【0話】再び焦がれた幻想
「…ぇ?」
──違和感、そう違和感だ。
自分は、死んだはず。跡形もなくこの世から消え去ったはず──
まさか──いや、妄想はやめよう。幻想に焦がれるのはもうやめた、そうだろうと自分に言い聞かせる。
結局怖くて逃げて逃げて寝落ちでもしたか、死に切れなくて結局生きてしまったなどだろう。
──────。
────。
──それなら、おかしい。
自分の頭を思いっきり殴った、痛みを感じる、大した痛みではないが。自分の耳を思いっきり引っ張った、痛みを感じる、大した痛みではないが。
地獄?天国?それなら地獄行きだろうが──まさか、だ。
「なんで自傷してるのかしらね…夢だとでも思ってる?」
──そう、声が聞こえた。
声は知らない、想像したことは何度もあるが声は知らない。
姿を見れば、わかる。
だから、ゆっくりと目を開けた──
「やぐ、も…ゆかり…」
「…なんで、私の名前を知ってるのよ」
八雲 紫、そう八雲 紫だ。
興奮が高まる。今更この目だらけの空間──スキマのことは気にならない
幻想入り──これは幻想入りだ。
嬉しくて、嬉しくてたまらない。
「まずは名乗るべきね…幻想郷の『賢者』であり、『神隠しの主犯』、八雲 紫。知ってるみたいだけどね?」
紫がイタズラっぽく舌を出しながら名乗る。不覚にも可愛いと思ってしまったが相手の歳を知ってしまえば…これを考えるのはやめておこう。
──『私』はしばらく考えた末に名乗りを返す。
「『私』、は──いや、meの名前は、れい」
──それが、『れい』という主人公に成った主人公が、再び幻想へと焦がれ始めた日だった。




