↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あおいだいち  作者: 佐々木 栞
第3章 高校生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/17

第9話 聞いてないんだけど【高校生編1】

晴天の青空。

入学式の日にぴったりな陽気。

今年の桜の開花は例年より早くてもう散ってしまっていた。

俺は中学生から高校生になり北河高校に入学した。

北河高校は地元にある普通の高校だ。

文化祭に特に力を入れていることで有名らしい。

中学でもあおいとのゲーム三昧な日々は続いた。

ただクラスが同じになることはなかった。

それでもあおいの噂は風に乗って聞こえてきた。

小学校のとき以上にあおいは目立つようになった。

学年トップ3の成績を維持。

その美貌は年々増し男子のみならず女子までもファンを増やしていった。

驚いたのは空手部に入って3年間で黒帯まで達してしまったことだ。

あおいは大したことなかったとしか言わなかったが周りはすごいと言っていた。

生徒会長にも推薦されたがなんとか辞退したって言ってた。

まああおいは元来目立つのが苦手。

でも何をやるにも目立ってしまう。

だから逆に目立つことをやるようにしたとぼやいていた。

学級委員や何かの実行委員は積極的にやるようにしたとか。

頼まれることも多くて断りきれないこともあるらしい。

2人でゲームしてるときは傍若無人天上天下唯我独尊理不尽大魔神でしかないので俺の頭の中は混乱したものだ。

あおいは自身の進学先を俺には頑なに教えてくれなかった。

なんとなく進学校じゃないかと勝手に予想していた。

「もしも別々の学校に行っても一緒にゲームするのには変わりないんだからね」

とあおいはずっと言っていた。

俺はそれを聞くたびに少し寂しくなった。

小学生のときに仲が良かった友達が中学が別々になり自然と疎遠になったのを思い出したから。

あおいとも疎遠になるんだろうなとなんとなく思っていた。

あおいの家は医者の家で元々縁なんてなかったようなものと思うようになっていった。

まあ人の縁なんてどうなるかわからない。

どうあがいても新生活は迎えてしまう。

それなら心機一転だ。

俺は昇降口に張り出されていたクラスを確認した。

1ー1組か。

教室に向かい自分の出席番号が貼られた席に座った。

すると1人の男子学生から声をかけられた。

「あれ?大地?久しぶり!俺わかる!?」

「...山口くん?」

「なんだよ。よそよそしいなぁ昔みたいに春人でいいよ。大地も同じ高校だったなんてなぁ」

声をかけてきたのは山口春人だった。

小学1年生のときに同じクラスになって仲良くなり度々遊んでいた。

中学は学区の違いでお互い別々の中学に通っていた。

春人も疎遠になった友人の1人。

「大地は変わらないなぁ。見た瞬間すぐにわかったよ」

「春人こそ変わってないよ」

お互い笑いあって再会を喜んでいたところで担任っぽい先生が入ってきた。

先生から簡単な挨拶があり入学式の説明が行われた。

その後、体育館前に移動した。

新入生入場で順番に入っていく。

体育館に入ると前側に新入生の席が設けられ後ろ側は保護者の方々が座っていた。

中学のときと同じでうちの両親は来ていない。

父さんは仕事が忙しいから来れないとしても、母さんが来ないのには理由があるのか聞いてみたことがある。

「男の子だし大丈夫でしょ」と言っていた。

普段は優しいが変なところでドライな母である。

新しい学校からか入場だけなのに緊張する。

変に緊張していると保護者で一瞬見知った顔を見た気がした。

春人も入学してるし地元のやつもいるっちゃいるか。

全生徒の入場が終わり入学式が再開される。

ここから先がまあ長い。

なんで偉い人の話ってこんな長いの。

もっとコンパクトにできんのか。

立ったり座ったりを繰り返す。

帰ったら何しようと考えながらやり過ごす。

そろそろ終わりかなと思っていたときだった。

「新入生代表宣誓 清水あおい」

「はい!」と快活な声が聞こえてくる。

清水...あおい?

ん?同姓同名かな?

その人物はハキハキとした動きで登壇した。

...目を擦る。あおいだ。

もう一度、目を擦る。あおいだ。

自分の目が間違ってるんじゃないかと思って三度、目を擦る。あおいだ。

『本日、私たち新入生は――』

宣誓が続く。

声もあおいだ。

え...?

はい......!?!?

うっ.........!?!?!?

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

驚きすぎて逆に言葉が出なかった。

文字通り愕然としていた。

堂々とした話し方。

凛とした姿勢。

大勢を前にしても、ものともしていない。

あおいが宣誓を終えて振り返ると目があった。

俺の顔を見て一瞬ニヤリとした。

俺は抜け殻のようになりほぼ放心状態のまま体育館を出た。


教室に戻って戦慄した。

あおいがうちのクラスに入ってきたのだ。

この時にあおいと同じクラスだと判明した。

「あおい!おつかれ〜!宣誓完璧だったね!」

クラスの女子が声をかける。

「ありがとう!緊張したけどね!」

あおいは笑顔で答える。

眩しいぐらい爽やかな笑顔。

もう友達を作ったのかと思ったがあの女子生徒は中学一緒だったと思う。

見た覚えがある。

知ってるやつがいるなんてそんなにいると思ってなかったから他の人の名簿なんて見てなかった。

待って待って待って。

心が追いつかないぞ。

担任の先生がこのあとの説明をしているが頭に入ってこない。

学校が同じであることも驚いたが同じクラスにあおいがいることも現実感が湧かない。

あおいは平然としている。

誰かが世界を変えたのか?

この現実は昨日までと同じ現実か?

自分でもよくわからないことを考えていると春人から声をかけられた。

「どうした?大地。ボーッとして。これからクラス写真撮るから校庭に移動だってよ。その場で解散みたいだから鞄忘れんなよ」

「あ...あぁ」

「まさか清水さんと同じ高校だなんて夢みたいだな!この3年間猛アタックするぞー!」

春人はあおいのことが小学生のときから好きだった。

周囲に公言しているほどで男子の間で知らぬ人はいなかったと思う。

中学で離れ離れになるって知って春人が呆然としてたのを思い出す。

校庭に移動し集合写真を撮った。

写真を撮った後は親と話す者、クラスメイトと話す者、様々だった。

あおいはあおいのお母さんと話していた。

見覚えのある人物はあおいのお母さんだったんだ。

...帰ろう。

...なんかすごく疲れた。

とぼとぼと帰り、家が近くなってきた。

とっとっとっとと駆け足が聞こえてきたと思ったら誰かに背中を叩かれた。

「いった!?」

「大地帰るの早すぎ!やっと追いついた!」

笑顔のあおいだった。

「どう!?驚いた!?ビックリした!!?」

「...同じ学校ならもっと早くに教えてくれてもよかったのに」

ついムスッとした顔をしてしまった。

「えぇー!それじゃあサプライズにならないじゃん!!どう嬉しい?天才美少女あおいちゃんと学校がまた同じだよ!しかも今度はクラスまで一緒!」

ニマニマして聞いてくる。あおいは嬉しそうだ。

「そもそももっと偏差値高い進学校に行ったかと思ったよ」

「北河高校の広報にね。あたしの行きたい医学部がある大学に学校推薦で合格した生徒がいるって記事読んだの!北河高校なら近いし通いやすいからここにしようって。ママは進学校のほうがいいんじゃないかって言ったんだけどあたしなら推薦でいける!って説得したんだ!陽奈もいるしこれからいくらお金かかるかわからないから」

...なるほど。

そこまで考えてるのはあおいらしい。

「それよりあおいちゃんの制服姿はどうよ!?」

北河高校の制服は男子は紺のブレザー、女子は紺のセーラー服。

あおいはいかにも優等生って感じの着こなしをしていた。

中学のときよりも活発でありながらも清楚な感じがある気がする。

あおいは高校から髪型を変えた。

結ぶのをやめて胸元までの黒髪がまっすぐ落ち、毛先だけが静かに内側へ曲がっていた。

もはや恒例行事となりつつあるあおいの服装チェック(絶対褒めろ)会。

中学の制服事件以降、俺に初めてみせる服装には必ずこの攻撃をしてくる。

だがここは反撃のチャンス。

中学生になったばかりのあの日みたいなドジは踏まないぞ。

「すごく似合ってるよ!中学のときよりも可愛さと華やかさがアップしてるね!代表挨拶のときなんて堂々としててかっこよかったよ」

あおいはぽかーんとしている。

よし!恥ずかしかったけど言ってやった!

いつもならこんなストレートに褒めはしない。

今日散々驚かされた反撃をくらえ。

俺の思惑とは裏腹にあおいはものすごく笑顔になった。

「そうでしょ!?似合うでしょ!?」

...いつもと違うパターンで攻めたのに...

これ言う方が恥ずかしさでダメージ受ける。

「あ!大地と仲良いのは学校の人達には内緒なのは変わらないからね?」

「...同じクラスでそれは難易度高くない?」

「変な噂たったら嫌だもん。先生たちの印象悪くなったらあたしの進路に関わるでしょ?今までだってやれたんだからなんとかなるわよ。」

「いや今までは違うクラスだったし学校じゃ接点なかったからバレなかったのが大きいよ」

「今日から同じクラスだから気をつけなきゃね。あたしのことは皆の前では清水さんって呼んでね。大地のことは前田くんって呼ぶから」

名字で呼ばれて背中に悪寒が走る。

「...あおいに名字で呼ばれるの慣れないんだけど」

「ダメ!慣れて!」

またむちゃくちゃなことを言う。

代表挨拶してた人間と本当に同一人物か?

疑いの目をあおいに向ける

「...なにその目?嫌だって言われても断るからね!それより早く大地の家行きましょう!マリモカートやりたい!」

あおいが駆け足になる。

遅れないように俺も駆け足になる。

桜は散っている。

入学式に桜がないと少し寂しい。

でもなぜか俺はその寂しさを感じずにいられた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。