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あおいだいち  作者: 佐々木 栞
第3章 高校生

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13/17

第13話 はじめての東京【高校生編4】

電車の中。

人が多いから吊り革に掴まりながら立っている。

目の前にはあおい。

あおいは座っている。

高校1年生の初めての夏休みだというのに俺は外出していた。

事の発端は昨日のあおいからのメッセージだった。

7月の下旬。夏休みに入ったばかり。

夕食も終えお風呂も入りあとは寝るだけ。

その前に俺はゲームをしていた。

1人は楽だなぁと夏休みを満喫していた。

多分明日か明後日あたり大怪獣が来るけど。

その大怪獣からメッセージが来た。

「明日、10時に駅前に集合!!」

明日?

10時?

駅前?

何かあったっけ?と考えていると、

「よろしく!」と追加でメッセージが来た。

...なにが?

恐ろしく要領を得ないメッセージ。

仕方がないので聞いてみた。

「明日って何かあったっけ?」

するとすぐに返信がきた。

「明日都内まで買い物行くから。付いてきて」

そういうことね。

この暑い中都内まで行くのめんどくさいな。

「友達と行けばいいじゃん?」

「七海が急用で行けなくなっちゃったの。真央ちゃんも空いてないって言うし。」

「他の友達は?」

「こんな時間に急に誘ったら失礼でしょ」

俺には失礼だとは思わないんかいと心の中で呟く。

「日にち変えれば?」

「あたしの好きなショップが期間限定のワンピース出してて明日までしか売ってないの」

「ひとりで行けば?」

「今、2人で来店すると割引してくれるの。女の子はお金かかるんだからね!少しでも節約しないといけないの!大地どうせ暇でしょ?」

「いや夏休みを満喫するのに忙しい」

「要するに時間はあるってことでしょ?じゃあ明日待ってるから」

くっ!見抜かれてる...

えぇー。この暑い中都内まで出かけるの?

一気に憂鬱になってきた。

22時か。とりあえず早く寝よう。

俺はゲームをセーブして寝る準備を進めることにした。


翌朝。

9時頃。

俺はベッドに横になりながらスマホをなんとなくいじっていた。

朝早くに目が覚めてしまって準備が早く終わってしまったのだ。

まだ集合まで時間があるし。

駅まではバスで20分ぐらい。

バスの出発時間も確認済み。

ピンポーン。

家のインターホンが鳴る。

この時間に来客って珍しいな。

母さんが対応してるっぽい。

特に気にせずにいると階段を上がってくる音が聞こえてきた。

急に俺の部屋の扉が開いた。

あおいだった。

「え!?」

俺が声をあげるとあおいはこっちを見た。

「あら大地。起きてたのね。おはよう」

「あ、おはよう。...じゃなくて、どうしたの?集合は駅でしょ?」

「荷物置きに来ただけよ」

「荷物?」

よく見ると背中にリュックを背負っていた。

あおいは適当にリュックを置いた。

「その荷物なに?」

「あたしが後で使うものだから大地は気にしなくていいわ」

後で使うもの?

ゲーム関連かな?

「じゃああたしまだやることあるから先に行ってるわね。遅れるんじゃないわよ?」

そう言ってあおいは部屋を出ていった。

まさに嵐が過ぎ去ったようだった。

なんだったんだ一体。

時計を見てみると家を出る時間が近づいてきていた。

考えてる暇はなさそうだ。

俺は立ち上がり部屋を後にした。


9時50分。

駅前。

カンカン照りではないけれどそれでも暑さに変わりはなかった。

俺は建物の日陰になる場所であおいを待っていた。

周りを見ていると交差点を歩くあおいを見かけた。

俺はここにいると手を挙げるとあおいはそれに気づいて近づいてきた。

「待たせた?」

あおいは、

白の半袖ブラウス。

ライトブルーのワイドデニム。

白いスニーカー。

ベージュのショルダーバッグ。

といった格好だった。

普段とは違う私服姿に返事がちょっと遅れた。

「ちょっとね」

「...はぁー」

あおいは突然ため息を吐いた。

「大地、そこは今来たとこって言うとこよ。そんなんだから大地はモテないのよ。山口くんならきっと上手よ」

「あんな百戦錬磨の猛者と比べんな」

だが集合早々に急所をつかれた。

こうかはばつぐんだ。

「今日のファッションどう?」

あおいはその場でくるりとまわってみせた。

「...可愛いよ?」

「...ダメ!気持ちが足りない」

こんな駅前で言うの恥ずかしいんですけど。

でも言わないと許してくれそうにない。

「爽やかで可愛い!都内の男も放っておかないんじゃないかなー!?」

「...まあいいわ。飲み物買って行きましょう」

あおいが駅に併設されたコンビニに入っていった。

心のHPが減りながらも俺も続けて入る。

あおいはドリンクコーナーまで進み何にしようか悩んでいた。

俺は迷わず麦茶を取った。

「大地って夏場になると麦茶ばかり飲むよね」

「甘いものは喉渇くし水はなんか物足りないし麦茶はちょうどいいじゃん」

「あたしも麦茶にしよーっと」

あおいも麦茶を取り2人でレジに並ぶ。

会計を終えてコンビニを出た。

しまった。

ペットボトルを入れるもの持ってきてないや。

俺がどうしようか悩んでいるとあおいが手を出してきた。

「あたしのバッグに入れるから」

「ありがとう」

あおいに麦茶を渡した。

改札を通って駅のホームまで向かった。

少し待つと電車が来た。

電車の中は人が多かった。

運良くひと席空いたのであおいに座ってもらった。

あおいが座っている前に立った。

揺れが大きく電車の吊り革に捕まる。

席は空きそうにない。

しばらく立ち確定かな。


車窓からの景色がどんどん都会になっていった。

あおいはスマホをいじってた。

あまり都内は得意じゃない。

人が多いから。

うちの学校の文化祭も相当人が来るらしい。

夏休みに入る前に文化祭実行委員決めとクラスの出し物決めがそれぞれ別日に行われた。

うちのクラスからはあおいと中村くんが立候補した。

クラスの出し物は演劇に決まった。

演目はロミオとジュリエット。

中村くんとあおいがいるからという理由で決まった。

ジュリエット役にあおいに打診があったらしい。文化祭実行委員で忙しいからとあおいは断固拒否してた。

そういうのあおい嫌いだからなぁ。

結局ジュリエット役は松本さんがやることになった。

1学期のテスト結果の順位だけどあおいは2位だったらしい。

中学の時も似たようなことがあった。

「1位じゃなくて悔しくないの?」って聞いたことがあった。

「ママが安心できればそれでいい」

意外だった。

ゲームではめっちゃ悔しがるから。

ちなみに1位は中村くん。

中村くんは爽やかイケメンでサッカー部というモテ要素満載の人だ。

春人もサッカー部に入ってる。

2人が話してるところをよく見かける。

俺は中村くんとは仲良くないけど。

文化祭実行委員が決まった後、しきりに噂になった。

もしかしたらあおいと中村くんが付き合うんじゃないか説が流れた。

美男美女、成績優秀、運動神経抜群、お似合いだと評判になったのだ。

あおいは意に返さず中村くんとも適切な距離を取るように努めてた。

あおいにとっては色恋より医者になることのほうが重要らしい。

あおいのお父さんは救急医をしていてお父さんみたいになりたいからって理由で医者を目指すようになったって言ってた。

さてお昼どこで食べようか。

とりあえず良さそうなお店をピックアップしとこう。

いくつかピックアップできたところで電車が目的地に到着した。

場所は渋谷。

俺はネットか地元のショッピングモールで買い物済ませちゃうから都内には滅多にこない。

あおいは友達とたまに来るらしい。

改札を出て思う。

大都会。

人の量がえぐい。

ただ比較的歳近そうな人が多めかな?

「109に行きましょう」

有名な109に行くらしい。

俺は場所を知らないからあおいに付いて行くことにした。

あおいの後ろを歩いた。

...30分歩いてもそれらしき場所に着かない。

...暑い。

「おかしいわね。そろそろ着いてもおかしくないんだけど」

「...ねぇあおい。109ってどこにあるの?」

「駅前」

「駅前...?」

もう駅から遠のいてなんか路地裏入ってるんだけど。

とりあえず地図アプリを開いて現在地を確認した。

「あおい。隣にいて付いてきて」

なんでかしら?みたいな顔をしながらも隣に来たあおい。

地図アプリを見ながら進み始めた。

結構歩いたから喉が渇いてきた。

「あおい。麦茶取ってくれる?」

あおいはショルダーバックから麦茶を取り出した。

「はい」

「ありがとう」

喉を潤して再びあおいに麦茶を渡した。

とりあえず駅前目指そう。

意外にも駅は割と近くだった。

次に109の場所を調べた。

...えぇ...めっちゃ近いじゃん...

...もしかしてあの建物か?

...駅から見えるんだけど...

あおいと一緒に建物に向かった。

建物に109の文字。

本当にこの建物だった...

あおいってもしかして...

一つの仮説が生まれる。

「着いた!じゃあ行こう!」

あおいが先に行こうとするので止めた。

「ちょっと待った!あおいが行きたいお店先に教えて。俺が先導するから」

あおいは何を言ってるんだという顔をしていたが指示に従うことにしたらしい。

お店を聞いてその場所に向かった。

これはあおいが方向音痴なのは本人に伝えたほうがいいのかそれとも自覚があるのか。

そんなことを考えていたがそれはすぐに消し飛んだ。

...ここ俺には場違いすぎる。

お店を通り過ぎるたびキラキラして眩しかった。

これが流行の最先端を走る場所か。

あおいの目的のお店に着いた。

...入りたくね〜。

「じゃあ俺そこらへんで待ってるから」

「ダメよ。ペア割効かなくなるじゃない。大地も来るの」

そうだった。それで呼ばれたんだった。

諦めて行くしかない。

あおいは一直線にお目当てのワンピースに向かう。

試着をテキパキとこなしたと思ったらあっという間に会計を終えた。

「じゃあお昼食べに行こう」

「え?もういいの?」

「七海とだったらいろいろ周るけど。大地こういうところ苦手でしょ?」

「いや俺に気を遣わなくていいよ。せっかく来たんだし」

「いいの。今日はコレを買うって決めてたし。お金使いすぎたくないし」

あおいはお金の管理に厳しい。

お母さんの教育の一環らしい。

子供のうちから金銭感覚をちゃんとしなさいと言われているとのことだ。

「そう?じゃあお昼食べに行こうか。先にトイレ行っていい?」

「うん」

別の階にあるトイレに向かった。

「あたしここで待ってるから」

あおいはトイレの入り口付近で待機。

俺はトイレをしている間に頭の中でピックアップしたお店の厳選に入った。

とりあえずあそこでいっか。

トイレをし終えて手を洗い入り口に向かうと声が聞こえてきた。

「よかったら一緒にお茶でもどうですか?」

入り口から出るとあおいが男の人にナンパされていた。

あおいはフルシカトしていた。

...これがナンパ!?

人生で初めて見たナンパに衝撃を受けた。

こんなところでナンパする人なんているんだ!?

都会ってこわっ...

なんて呑気に考えて冷静でいられたのはここまでだった。

沸々と湧いてくる謎の感情。

それは簡単に沸点を越えてきた。

頭の血が全部昇るような髪の毛まで逆立ちそうな感覚。

落ち着け落ち着け。自分にそう言い聞かせるほど冷静さを失っていった。

気づかぬうちにずかずかとあおいの前に割り込んでいた。

「...俺の連れなんで」

相手の反応もあおいの反応も無視してそのままあおいの手をとって連れていった。


「...いち」「大地ってば!」

あおいに呼ばれて気づいた。

我に返るとあおいと駅前にいた。

あれ?

さっきまで109にいたはず?

「...大地?」

あおいが俺の顔を窺うように見る。

心配そうな瞳。

ようやく気づいた。

あおいと手を繋いでいることに。

慌てて手を離した。

「ごめん。手痛くなかった?」

「大丈夫。...大地こそ大丈夫?あんな怒ってる大地初めて見たから」

あおいは戸惑ったように言った。

俺が怒ってた?

何がなんだかわからなかった。

2人の間に気まずい雰囲気が流れた。

とりあえずこの空気を払拭しなきゃ。

「お昼ご飯食べに行くんだったよね」

「う、うん」

「事前に調べておいたんだ」

...えっと?

なんだっけ?

さっきのことで全て頭から飛んでしまった。

慌てているとあおいが何かを見つけた。

「あの行列なんだろう?」

見てみるとラーメン屋さんの行列だった。

「すごい人の数ね。...横浜家系ラーメンってなに?」

「え?あおい、家系ラーメン知らないの?」

「知らない。カップ麺は基本パパしか食べちゃダメだしパパが帰ってきたときぐらいしか外食しないから。そのときもラーメン屋さん滅多にいかない。行っても近所の中華そば屋さん。」

あおいのお父さんも相当忙しいらしくなかなか帰ってこないとのこと。

そうか。

あおいの家はあまりラーメン食べないのか。

なんて説明したらいいかな。

俺も詳しいわけじゃないし。

悩んだ末自分の感想を言うことにした。

「俺も詳しくないけど簡単に言うと家系ラーメンっていうのはラーメンをおかずにご飯を食べるって悪魔の所業を行うところだね」

「ラーメン...おかず...悪魔...」

あおいはそう呟くと目を輝かせた。

「行ってみたい!!!」

「えぇ!?もっと洋食とかのほうが」

「あの店がいい!!行こう!!」

あおいがどんどん進んでいきそうになるのを止めた。

「あおい。まずは食券を買ってから並ぶんだ」

「そうなのね!」

あおいは食券機に向かう。

まさかあおいと家系ラーメンを食べることになるとは。

まあこうなったらあおいは止まらないし。

2人で食券を買って列に並んだ。


あおいは全部のせラーメンにライス小。

俺はラーメンにライス中を選択した。

あおいは

「すごい!!味の破壊力!」

「本当にお米に合うわ!」

と充分に堪能したみたいだった。

食べ終わり2人で店の外に出た。

「美味しかったー!」

満足そうなあおい。

「これからどうする?」

「そうね。そろそろ帰りましょう」

「もういいの?」

「うん。もう買いたいものも買ったしお腹いっぱいだし」

「じゃあ駅に向かおうか」

「ちょっと待って。喉乾いたから麦茶飲みたい」

そう言うとあおいはショルダーバッグから麦茶を取り出した。

家系ラーメンは味濃いし喉乾くよねと勝手に納得。

あおいはペットボトルの蓋を開けて麦茶を飲んだ。

あれ?そういえば?

「あおい。俺と同じ麦茶買ったけど見分けはついてるんだよね?」

あおいは途中で飲むのをやめて答える。

「もちろん。大地のほうが麦茶飲んでるからあたしのは量が多いほう」

と言って自分の麦茶と俺の麦茶を見比べた。

...何度も。

あおいの顔がどんどん赤くなっていく。

「...もしかして見分けついてな」

「こっちがあたしので間違いない!!断じて!!」

と言って残りの麦茶まで飲み干してしまった。

そして近くにあった自販機のゴミ箱に捨てた。

あおいはショルダーバッグから麦茶を取り出すと

「大地も飲みきっちゃって!!」

「え?」

「いいから!!ほら!!」

と強引に麦茶を渡された。

仕方なく麦茶を一気飲み。

「早く捨てて!!」

言われたとおりにあおいと同じ場所に捨てた。

「これでもう関係ないわ!!忘れて!!」

あおいは先に行こうとした。

「待ってあおい!俺が先導するから」

あおいはぴたりと止まったので隣に行く。

...そんな取り乱されたらこっちが逆に意識しちゃうよ。

あおいの顔は見れなかった。

自分でもわかるぐらい俺も顔が真っ赤だったから。

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