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あおいだいち  作者: 佐々木 栞
第3章 高校生

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第10話 すっかり忘れていた【高校生編2】

入学してから2週間が経った。

5限が終わって休み時間。

あおいの片鱗は早くも姿を見せ始めた。

授業では積極的に発言してるし。

授業が始まる前に騒がしいことは往々にしてある。あおいが「先生来るよ」というだけで自然と静かになるのだ。

それにプリントが多くてわからなくなってる生徒が周りにいたら教えている姿も見た。

これだけではなく枚挙にいとまがない。

前に目立つのは嫌だと言っていた。

それでも困ってる人を放っておけないのだろう。

なんだかんだ義理堅いところあるし。

それでも思ってしまう。

これがあおいか?と。

俺の部屋に君臨する傍若無人天上天下唯我独尊理不尽大魔神と同一人物とは思えない。

少なくとも学校だと姿を現さない。

俺は春人とクラスで仲良くなった石井くんと3人で行動するようになっていた。

気づけばあおいの周りにはいつも人がいた。

俺は遠目で見てるだけ。

これならあおいとの関係もバレずにすみそうだ。

もうすぐ6限の時間。

6限は4月下旬にある校外学習の班を決めるらしい。

校外学習の内容はただの山登りとのこと。

担任の岡田先生が教室に入ってきた。

日直が号令をかける。

「じゃあ今日は前々から言ってた通り校外学習の班決めをするから。6人で一班。男女混合で好きに組んでいいぞー」

皆がざわめきだす。

まだ入学して2週間しか経っていない。

皆が様子を伺っている。

そんななか積極的に動き始めたのが春人だった。

春人はまず石井くんに声をかけていた。

その次に石井くんを連れて俺のところにきた。

「大地、組もうぜ」

「うん」

すぐさま春人は視線を移した。

春人の目線の先にはあおいがいた。

あおいは他に2人の女子生徒と会話をしていた。

...まさか?

春人はズカズカとあおいに近づき声をかけていた。

数分もしないうちに春人はあおいたちを連れて俺たちのところにやってきた。

「じゃあ俺たちはこのグループで!先生決まりましたー!」

春人が先生に報告に行く。

電光石火の早業。

さすがというべきか。

俺とあおいは思わず目を合わせてしまった。

まさか同じグループになるとは思ってなかったとあおいの顔は言っている。

グループメンバーは、

前田大地。

山口春人。

石井健太。

清水あおい。

松本七海。

木村真央。

の6名となった。

...すっかり忘れていた。

春人は女子のことになると行動力がとんでもないことになることを。


クラス全体でグループメンバーが固まったのか先生が全体にしおりを配った。

「じゃあ班長まで決めちゃってなー。決まったら班長中心にしおりを確認しながら必要事項の確認をしてくれ」

グループ内で話し合いが始まった。

「班長どうする?」

切り出したのはあおいだった。

少しの沈黙のあと春人が言った。

「清水さんでいいんじゃない?」

皆の視線があおいに集まった。

一同賛成の模様。

「じゃああたしやるね」

あおいが班長になった。


あおいはしおりを確認しながら歩く順番や困ったときの集合方法などを皆から意見を吸い上げまとめ、決定していく。

淀みない所作からこういった進行に慣れていることが容易に想像できた。

1番早くに打ち合わせが終わったのはうちの班だった。

暇な時間ができてしまった。

「改めて軽く自己紹介しとく?」

春人からの提案であった。

皆が春人を見た。

特に反対意見もなかったから賛成と受け取ったのか春人が言った。

「じゃあ言い出しっぺの俺から時計周りでやろう。名前は山口春人。光葉中出身。うーん、後はやろうと思ってる部活でも言っとくか。バスケ部かサッカー部で悩んでる。よろしく」

誰とも言わずに皆が拍手する。

肝心なところが抜けてるぞと心の中で呟いた。

春人は見た目は好青年で友達思いの良いやつだ。

ただ女の子に関してだらしないところがある。

春人は顔は普通なのに小学生の頃からなぜかモテた。

彼女もいた。

ただすぐ別れて別の人と付き合うを繰り返していた。

あおい好きを明言していたのに、なぜかアタックに行かなかった。

なのに別の女の子と仲良くなって付き合うみたいな意味わからん行動をよくしてた。

それがなかったら基本的には良いやつなんだけど。

心の中で合掌しておく。

高校では平穏でありますように。

自然と次の人が続けた。

「私は松本七海。氷ヶ丘中出身。部活は中学から続けてる弓道部に入る予定!目標は全国!よろしくね」

おぉーと声が上がり拍手が起こった。

中学で松本さんと話したことないけど活発そうな人だ。

あおいと仲良さそうなのもわかる。

髪型がポニーテールなのも小学生のときのあおいを彷彿とさせた。

皆が拍手。

「じゃあ次、あおいの番」

松本さんが言うとあおいが続く。

「清水あおいです。七海と同じ氷ヶ丘中出身。大学受験のために帰宅部にするつもり。よろしくお願いします」

石井くんが気になったのか聞く。

「清水さん、大学受験に気合い入ってるんだね!どこか難しいところ受けるつもりなの?」

「ええっと...一応、医学部目指してる」

「医学部!?それはすごいな!」

石井くんだけではなく木村さんと春人も驚いていた。

「あおいはすごいんだよー!中学でもトップクラスの成績で運動神経もいいんだから!あおいなら絶対医者になるね!」

自信満々に語る松本さん。

控えめに照れた表情のあおい。

...松本さん。あおいは普段は自信満々であたしは絶対医者になるって言ってるよ。

届かない心の声を伝えておいた。

皆が拍手する。

「じゃあ次はわたしか。木村真央です。杉浦中学出身。部活は吹奏楽部希望。中学でも吹奏楽部だったから。高校でもホルンができたらいいなと思ってます。よろしくです。」

ふわふわとした話し方だった。

春人が聞く。

「へぇー。木村さん吹奏楽部希望なんだ!なんでホルン好きなの?」

木村さんがかけている黒い眼鏡がきらりと光った。

「音色が好きで聴いた瞬間からやりたいって思ったの!」

「そうなんだ!高校でもできるといいね!」

優しく微笑む春人。

多分、春人は女子情報収集モードだなと俺は予想した。

木村さんは小柄でおとなしそうな印象を受ける。

髪もショートでふわりとした黒髪。

これがゆるふわ系ってやつなのか?

...俺にはわからん。

皆が拍手する。

「石井健太。栄中学出身。部活は面白そうだから放送部やろうと思ってる。よろしく」

松本さんがへぇーと声をあげる。

「石井くんガタイもいいし背も高いから運動部に入るのかと思った」

「中学では柔道をやってたんだけど高校では別なのやりたいなと思ってたから」

俺も石井くんは運動部系やるのかと思ってたから意外だった。

放送部のイメージがあまり湧かない。

皆が拍手し最後は俺の自己紹介。

「前田大地です。氷ヶ丘中学出身。部活はまだ特に決めてないけど帰宅部かも。よろしくお願いします」

皆が拍手していると春人が気づく。

「清水さんと大地と松本さんって同じ中学?」

松本さんが答えた。

「そうだね!わたしと前田くんは同じクラスになったことないから初対面に近いけど」

むむっとした顔の春人。何か思いついたようだ。

「もしかして清水さんと大地って小中高同じ?」

春人め。勘付いたか。

まとめるとこうなる。

あおい、俺、春人、小学校同じ。

あおい、俺、松本さん、中学校同じ。

春人だけが俺とあおいが小中一緒なのを知りうる人物だったのだ。

自己紹介の流れから嫌な予感はしていたがこうも早くに接点が見つかってしまうとは。

内心はドキドキしながらもどう答えようかと考えていた。

するとあおいは言った。

「そうね。前田くんとは小中高一緒。ただ小学生のときは一度しかクラスが同じにならずにほとんど話さなかったし中学では同じクラスになることなかったから七海と同じで初対面に近いかも」

背筋に悪寒が走る。

だめだ。

まだあおいから苗字で呼ばれるのが慣れない。

あおいの言うことは間違ってはいない。

客観的に見たら一面の真実。

ただ恐れていることが一つあった。

問題は春人がそれを覚えているかどうかだ。

ドキドキしながら様子を伺う。

「小中高一緒ってすごいね!それでもほとんど話したことないのも逆にすごい!」

春人は頷いている。

ほっ...よかった。春人は覚えていないらしい。

あおいと初めてポコモンで対戦したあの日。

春人もその場にいたのだ。

春人は先に帰っていたはずだが俺も記憶が曖昧で定かではない。

そこで何か見られていたらと危惧していた。

まあ小学校1年生のときの記憶なんてほとんどないか。

一安心したところで岡田先生が言う。

「じゃあ全グループまとまったから自席に戻れー。時間も時間だから帰りのホームルーム始めるぞ」

皆が席に戻る。

あおいとの関係がバレる可能性が一気に高まった。

憂鬱な気持ちで自席に戻った。



学校が終わり自宅に帰るとあおいからメッセージが入っていた。

「まさか大地と同じグループになるなんてねー」

やはりあおいも同じ事を思っていたらしい。

返信をした。

「全くだ」

するとすぐに返信が来た。

「山口くんが急に来たからビックリしたけど断る理由もなかったし」

「小中も一緒なのバレたときは焦った」

「学校では接点持ってないから大丈夫でしょ」

「いやあおいとポコモンで初めて対戦した日に春人もいたんだよ」

「そうだっけ?あたし覚えてない。山口くんも覚えてないでしょ。小学校1年生の頃の話よ?」

「そうだけど春人は結構記憶力よかった気がするんだよね」

「だとしたら今日言ってるでしょ。大丈夫よ。それより大地顔に出すぎ。あたしが前田くんって呼んだとき変な顔してた」

「まだ慣れない。今も変な顔してる」

「あれ笑っちゃいそうになるから早く慣れて。くれぐれもバレないようにね」

「あおいこそね」

「あたしは完璧よ。今日の振る舞いも大丈夫だったでしょ。心配なのは大地。すぐ顔に出るんだから」

「それを言ったら春人が俺とあおいが小中高一緒って言ったときにあおいも表情が一瞬曇ってたよ」

「曇ってない」

「曇ってた」

「曇ってたとしても一瞬でしょ?それなら余程のことがなければ大丈夫でしょ。大地は一瞬どころじゃなかったもん。とにかく気をつけてね」

「...了解」

スマホを閉じる。

とりあえず校外学習を乗り切ることで頭がいっぱいだった。

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