↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相手が宜しくないヤツだから、とりあえず婚約破棄したい(切実)  作者: 桜鶯
第2章・婚約破棄は新たなる珍事を招く。
12/38

毎日健康生活満喫中。

清々しい朝だわ。小鳥の囀ずりに綺麗な空気。しかし宿舎の後方には鬱蒼と木々のひしめく森が見える。この我が国と魔法大国とを隔てている森は、鬱蒼と繁る木々に遮られ常に薄暗く、多種多様な魔物が闊歩している。魔の森と呼ばれるこの森の中心を緩衝地帯とし、その周囲を互いの領地へ魔物が入らぬ様にと、二国の討伐隊同士が協力しあい魔物を間引いている。


今日も早朝から鍛練をする隊員たちの姿が見られる。


たん。たん。たーん。

たん。たった。たぁーん。

とん。とんっ。とぉーん。

ほい。ほい!くるりんぱっと。


「わーいジョギングと体操あわせて十セット終了ー。さあ朝ごはんだー。朝ごはんー」


くるり。


「先に行って良い? 皆は一セット遅れているよね? ズルはダメ。女に負ける筈がないんだよね? しかもお嬢ちゃん呼びだったし。でもか弱いお嬢様扱いは嬉しいわ。今まで誰も、か弱い何て言ってくれなかったからね」


「「「…………」」」


「早くしないとお代りがなくなるよ。ほら早く! 早く! ソレホレ頑張れー! 」


「それはお前が! 」


「どの口がそれを言うんだ! 」


「頼む。飯が……」


「「「あー! 行っちゃったよ! 急げ! 」」」


****


あー。やっぱり運動した後のご飯は美味しいわね。健康的で良いわー。だけど朝にパン食はダメね。スープにサラダは付いているけど、やはり朝にはご飯よ。今度マリエンヌにお握りを頼もう。パンでは中々お腹がいっぱいにならないのよ。


「おばちゃん! パンにタマゴ挟んだのと、ハム挟んだの追加ね! 」


「あいよ! エリーちゃんは元気だね! ニつ追加で足りるのかい? 」


「うーん。チーズのと野菜のも頼んじゃう。チームの割り当てまだ有るのよね? 」


おばちゃんが親指を立て、OKサインを送ってくれる。パクパクぱくり。うーん美味しい。早寝早起き。適度な運動。ストレスを発散してくれるチームメイト。ヒーヒー言いながら遅れて来た仲間を見る。私がパンをパクつく顔を見て、絶望的な顔をする三人。


「パ……パンが……」


「女の癖に……」


「バカ! それを言うな! 余計に食われる! 」


ニヤリ。どうやらまだ身に染みていない様だね君たち?


「チーズと野菜の出来たよ! エリーちゃんは、本当に美味しそうに全て食べてくれるから嬉しいね! 野菜にトマトとベーコンも追加して挟んどいたよ」


「わーい。有難う。でも最後に甘いのも食べたいな。苺ジャムにマーガリン塗ったの追加ね。これでお腹いっぱいになるかも。訓練でバンバンぶっ放してくるから! また夕食も宜しくね? 」


「また食われた……」


「「だから言ったのに! 」」


エリーちゃんは頼りになるねと、おばちゃんに頭をなでられる。正直今まで、人に頭を撫でられるなんて事はなかった。だから最初は照れくさかったの。決して父や母に愛情を貰わなかった訳ではない。でも高位貴族は育児をしないし、育児は乳母で教育は家庭教師が行う。私も元姫君だった母に、庶民的な母らしさを求めた事はない。だってそれは貴族に生まれ付いた者の義務だから。私はそれを当然だと思っていたし、だから私も一切料理も家事もしなかった。だって必要ないもの。王妃になる予定の私には、政治や内政的な勉学の方が必要だった。例え私が皇太子様に料理をしても、間には必ず毒味役が何人か入る。そんな料理が美味しい訳がないじゃない。でも今は違う。私は庶民のエリー。おばちゃんのナデナデが嬉しいし、仲間をからかいつつくのが楽しい。だから今日も一日頑張れるよ。


「アイツ今朝は結局五個追加したのか? 」


「だな。残りは五個だ。誰か一人は、おかわり一個で我慢だ」


「しかし良く食うな。いったいあの体の何処に……」


「上下に決まってるだろ! あれで最新防御型の、特別製コルセット型防具を装着しているそうだ。しかも自作だぞ。でも全く隠しきれていないよな」


「高出力な魔法を連発すると腹が空く。聞いてはいたが我国の討伐隊には魔力持ちが少ない。だから魔力持ちがまさかあれ程食べるとは……」


「らしいな。隣国の魔術師団は、アホみたいに食料消費が激しいそうだ。腹が減ったら、食える魔物を捕まえて丸焼きにするそうだぞ。マジックポーションでも補えるが、高価だし手持ちに無い場合も有るからな。しかし本当に凄まじいよな」


ボソボソとサンドイッチを食べながら話をする三人。では今日のお代り減は誰になるかと、じゃん拳を始めた。その結果が出た所で私は話しかける。


「何時も沢山食べちゃってごめんね? そうなのよ。魔法使うとお腹がすくの。この年まで魔法なんて使用した事が無かったから、こんなに燃費が悪いとは思わなかったの。でもね! 昨日漸く自分用の無限収納バックが出来たの! ほぼ無限だし時間停止機能付き! 討伐した魔物も仕舞えるわよ。お腹空くなら魔物の丸焼きをしよう! 料理は出来ないけど、野営料理は実戦で習って来たわ。妹に沢山スープ種と調味ソルトをたくさん貰って来たから、今日の実戦でご馳走するわよ! 妹の料理は抜群何だから! 」


「このエリーの妹かよ……とてつもなく心配だ……しかも然り気なく凄いこと言ったな。マジックバックを自作だと? しかも時間停止機能付きの無限型だと? 」


ちょっと!もろ声に出てますけど?少しは遠慮を知りなさいよ!


「なによその言いぐさは! ふーん。なら昼食もパンと干し肉で我慢だね。おばちゃんに頼んどきなよ。私だけ自分で作るよ。お肉はシルバーウルフかゴールデンバッファが美味しそうだねー」


「ジュルリ。それらは丸焼きだけでも旨い肉だ。だが高ランク。討伐が大変だ。しかし確かにコイツなら……」


また声に出てるし……まったく調子が良いわよね!でもたしかに私が食べまくるからね。


「「「エリーさん。俺たちも頑張ります!!! 」」」


「宜しい。今日は何処のチームより早く昼食にするわよ! 頑張るぞー! 」


「「「おおー!!! 」」」


*****


討伐隊の仕事は単純よ。要は森の魔物を間引く事。魔の森自体は恵みの森でも有り、魔物を討伐出切る力の有る冒険者ならば、誰でも自由に出入りが出きる。しかし魔物は日々増えてゆく。やがて険者だけの討伐量では増えすぎてしまう。増え過ぎても森の中だけで済めば問題にはならないが、しかしそこは弱肉強食の魔の森。徐々に食物連鎖のバランスが崩れてしまう。弱い餌になる魔物が強い魔物に食い尽くされ、強い魔物は餌を求め森を出てしまう。逆も然り。弱い魔物が増え過ぎ、食料が減り森から逃げ出す。そのバランスを取るのが討伐隊の役目。朝一にその日の討伐割り当てが掲示され、グループ毎に狩りに出かける。


本日のメイン討伐の魔物は、シルバーバッファかぁ。増えすぎているから、一グループで十匹以上ね。魔石が取れない場合はカウントせず。中々シビアね。ゴールデンバッファならシルバー二匹にカウント。ふむふむ。


「では者共いざ討伐へ! 」


「おい! リーダーは俺だ! 号令位はかけさせろ! 」


「はいほーい。リーダーどうぞー」


「では気を引き締めて行くぞ! 他のチームに負けるな!」


「「おう! 」」


「はーい! 」


四人で隊列を組み前進する。前方にニ人。内のリーダーは多少の魔法が使える。


「サーチ」


リーダーが呪文を唱えた。周辺の魔物の気配を探る為ね。


「あ! リーダーにこれあげる。中にポーションとお菓子が入ってるの。お腹空いたら食べて。袋は見かけよりは入るから捨てないで。時間停止機能は無いから長期保存は無理よ」


中身は魔力ポーションとおからクッキー。そして大豆バー。妹マリエンヌの作った物。おからは水分と共に食すと、体内で膨らみ満腹感を与える。大豆バーも食べごたえが有る。


「!? もしかしてマジックバックか? 高価な物だろ? 」


「私が自分のを作るのに、練習で作った物だから大丈夫。魔力使うとお腹減るでしょ? 中身はポーションとお菓子よ。お菓子は大商会で商品化前の試作品なの。賞味期間も長いし、腹持ちも良い筈だから試してみて。ポーションは新作の、抹茶ミルク味と抹茶イチゴ味と抹茶小豆味の三点セット。これは魔法大国のお品。気に入ったら是非宣伝してね」


「…………」


「お前な……さらっと凄い品を……まあありがたくいただくわ」


「「リーダーが羨まし過ぎる!なぜ俺たちには魔力がないんだ! 」」


「そんなに欲しいの? 袋だけなら作ってあげるわよ。少し時間はかかるわよ」


「「エリー様!俺たち何処までも着いて行きます! 」」


たしかにリーダーだけでは駄目よね?


「うぇ?背筋がゾワゾワする。何? 今物凄い殺気を感じたわよ? 」


「あぁ。確かに何かの気配がしたな。勘違いか? 否。少し先に……」


「ここから右方向にバッファの群れがいるな。十匹位か? シルバーかゴールデンかは解らない。行くか? 」


もちろん行きましょう。しかし先ほどの気配は魔物ではないわよね?まあ悪意は感じなかったから、気にする必要はなさそうだけど。


「シルバーだったら、もし沢山いたら大変よね? 更にゴールデンなら、接近線は不味いわ」


「そうだな。なら間引きを頼めるか? 討ち漏らしには我々が行く」


「リーダー。了解です! 」


バッファの群れる方向に目を凝らす。確かにいる。十匹どころではなく、全部で二十匹はいるわね。退路に向かいバリアをはる。木々の隙間を抜けて行くイメージで、左右の五本の指先から小さな風の竜巻を次々と生み出す。


「ミニチュアカッターゆけ! 」


木々の隙間を小さな風のカッターが、縦横無尽に走り抜ける。バッファ類は首を上げ威嚇してくるので、その高さにあわせて飛ばせば良い。クルクルと回る風のカッターが、バッファの首を次々とはねてゆく。はねきれなかったバッファが此方に向かい突進してくるが、森の中の繁る木々に邪魔され中々進めない。大きな体がゆくてを阻む。


「背後に逃走用の結界を張っています。ゴールデンも混じっています。大変なら結界に追い詰めて下さい! 電撃を流しています! 」


私も戦闘に参加する。剣でバッファを結界に追い詰め感電死させる。敵の片側を固定すると剣の扱いも楽になる。流石に女性と言うハンデは大きい。まあ魔法で身体能力強化すれば簡単だけど、やはり後で反動が来る。便利だからと魔法ばかりに頼っては駄目。だから私は毎日トレーニングを欠かさない。お陰様で男子に混ざっても問題なくなった。


私は倒したバッファの魔石を抉りながら、内臓を消滅させ血抜きをしてゆく。ズルッこだけど魔法でしてしまう。魔物の体内の異物を外に転移させるイメージよ。内臓も食用には出きるそうだけどそこまでは必要ない。血液も竜種でも無い限り、素材にもならないみたい。最後にクリーンで綺麗にし、次々にマジックバックへ突っ込む。


どうやら戦闘が終了した様ね。皆が処理してくれた魔物にクリーンをかけ、私がマジックバックにしまう。未処理のバッファをひと纏めにし、周囲に結界を張り更に処理をすすめ済ます。


「みんな有難う。血抜きを手伝ってくれるとは思わなかったよ。食べる分だけと思ったけど、お陰様で大量だね」


「凄いなそのバックは……」


「毎日私の残りの魔力を、三ヶ月以上も注いだからね。リーダーも毎日寝る前に、残りの魔力を注ぐと良いよ。売り物じゃかいから、そのマジックバックは用量を固定していない。まだまだ広がるよ」


しかしバッファが何故こんなに群れているの?たしかにバッファは群れる魔物だけど、沢山で群れるのは草原などの見晴らしの良い場所に生息する場合のみ。森の中では動作が鈍る。特に図体のデカいバッファは、森の中では精々家族単位での群れになる筈。


「場所を移動しよう。森でこれ程バッファが群れてるのは変だ。しかもゴールデンが五体はいたよな? 」


「やはりそう思います? ゴールデンが七体にシルバーが十八体。合計二十五体です。ゴールデンだけでも今日のノルマは達成です。一度報告を兼ねて戻りませんか? 」


リーダーと共に暫し考え込む。


「「昼めしは? 」」


「戻ろう。俺が報告に行くから、ニ人はエリーと食事の用意をしといてくれ。外の調理場の許可も得て置く」


それならば戻りましょう。私は三人をチョイチョイ手招きする。三人の手を繋がせ、リーダーの肩に手を乗せ転移。


「では料理に行って参ります。これが今日の魔石です。リーダー。報告をお願い致します! 」


「おい! いきなり転移をするな! 驚くわ! しかし何だか素直で気味が悪いな。食事は大丈夫だろうな? 」


「失礼な! 調味料が凄いのよ! これも大商会の商品よ。でも私のは既製品じゃ無いんだから! 特別製なの! 食べれば解るわよ! はよ行け!! 」


ニ人の仲間を引き連れ訓練場横の調理場に向かう。ここは野外調理の際の教えや、料理を教える為の調理場なの。遭難した際の薪の集め方から火のおこし方。簡単な調理の仕方等も習う。私も習いました。懐かしい思い出です。ふっ。


「何黄昏てんだよ。早く肉だせ。ゴールデンバッファを丸焼きにするんだろ?  それ位なら俺たちにでも出来る。運ぶから出せ」


「ならお任せするわね。三体お願い。皮を剥いで綺麗にしたら、このソルトを全体に揉み込んでから焼いて。ハーブとクレイジーとホットよ。手にしみると痛いから、この手袋して揉み込むと良いわよ。宜しくね」


「OK。しかしこの調味ソルトか? これだけで凄く腹が空く匂いだな。楽しみだ! よし焼くぞ! 」


「おう! 」


さてでは私はスープを作りましょう。お肉は濃い塩味だから、スープは優しいクリーム味に決定ね。スープの具材はこれに決まりだ!ブロッコリーと乾燥野菜たち。全てカットされて袋にタンマリ入っています。スープに色々な味が有る様に、具材にも色んな種類が有るのよ。トマト味には、チンゲン菜や玉葱とかね。単品も色々有る。コーンとエビも入れちゃおう。角切りベーコンも美味しそうだけど、お肉が有るから次回にしよう。後は乾米これよ!


大きなお鍋に、乾米と水を入れ火にかける。グツグツ煮たったら乾燥野菜を投入し、乾燥野菜が戻ったらコーンとエビとスープの素を加える。するとスープが白く濁ってゆく。このスープの素にも玉葱やベーコン等が入っているの。今回使用しているのは大量調理用の大きい素よ。他にもカップで飲める一人前用とかも有るの。マリエンヌが私の為にと色々考えてくれたの。ロジャースはそれをまた懲りずに、全て商会で商品化している。まあニ人がラブラブだから、私は構いませんよ。


とろみがつくまで、クルクルくるーり。よーくかき混ぜたら、お米入りクリームスープの出来上り!お米入りで腹もちアップ。お皿によそいテーブルにセット。小皿にマヨソースと照焼きソース。トマトソースとマスタードソースを出す。パンは配給の奴ね。お水もセットOK。


「おーい出来たよ。お肉はどう? 」


「焼けたがこんなにどうするんだ? 」


さあさあ己の分はお皿に切り取り、盛り付けちゃいましょう。三種共に山盛りたべちゃうよ!私に釣られて、ニ人も盛り付け始めた。リーダーも戻って来たので同じく盛り付ける。テーブルにセットし戴きまーす。うーん。やはりゴールデンバッファのお肉はジューシーよね。めちゃウマだわ。無言で食べる三人。彼らはやがてお肉のなくなったお皿を片手に持ち、再度お肉を盛りにゆく。私はスープのなくなったお皿にお代わりを入れてあげる。お肉わね?パンに挟んでこれらのソースを足しても美味しいのよ?テリマヨソースでパクリ。皆も真似してパクリ。


「「「このソース旨いな! 」」」


でしょ。でしょー。私も大のお気にいり。

ん?そろそろかな?何だかワイワイと話し声が聞こえて来たよ。結界張らなかったからね。さあさあどうぞ皆さんいらっしゃいませ。


*****


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。