夜会が始まる。
風にざわめく一本の大樹。満開であったピンクの小花は少なくなり、緑の若葉がかなり混じり始めている。葉桜と呼ばれる季節に突入し、季節はこれから暑い夏に向かってゆく。
「公爵様は桜の木を育ててくれたのですね。これは私がクリスティーネにと持ち込んだ物です。かなりの挿し木を試したのですが、枝垂れ桜のこの桜しか根付きませんでした」
ユリウス様の寂しげな横顔。
「しかしまさかこんなにもしっかりと根づき、これほどの大樹に育つとは思いもしませんでした。これが満開の時は本当に見事でしょうね。この桜はかなり長寿だと言われています。まさか育ったこの桜を、再び此方の世界でみる事が出来るとは……」
寂しげな顔に微笑みを浮かべるユリウス様。この桜が少しでも心の安らぎになってくれたならば嬉しい……
「私たちは病弱だったクリスの薬を求め、遺跡にいた三人の手を借り元の世界へ戻りました。しかし此方へ戻るのが大変でした。私は彼方の世界で生まれ変わる度に、何度も自死を繰り返しました。数えきれぬ転生の後、漸く生きて狭間に佇んでいたのです。私は死んではいない!生きている! 生きて世界を越えた! それに気付いた時は本当に嬉しかった。そして永久の狭間を越え戻りました。しかし……」
何度も自殺を?永久の狭間って?三人は生き残りの研究者とこの世界の魔術師。後はコメコメ大商会の初代かしら?それに私たちはって?彼方へは二人で戻ったの?
死んでしまっては此方の世界に薬を持ち込めないから……だから何度も己の命を危険な目に……でもその度に家族がいたのではないの?
「しかし薬はクリスティーネの死に間に合わなかったのです。しかし生まれて死へと向かっていた、双子の子の命には間に合いました。私は双子に薬を与え生かしたのです。しかしやがて思いつきました。此方の時間軸もバラバラならば、クリスが死ぬ前に戻れるのではないかと……」
ユリウス様はそれ程までにクリスティーネを愛していたのね。でも私ならリュウに再度辛い思いをして貰いたくなかった。多分最初の時も、危険を犯してまで行って欲しくなかったと思う。止められない自分を責めたかもしれない。戻らないリュウを思い泣いたかもしれない。もしかしたらそこでユウが?
ユリウス様はその考えに、双子が十才になった頃に気付いたという。ユリウス様はお世話になっていた公爵にそれを伝え、双子が成人すると共に遺跡に戻り再度狭間を越えた。
異世界たる日本で再び薬を用意し、クリスティーネが妊娠する前に戻る為に。
*****
【ユリウス・龍治 side】
日本で再度薬を用意し前と同じく同じ場所で自死を繰り返す。しかし中々生身のまま、異世界へ戻る狭間に到着出来ない。段々と焦りが生まれる。もう戻れぬのか……
私は数えきれぬ程の転生に疲れを感じていた。転生の度に私を生み育ててくれる、束の間の両親にも申し訳なさが募った。その一瞬の隙をつかれたのだろう。己は魂になり狭間に漂っていた。慌てて薬を探すが当然のごとく持ってはいない。なぜならば私は死んで魂になっていたのだから。しかも狭間に入り込んてしまった魂は、己の理の世界には戻れない。狭間で消滅するか他の世界への道をみつけ入り込むしかない。クリスの世界へは行ける。既に道はつけてある。しかし薬がない。私は異世界で生まれ変り、再度日本へ行き薬を得るべきなのだろうか?しかしもう気力がもちそうもない……
もうダメだ。脱力感が全身を襲う。思考も何もが無意味に感じた。佑真。お前が私だけを狭間に落とさず、二人で薬を探しに来ていたならば……
クリスはもっと早くに良くなり、双子をうみ死ぬ事もなかっただろう。それ程に戻った日本は酷かった。辿り着いた日本は大地震からはかなり復興していた。しかし大地震による巨大建物崩壊と沢山の人々の消失は、世間に暗い影を落としていた。そんな中で薬を用意するのにどれだけの努力が必要だったか!混乱に乗じて私は色々と工作した。しかしここに佑真がいてくれたならば……二人で頑張れば成せる事も多かった。しかし佑真は約束を違え、私だけを狭間に押し込み逃げ去った。怖じ気ついたのか?私を嵌めたのかは解らない。
クリスは双子を生まねば死ななかった。クリスは佑真を好いていた。私への気持ちは兄への親愛の様な物。私はお前たちを祝福すると伝えた筈だ。何故焦る必要があったんだ!私が薬を持ち帰るまでなぜ待てなかった?
佑真……お前が憎い……
思考が黒く染まり何もかもが無意味に感じる。私の努力は無駄だったのか?クリスティーネにも行かないで欲しいと懇願された。只の己の自己満足だったのだろうか?心が闇にのまれてゆく……
『人を憎むな。貴殿の魂が汚れてしまう。我は悲しい。そんな貴殿をみていたくはない。貴殿は気付けなかった。時間軸がバラバラでも、クリスティーネの生きていた場所へは戻れなかったのだ。戻れるのは己が存在した時間軸より後のみ。そして一度でも己が存在したなば、その隙間の時間軸へは戻れない。最初の時にクリスティーネが生きている時間軸に戻れたのなら、未来は変えられたかもしれない』
誰かの声が聞こえてくる。
『可哀想だが二度とこの世界では生きたクリスティーネには会えない。彼女が死んだ後に、貴殿はすでにこの世界に一度存在してしまったからだ。何度も転生しても気付かなかったのか
?魂は一つのみ。己が異世界と日本で同時に存在する事は出来ない。だから一度己が存在していた時間軸へは転生しない。転移も同じだ』
脳内へ直接響く荘厳な声。貴方は?
『貴殿が何処にも所属していない今ならば、私も理を捻じ曲げ多少は介入できる。貴殿の魔力を底上げし、前回薬を得て戻った時間軸へ戻そう。もう一度運命を選び直すがよい。その位なら我でも戻せる筈だ。底上げした魔力を使えば時間はかかるが遺跡を封印する事も出来る。または今回持ち込めなかった薬の代わりにもなる。万能薬の魔力としても使えるからな。また始まりの我が元へ戻り、日本の社でのんびり暮らす事も出来るぞ。魔力の使い方は貴殿に任せよう。だがクリスティーネの生きていた時間軸へは戻せない。力及ばぬ我を赦せ』
貴方は……まさか竜神様?
『そうだ。信心深き我が社の守り主よ。己の心を信じよ。そして悔いなく生きよ。人を憎むな。弱気を正せ』
有難うございます。竜神様……
気付くと私は青年姿で遺跡に佇んでいた。身なりを確認すると龍治の姿ではない。此方の世界の色彩に儚げな容姿。日本では何度生まれ変わっても龍治の姿のままだった。この世界で生まれ変わった形なのだろう。この世界ではこの姿が私なのだろうか?しかも成長していた。話が早くてすむ。赤ん坊からでなくて良かった。
誰かが此方へ走ってくる。懐かしい顔ぶれだった。
「龍治君ではないのか……」
残念そうに呟き落胆する顔。私には本当に懐かしい顔だった。遺跡に住み込み研究をしていた研究者と魔術師。しかし彼等からしたら、龍治は数ヵ月前に日本へ戻ったばかりだった。薬を持ち帰り帰途した時には本当に喜んでくれたが、今の彼らにその記憶はない。私は龍治であることを隠し、今の容姿を考慮して転移したハーフの留学生だと伝えた。
そこでコメコメ大商会初代と再び出会う。初代とは最初に界を越える際に会っている。しかし私は初代にも正体は隠したまま接した。初代は公爵様からの誘いで、この地に根付く決心をしていた。その話の流れで、クリスティーネの話を聞いた。やはりクリスは、男女の双子を生んで死亡していた。そして佑真はクリスの後を追ったと……
やはり未来は変わってはいなかった。と言う事はつまり……
双子は未熟児で特に女児の方は育たぬだろうと……その為に三人は、古の万能薬を再現しようと研究をしていた。私はそこで万能薬の話を聞く。白い花までは成功している。後は魔力が足りぬだけだと。毎日魔術師が魔力を込めているがまだまだ魔力不足だという。
魔力の使い方で運命を選び直す……私は竜神様の言葉の意味を理解した。私が戻らねば双子は助からなかったのだろう。しかし私はここに存在している。見捨てる事等出来ない。私はその花に己の魔力を注いだ。白い花が虹色になる。やがて虹色のプリズムローズが花開いた。私の魔力量に驚愕する二人。
私は自身が神社の息子であった事。たまたま界を越える際、そこに奉る竜神様より魔力解放のお慈悲を戴いたと説明した。何故ならば日本から来た異世界人には、魔力を放出出来ぬ事を知られていたからだった。
ならば貴方は勇者様だろうと、日本人の研究者はいう。神に膨大な力を与えられ、異世界へ転移するという勇者に聖女。各々が神より何らかの使命を与えられると楽しげに話す。私がそんな使命は与えられなかったと答えれば、ならば神に間違えて殺されたのか?等と議論している。研究好きの彼等の話は尽きなかった。彼らは遺跡の遺物を集め整理していた。その中には沢山の読み物が有った。若者には異世界転移、転生の軽い読み物が大人気だったという。あぁ……
確か佑真も沢山読んでいたな。高校の学生鞄が、ライトノベルとやらでパンパンに……因みに私は佑真の高校受験の為の家庭教師だった。佑真は私の従兄弟でもあり、私の進んだ大学へ進学を希望していた。その為合格後も試験前等には面倒を見ていた。
あの災害の日はドームで大学のイベントが有った。後学の為にと佑真も見学に来ていたんだ。ドーム部分では大学院生による研究の発表や実演が華やかに行われていた。展示ブースでは各種の研究成果の発表や製作物の販売。業界や研究所等からも沢山の出展や出店が出ていた。休日も重なり併設の遊園地に集う若者に家族連れなど、沢山の人々が流れ大混雑していた。そんな中に起きた大惨事。
更には二次災害とばかりの異世界への集団転移。それも巨大建物ごとだ。慌てふためく生き残りたち。やがて魔物とやらに無惨に食い殺されてゆく。生き残った者達は、建物の奥深くに隠れ息を潜めていた。やがて救い出されるまで……
救助された生き残りは公爵家に暫しお世話になり、徐々に其々の道を模索し散っていった。遺跡に残っていた研究者は、この時捜索隊にみつけて貰えなかった様だ。あの日バイオの研究発表でドームに出店していたと言った研究者。たまたま食品やサプリが沢山あった。それらを利用しかなり奥に隠れ住んでいて魔術師と出会う。
私には使命等はなかったですよ。そう伝えた。だから私の魔力がお役に立てればと、彼等が研究するものへの魔力の供給を引き受けた。
虹色のプリズムローズは公爵家へ献上され、奇跡的に双子は命を繋いだ。私は公爵に感謝され、公爵家で面倒を見たい。双子の家庭教師をして欲しいと懇願された。しかし私にはこの世界での教養はない。ならば一緒に学べばよい。そう言う公爵に押しきられた形で、私は客人として公爵家に住み込んだ。私は公爵家に住み込み双子を見守りながら、遺跡へも通い研究を手伝っていた。
私が魔力を供給するものには、遺跡を護るゴーレム達も含まれていた。その武骨なゴーレムたちは、やがて幼児の姿となる。魔力を持つものは総じて寿命が長い。その為か私は中々容姿が変化しなかった。だから気づけなかった。
周囲の人々が年を重ねていた事に……
赤子も少女になり成長していた事に……
ある日公爵様に個人的に私室へ呼ばれた。大切な話が有るという。
「君は孫娘の事をどう思っているかね? 」
突然の質問に驚く。
「孫娘は君が好きだと言う。結婚したい好きだそうだ。出来るのならば私はその気持ちを叶えてやりたい。しかし君は娘を……龍治君。始まりはクリスティーネの代わりでも構わない。孫娘を結婚の対象に見ることは出来ないかね? 」
!?!?
私を好き?それだけでも驚いたが、公爵様が私を龍治と呼んだ事に驚愕した。私は偽名を使用していた。まさか気づいていた?しかし何故?
「君は龍治君だよ。姿が変われど私には解る。孫娘も確信はないが気付いているのだろうな。君が娘の為に異世界に戻った時は半狂乱になったよ。成人したから告白するつもりだった。母が生きる時代に私はいるの? リュウにとって私はやはり母より軽いのだと涙してね」
確かにそうだ。私はクリスティーネが生きている事だけを考えていた。もしクリスティーネが妊娠前に健康になったなら?クリスが命をかけて生んだ、病弱だった双子は生まれなかったかもしれない。私は何て残酷な事を……
「君が気に病む事ではないよ。私もだが、今の孫娘にその記憶はないからね。それに止めずに送り出した私の責任もあるだろう。たぶん孫たちが生まれなくなる可能性など、思いつきもしなかったのだろうな。クリスティーネが戻ってくるかもしれない。きっとそれしか頭になかったんだよ。君に無体を強いる上、孫たちが存在しない可能性に気付きもしなかった……」
「公爵様は何故私が龍治だと? それになぜ知らぬはずのことを……」
「私は日記を書いていてね。何故かその日記がある日突如未来日記になったんだよ。クリスが死亡し孫たちは産まれたばかり。ひ弱に産まれ生きるかもわからないのに、なせが成人した日までの日記が綴られてるんだ。しかも龍治君が異世界から薬を持ち帰ってくれた。クリスには間に合わなかったが孫たちを癒してくれた。更には成人するまで孫たちの父親代わりをしてくれていた。そして再度異世界へ……」
公爵様の日記……
「娘が死に孫たちは死にゆく運命。私は未来予知などを信じてはいなかったが、日記を綴る字は確かに私の直筆何だよ。その不思議な未来日記は私の一縷の希望だったんだ。異世界の薬が万能薬に変わったけれど、君は戻って来てくれた。本当に苦労を掛けてしまったね。君は娘の為に……」
「しかし今の私は龍治の姿では有りませんよ」
「そうだね。だから今まで確信がもてなかったんだよ。でも君を見る度に龍治君を思い出すんだ。雰囲気が龍治君そのものなんだよ。見た目じゃないんだ。私は覚悟を決めて孫娘に日記を見せた。そして孫娘の言葉で確信したんだ。孫娘は君はリュウだと言い張っているよ。私を育ててくれた龍治パパだとね。そう。消えた過去だけど、龍治君は孫たちの命の恩人で父親代わりだったんだよね? 」
公爵様……
「やはり君は龍治君だよ。此方の世界でも転生したのかい?
異世界での転生では容姿はほぼ変わらかったと、君から聞いたとその未来日記には書かれていた。苦労させて済まなかった。許して欲しい」
公爵様は私の手を取り頭を下げた。
公爵様は真剣に話してくれた。たしかに孫娘は可愛い。しかし私の気持ちを考えたら無理強いは出来ないという。私は決心した。確かに彼女は可愛い。しかし私の愛は親愛の愛。父親としての愛なんだ。ましてやクリスティーネの代わりに何て出来ない……
若い彼女の未来に年老いた私は必要ない。
私は遺跡に戻ろう。遺跡に住むお二人と研究を続けよう。何時か日本のあの場所に繋がる穴を塞ぎ道を閉ざしたい。時折死した彼方からの魂が未だに此方へ迷いこんできている。多分私が狭間に道筋を作ってしまったからなのだろう。そして遺跡を護るゴーレムたち。研究者達を癒している可愛い子供たち。魔力は幾ら有っても足りないだろう。竜神様より戴いた慈悲。私の魔力は遺跡の為に使おう。公爵様は私の意思を尊重して下さった。私は遺跡へ戻った。
やがて公爵家の双子がそれぞれ幸せになったと聞いた。私は再度プリズムローズを作りティアラにした。大商会の初代からの献上品として、もしもの時の為にと公爵家へ贈って貰ったのだ。
私の死期は近い。多分狭間越えで魂に負荷がかかったのだろう。または魔力を毎日空になるまで使いきっていたからだろうか?身体が痛むと言うよりも、魂の内面から崩れ落ちる様な痛みを日々感じていた。
私は遺跡で死んだ。遺体は湖に沈めてくれと頼んでいた。魂は……気づくと私の魂は永遠と狭間を漂っていた……もう何も考える必要はない。私のすべき事は終わった。心残りは遺跡を封印出来なかった事。しかし皆に後を任せられた。もう良い。疲れた。このまま狭間で眠ろう……私は白い空間に全てを委ねた。
「こちらへ来て」
「まさか迷ってるの? 道はこちらよ。私は何時までも待っているから……」
そう。確かに聞こえたんだ。誰かが眠り続ける私を呼ぶ声が。気づくと私は生まれ変わっていた。荒廃しきった下衆達が蔓延る自称聖国へ。
転生は通常同じ国での場合が殆どだ。私の魂は此方に呼ばれたのか?遺跡は中間点だ。まさか魂が迷ったのだろうか?
まあ良い。クリスティーネ。君は生まれ変わっているのだろうか?君が私を呼んでくれたのならば嬉しい。もしまた今生で再び出会えたなら……貴女に一目会ってから逝きたい……
*****
「ブライアン殿! 貴殿と我国の姫との婚約は破棄させて貰う! 理由は簡単だ! ローズマリーとの不義密通だ! しかも無理矢理だそうだな! 証拠はあがっとるぞ。そんな輩に大事な姫は渡せん! 」
「ブライアン様……」
「さあ姫よ。これで貴女は私の花嫁だ。こちらへ来い! 」
「嫌……私は……」
「全く……嫌がる女性を無理矢理なんて野暮ね。ロジャース! 姫をあちらへ! リーダーはボサッとしてないで、早くそのゲスを押さえて! ブライアンはボケッとするな! 貴方も姫を守りなさいよ! 」
「「ああ。任せとけ」」
「だってロジャースがジャマ……「ウダウダ言うな! 男なら何も言われなくても守れ! この軟弱者が! 」……姉さんの鬼ー!! 」
ブライアンが姫様の元に走り出す。
「…………」
「お父さま? 」
姫さまが何かを呟いた。
「お父さま助けて!! 」
え?姫さまのお父様は下衆王よね?お父さまって聞き間違いかしら? 制止するロジャースを押し退け駆け出す姫。駆けつけるブライアンがお父さまの筈はない。しかし実父の王に助けを求める筈もない。案の定姫さまは王たちとは反対の方へ駆けてゆく。
「愛していますー。助けに来てくれたんですね。もう絶対に離さないんだから! 嬉しいですー」
姫さまの進行方向にはブライアン。やはり聞き間違いだったのね。しかしいきなりキャラが変わったわね?
お!ブライアンが両手を広げ迎える。頬染めちゃって、あやつも結構可愛い所が有るじゃない。猛反省しなさいよ。二度とローズマリーみたいのに引っ掛からない様にするのよ。でもこれで一安心かしら?
って……あれれ?
姫さまはブライアンの横をすり抜け更に先へと駆けてゆく。宙を切るブライアンの両腕が哀れを誘う。
(ブライアン? どういう事? )
(姉さん? 僕も解らないよ? )
静まり返る会場内。私たちはアイコンタクトで探りあう。しかしここは初々しい婚約者同士の感動の場面なのでは?
「お父さま大好きー! 」
哀れブライアン……
って姫様は何処まで走るのー?
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