され、大商会と言われている。実はコメコメの名が気に入らないらしい。


「既に何品かを大商会のロジャースさんに試食して貰いました。彼はデザートより肉擬きの方が気に入った様です。此方は既に商品化を目指してます」


「ふーん。それでロジャースは餌付けされちゃったんだ? で結婚するの? 大商会の後継だけど平民だよね? 」


ブライアン……貴様が言えた義理かい?ローズマリーの肩を持ち、マリエンヌを断罪したのを忘れたの?


「マリエンヌ。お前はロジャースをどう思っているのだ? 実は彼方からお前へ婚約の打診が来ている。かの商会は我が領地にとっても重要な立ち位置に有る。平民だろうがお前が望むなら嫁がせよう。王も今回の件で申し訳無く感じたので有ろう。流石にもうお前に政略結婚は振らぬそうだ。もちろん嫌なら断っても構わない。ニヤリ」


お父様?王様に何かしましたね?


「私は……」


「嫌いではないのだろう?引きこもりのお前がロジャースとなら話すのだ。ならば一度キチンと話をしてみなさい。この後に呼んである。テラスでお茶で良いな」


「はい」


あの腹黒ナイス!グッドタイミングの婚約打診だわ。正直私も爵位が心配だったのよ。でもお父様も王家も、大商会を意外に上に見ていたのね。一安心したわ。


「お前ら! 安心するのはまだ早いぞ! 先ずはブライアンだ! お前は情なさすぎる! ローズマリーの本性を知っとるのか? ニつ名は誰彼構わず身を任せる毒婦だぞ? 侯爵の所は親子丼だ。あんなガキに手玉に取られやがって。しかも更にお目出度い頭をしていたな? ローズマリーがマーガレットブランドの代表の訳がなかろう。エリザベートどうだ? 」


「はい。バレていましたか? 」


「当たり前だろうが! 髪型だけで親を騙せるか! せめてカツラか化粧を変えろ! まあそれは良い。己の本分を忘れなければ好きにして良い約束だ。しかし法には触れるな。キチンと税金等は支払えよ」


私は物心つく前には皇太子の婚約者となっていた。私は父に言った。皇太子妃にはなりたくないと。しかし父は頷いてはくれなかった。父は真剣な顔でまだ五才の私に言った。この婚約は王家からの命令だ。断れば一族郎党公開処刑。領民は国の直轄地となり、キツい税に喘ぐ様になる。お前はそれでも良いのか?と……そう言われたらもう何も言えなかった。俯く私に父は言った。お前が皇太子妃となり国を変えれば良い。それが無理でも結婚は十八才以降だ。それまでは自由にするが良い。我が儘三昧豪遊しても良いぞ。もしかしたら、皇太子から婚約破棄をしてくれるかもしれん。それとも隠れて財を成すか?隠れた才能を伸ばすか?私はお前の邪魔はしない。しかし十八才になったら観念しろ。嫌ならそれまでに己で道を開けと……


お父様有難う。私は十才で決心をした。死ぬ気で運命に抗おうと。お城でのキツい王妃教育。学園での勉強も平行していたので、そちらは詰め込めるだけ詰め込んだ。さっさと終了させ己の時間を作りたかった。約ニ年で学園の卒業資格を得て、プラス数か月で王妃教育をも終了させた。その後は宰相で有る父に付き、内務関係に外交関係を学んだ。さらには近隣諸国を回り情報を集めた。

そして今私の一番の関心事は魔法なの。私にはかなりの魔力が有るらしい。魔法大国の隣国へ行きたい。しかし流石に留学するには年を取りすぎてしまった。私には時間が足りない……


「解っているなら良い。しかしそう考えすぎるな。無理なら親を頼れ。国外逃亡以外なら手伝おう。ブライアンは反省をした様だし、今回は許そう。但しマーガレットブランドの新商品を己の小遣いで購入し、隣国の婚約者の姫君に己で届けろ。貴様の為に料理を習ってるそうだ。少しは頭を冷やせ! 」


ご愁傷さま。マーガレットブランドの新商品はお高いわよ。今回はプレミアムレシピ集だもの。今までの総纏めの豪華装丁本が三冊。マーガレットブランドオリジナルのレシピ本に専用付録付き。エプロン、ミトンに、三角巾。キッチングッズにペア食器セットが、オリジナルバッグに入ってくるのよ。


「既に予約注文殺到中よ。急がないと間に合わないかもしれないわよ」


「姉さん!弟の為にそれ位は都合してよ!ついでに少しはおまけして! 」


「さて? 考えとくわ」


「姉さんの悪魔ー! 」


愚弟よ。堂々と不貞を働きマリエンヌを貶めることに加担をした、愚かな弟の大切なものを潰さなかった私が!悪魔なはずがありません!この愚か者め!


*****


ふぅ。やはりマリエンヌの作ってくれたお菓子は美味しいわね。これが大豆を砕きドライフルーツやナッツとあわせて焼いた大豆バーね。それでこちらがきな粉。これは大豆をさらに細かくサラサラに砕いた物。ミルクに混ぜて飲んだり砂糖を混ぜて団子にかける。団子?あ、この丸いのが団子なのね。ご飯を粗く潰して丸めた物?あらモチモチして美味だわ。でこれが商品化予定の肉擬き。豆腐を凍らせ解凍し絞る。これをちぎり調味料に浸し、粉をまぶして唐揚げにする。細かくしてハンバーグなどに混ぜても良い。どれ、では先ずはこの肉擬きとやらを戴きまーす。


!?!?!?


「うーん。めちゃジューシー。もろ唐揚げじゃない。どう見てもお肉よお肉! 美味しすぎるわ! マリエンヌったら天才よ! もう! 」


「あー! 姉さんってば! 自分ばかり食べて! 僕も居るんだから呼んでよ! 」


「嫌よ。減るじゃない。自分でマリエンヌに頼みなさいな」


「このケチンボ! そんなに食べたらブタにはるからね! 」


「大丈夫でーす。これらは太りにくい食品なのでーす」


「沢山食べたらおんなじだよ! 」


「もう煩わね。ほらお茶淹れてあげるから食べなさいな」


何て私たちがまったり中に、マリエンヌとロジャースのお見合いは始まっていた。


*****


「ごめんなさい……」


「マリエンヌ嬢。私がお嫌いですか?どうしても駄目なのでしょうか?私は貴女しか欲しくはないのです。ずっと貴女だけをお慕いして来ました」


「ごめんなさい……」


「マリエンヌ穣……」


「ごめんなさい……だって私は逃げたんだもの。幸せに何てなれないわ」


「逃げた?それはどういう意味ですか? 」


「話したって誰も信じてくれないわよ……皇太子様が実はもの凄い変態で、ストーカーにヤンデレ拗らせてるとか! 誰が信じてくれるのよ! 」


「それは……」


「侯爵子息はサドなの! 女性を痛めつけるのが趣味なのよ! 私は小さい頃から生意気だからと、ずっと虐待される筈だったの。特に学園では酷かった。最期まではされなかったけど、それに近い事までされてた。キズものだと言いふらすと脅されてたの。それが嫌で引きこもったのよ。外に出なければ接触しないし、学園に行かなければ脅されないから。でも……」


「でも? 」


「私は上手く婚約破棄されたけど、お姉さまのルートは継続してしまった。本来なら皇太子様もローズマリーに陥落していたのよ。それでお姉さまとの婚約も破棄になる筈だった。なのに何故? もしかしたら私が虐待から逃げたから? でも逃げなければ殺されてた。私は死にたくない! バッドエンドの悪役令嬢に何てなりたくないの……」


「…………」


「お願い。お姉さまを助けて。私だけ助かるなんて出来ない。お願いよ……」


涙を見せまいと下を向き、己で震える肩を抱き締めるマリエンヌ。そのとき頭にポンと乗る掌。優しく頭を撫でられた。


「ストーカーにヤンデレの意味は良く解りませんが、皇太子様が実は変態だと言うのは信じますよ。侯爵子息のサド説もね。だから落ち着いて全てを話してみて下さい。貴女の悩みは私のご先祖様が晴らしてくれるかもしれません。何も心配しないで下さい」


「ロジャースさま…」


マリエンヌの涙は中々止まらず、寒さゆえお茶会は室内へと持ち越された。


*****


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