第12話 海を見に行こう4
あぶねっ。
一瞬意識が落ちかけた。
電車を待ってる間、満腹感も重なり眠くなってしまっていた。
最近遅くまで勉強してたのも影響してる。
俺は隣に座っているあおいを見た。
するとあおいもこっちを見ていた。
「大地、今寝てたでしょ?」
やばい。
見られてた。
「...寝てない」
冷や汗が出る。
「あたしと一緒に出かけてるのに寝るなんていい度胸してるわね」
めっちゃ笑顔。手がグーだけど。
「いや寝かけただけだから正確には寝てない。だから無罪」
「久しぶりに一緒に出かけてるのに寝かけるとはどういう了見だぁ!」
グーパンチでほっぺをぐりぐりされる。
地味に痛い。
「ごめんなさい」
あおい裁判官としては有罪らしい。
ふと手が戻ってあおいがこちらを見る。
「大地も勉強続きで疲れてるんでしょ?」
「まあね。この時期は皆そうだよ」
「大地は将来やりたいこと見つかった?」
「まだなんにも。あおいは昔から医者だもんね?」
「...うん」
...いつもなら即答するのに...
それにあおいの表情が少し暗い?
電車が到着するアナウンスがされる。
あおいは立ち上がった。
遅れないように俺も立ち上がる。
前にいるあおいの表情は見えない。
数分もしないうちに電車が来た。
乗り込むとこの電車も空いていた。
座席が空いていたのであおいと2人で座る。
あおいを見るといつもの表情だ。
心配になってあおいを何度も見てしまう。
あおいの視線が一点に集中していた。
俺も気になってそっちを見た。
あおいが見ていたのは映画の広告だった。
タイトルは『碧い大地』
あれ?これって...
「前にあおいが読んでた本じゃない?」
「そうよ。よく覚えてるわね」
「あおいがあたし達の名前が載ってるタイトルだから買ったって言ってたの今でも覚えてるよ」
「面白くて3回は読み返したわ」
「そんなに面白いんだ?」
「あたしはね。同年代にウケるかはわからないけど」
あおいは家では基本的に本を読んでいるらしい。
前にゲームしてる姿しか見てないからイメージ湧かないみたいなこと言ったら怒られたっけ。
「皆で見に行ってみる?」
「そんな時間あるかしら?夏祭りでさえ集まるのに苦労したみたいだし。それに...」
言いかけてあおいが止まった。
「それに?」
「...なんでもない」
...さっきも同じような事あった。
あおいの表情からは何かはわからない。
「皆の受験がうまくいくといいわね」
そういってあおいは車窓から景色を眺める。
話はこれで終わりと言われてるような気がした。
俺も景色を見る。
知らない町並みが瞳に映る。
今日のあおいは何かが違う。
確信に近いものがあった。
道中聞くのも忙しないし海着いたらそれとなく聞いてみるか。
会っていなかったのは1ヶ月にも満たないがあおいに何かあったのかもしれない。
もう知らないことはないと思っていた。
それは勘違いだったのかもしれない。
俺の中で違和感が生まれても電車は進み続けた。




