第11話 山【高校生編3】
校外学習当日を迎えた。
学校からバスに乗って青葉山登山口まで来た。
岡田先生からグループで集まるよう号令がかかった。
グループで集まったら準備体操をした。
「じゃあ準備ができた班から出発して」
岡田先生の言葉を合図に各班が動き始めた。
うちの班の女子グループは話しながら登り始めた。
すかさずそのトークに入り込む春人。
入り方もスムーズで慣れてる感じがあった。
あおい、春人、松本さん、木村さんが前を歩きその後ろを俺と石井くんが歩いている。
久しぶりの山道。
いつ以来だろう。
吹き付ける風が心地よい。
そこまで過酷な山道でもないからのんびり行こう。
山登りが順調に進んだ。
話しながらもあおいは時折、班員全員を見渡しながら各々の様子をチェックしていた。
誰か1人でも疲れていそうなら班で休憩を取ったり、水分の補給を忘れないように促したりとまさに班長だった。
途中で春人が遅れ始めた。
どうやら久しぶりの山道と話しすぎでへばってきたようだった。
春人が最後尾になったので俺は春人に合わせるように歩いた。
隣に行くとすでにぜぇぜぇ言っている春人。
あおいが前から声をかけた。
「山口くーん。大丈ー夫?」
「ぜん、ぜん、もんだい...なし...」
問題ありな返信だった。
俺はとなりで手でバッテンを作ってあおいに知らせた。
それを見たあおいが
「皆、少し休憩をとりましょう」
と皆に声をかけた。
女性陣は全然余裕そうだった。
どうやら鍛えられ方が違うらしい。
男性陣は石井くんはまだまだ平気そう。
俺も若干疲れてきてはいた。
部活を引退してからろくに運動をしていなかったツケがきていた。
春人も体力はあるほうなのだがあおいとの話に夢中になってペースを乱したのだろう。
春人の息が整い始めたのを確認したあおいは登山再開の声をかけた。
再開してからも順調に進んだ。
道中、そこそこな坂道があった。
女性陣はなんなく登ってた。
石井くんと春人も平気な顔をして登ってた。
坂道って言ってもそこまで気にしなくていいのかも。
最後尾を歩いていた俺もなんなくクリアと言いたかった。
誰にも気づかれなかったけどちょっと転びかけた。
体勢を立て直して顔を上げたらあおいと目があった。
プイと顔を背けるあおい。
...今の見られたかな?
...今日はやけに目が合う。
あおいが班員全体を気にしてるからかな。
もしくは俺ってそんなに頼りないのか。
疲れてきたのかネガティヴな思考になる。
でももうすぐ頂上だ。
頂上につくと大きな広場があった。
はぁー疲れた。
あおいの様子を見てみるとまだまだ余裕があるように見えた。
あおいは班員の顔を見ながら皆に労いの言葉をかけていった。
最後に俺のところにきた。
「おつかれ」
「おつかれ」
そういってあおいはすぐに去っていく。
最後に岡田先生が頂上に着いた。
グループ全班が到着したようだ。
岡田先生が一度辺りを見渡しうちのクラスのグループ全体に言う。
「よーし。全員いるな。怪我人もなしと。グループで好きなところで昼飯にしてくれ。昼飯食い終わったら自由時間だから好きにしていいぞ」
春人が率先して動き始めた。
「皆、ここにしようぜ!」
そこは広場でも街の眺望が綺麗に見える場所だった。
皆がレジャーシートを広げて各自持参したお弁当を取り出した。
女性陣はお弁当可愛いねーだったりその唐揚げ美味しそうときゃっきゃしてる。
石井くんは余程お腹が空いているのかお弁当にがっついていた。
春人はお弁当を食べながらも女性陣を見ながら会話に入る隙を伺っていた。
俺は街の景色を観ながらお弁当を食べていた。
高いところからの景色って綺麗だな。
皆がお弁当を食べ終わり各々自由時間を過ごし始めた。
俺は近くにあったベンチに座り景色を眺めながらのんびりしていた。
春人が近づいてきた。
「くぅ〜。清水さんガード硬え。松本さんがいると更にガードされる。なぁ大地。俺が清水さん口説くの手伝ってくれよ〜」
「嫌だよ。めんどくさい」
「そう言うなって!せめて何か情報くれ」
そう言われても俺は一緒にゲームしてるときのあおいしかまだ知らない。
「俺だって初対面みたいなもんだよ。自分で聞け」
「ちぇ〜」
春人は不満たらたらで去っていった。
そういえばあおいの異性関係って今まで聞いたことないな。
あおいからも話してこないし。
風の噂では相当モテてるみたいなことは耳にしたことがあった。
真相がどうなのかあまり興味もない。
あおいなら見た目だけでもモテるだろうし。
もし聞いたとしてもどうせあたしはモテるのよと自慢話が出てくるのが目に見えてるから聞かない。
あおいからは毎年バレンタインのチョコは貰っていた。
その度に「友チョコだから!!」とめっちゃ釘を刺された。
言われんでもわかってるっての。
何でも友達に配るのに買ってたらお金がかかりすぎるから手作りにしてるのだとか。
毎回女子は大変だなと思う。
まあ俺もあおいからチョコをもらうたびにホワイトデーに何渡すか毎年悩むことになるのだが。
あおいはどこに行ったのだろうと目だけで探してみると別の場所で松本さんと木村さんとベンチに座って景色を眺めていた。
なぜかあおいと目が合った。
あおいが目でなによ?と言ってる気がした。
俺は別にって目をして再び視線を景色に戻す。
あおいとは部屋で遊ぶことばかりだけれどたまには一緒にこういう場所に来るのも悪くないかも。
なんて思ったのはここだけの話。
自由時間が終わり下山の時間になった。
再びグループで集まって下山する。
下山中は登山中ほど皆騒がしくなかった。
さすがに皆疲れてるっぽい。
行きより帰りの時間が早く感じた。
バスに乗り込んだ。
岡田先生が皆揃ってるか確認して出発した。
隣ですでに寝ている春人と石井くん。
あおいたちが起きてるかは俺が座ってる位置からは確認できなかった。
それにしても高校入学から今日までだけでもあおいには驚かされっぱなしだ。
一緒にゲームしてるあおいとはまた別人だ。
俺はあおいのことを知ってたようで知らなかったことを思い知らされた。
バスに揺られて眠気が来る。
外を見ると鮮やかな夕日が見えた。
夕日を見ながらいつのまにか眠りに落ちていた。




