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あおいだいち  作者: 佐々木 栞
第2章 中学生

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第7話 灯り【中学生編3】

後片付けを終えて部屋に戻ると、

あおいがコップに黒い炭酸飲料を注いでいた。

そのコップを手に取り飲み始めた。

ゴクッゴクッと聞こえそうな飲みっぷり。

なんと一気飲みしてしまった。

「っぷはー。ハンバーグ食べて仕事した後のジュース最高!!」

と言いこっちを見た。どうやら俺が戻ってきたことに気づいていなかったらしい。

「大地もおつかれ!ジュース飲む?」

「いやいい。普段家でそんなことやってるの?」

「家じゃやってないわよ。ママがジュース禁止令を出してるもの。ここでしか飲めないの!」

清水家はジュースまで禁止なのか。

改めて清水家の厳しさを知る。

「それより大地知ってた?」

「なにが?」

不敵な笑みを浮かべるあおい。

なんだ?

「人間って1時間も寝れば次の日動けるらしいわよ!」

「え!?今日ははや」

「もうマハクラの準備終わってるから!早くやりましょう!今日はお城から街まで完成させるわよ!」

すでに俺と父さん用のゲーム機スイートが用意されていた。

...徹夜じゃなかった。

でもほぼ徹夜じゃん。

あおいはもう目をキラキラさせている。

...腹を決めた。

こうなったらトコトン街を作りまくる。

マハクラとはサンドボックスゲームで素材を集めたりいろいろなものが作れたりする自由度が高いゲーム。



時計は23時頃を指していた。

街の開発とお城作りが順調に進んでいた。

「大地松明ある?こっちのほうの湧き潰しが甘いからやってほしいんだけど」

「松明持ってるよ!湧き潰しやっておくよ」

モブモンスターは暗闇から生まれてしまう。

モブモンスターにはプレイヤーに危害を加えるやつもいるので明かりを置く湧き潰しは重要なのだ。

あおいはまだ元気。

俺は少し眠気に襲われていた。

眠ってしまわないように話しかけた。

「そういえばあおいは部活どうするの?」

「あたし?あたしは空手部入ろうかなって」

「空手部!?なんでまた?」

「格ゲーうまくなるかもしれないと思って。ママにお家でゲームできないか交渉したけどダメだったから」

発想があおいらしいというかなんというか。

「大地は何の部活にするの?」

「部活見学してから考えようかと思ってるけど今のところ陸上部かな」

「陸上?大地走るの好きだっけ?」

「そこまで好きじゃないけど自分のペースで練習できるって聞いたから」

「ふーん」

中学では全員部活に入ることが決められていた。

文化部でもよかったが父さんから学生の時は運動部がいいぞと聞いていたので一度入ってみることにしていた。

あおいの空手部は驚いたけど。

「習いごとはどうするの?」

「塾は継続。ピアノと水泳はひと通りやったから辞めたければ辞めていいって。だから辞めたー」

「そうなんだ」

「中学は大地と一緒のクラスになることあるかな」

小学校1年生はあおいと同じクラスだったが2年生からは別のクラスになった。

毎年クラス替えがあったがあおいとは同じクラスになっていない。

「どうだろうね」

「中学は1回ぐらい同じクわあぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁぁあ」

どかーん。

炸裂する爆発音。

あぁー。

これはサリーパーだ。

サリーパーとはプレイヤーに近づいて爆発するモンスター。

まずい。

非常にまずい。

あおいはびっくりさせられることが嫌い。

マハクラ内での天敵はサリーパーだと言っていい。

そしてあおいはサリーパーに遭遇するとものすごく不機嫌になる。

ゴゴゴゴゴゴゴゴという効果音をつけたいぐらい不機嫌な顔をしていた。

「あぁ!!せっかく作ったのにやり直しだぁぁぁぁぁぁぁぁ」

...触れないようにしよう。

俺は街づくりに集中した。

少ししてあおいから声をかけられた。

ものすごく笑顔で。

「大地くん大地くん。ちょっといいかね」

ドクン。心臓の音が跳ね上がった。

あおいがくん付けするときは相当怒っているとき。

冷や汗が背中をなぞった。

「あおい様!なんでございましょう!」

なるべく笑顔で答えた。心の中ではひきつっているけれど。

自然と様付けしてしまう。

...怖い。

「ちょっと松明を持ってこっちに来てくれるかね」

「はい」

すぐさま松明を持って駆けつけた。

こういうときの遅れは何が致命的になるかわからない。

「到着しました」

「ここらへんを見てどう思う?」

「はい。湧き潰しが甘い箇所があると思われます」

「よろしい。ではさっき大地くんに何て言ったか覚えているかね?」

さっき...さっき...何て言われたっけ?

少し眠くて話半分にしか聞いてなかったんだけどあおいが空手部やるって話?じゃないな

その前...その前...松明...湧き潰し...はあぁ!?

...やべぇ...湧き潰しお願いされてたわ...

冷や汗がドバドバ出てきた。

「さっきから見てるとここらへんからモンスターが湧いてるように見えるのだけれど誰かさんに湧き潰しお願いしたのはあたしの気のせいだったかね?」

...怖くてあおいの顔が見えない。

画面を見る振りをして下を向く。

「そこからサリーパーが湧いてあたしを爆破したみたいなんだけどまあそれは許そう」

...絶対許してない。

「問題は30分かけて作った家がまた最初からやり直しってところ」

...マズイ。

あおいはこのゲーム内での建築が苦手でいつも作るのに一苦労している。

それでもうまくなりたいからと頑張っていた。

今日は泊まりでやる気充分。

気分も上々のなかでこの爆破。

なぜすぐに湧き潰しをしなかったのかと自分を責めるも時すでに遅し。

「大地くん、面をあげよ」

おそるおそる顔を上げた。

意外にもそこには聖母のような顔をしたあおいがいた。

...あれ?思ったより怒ってない?

「大地、今日徹夜ね♡もしも寝たらぶん殴って起こすから♡」

「...はい」

...あれおかしいな目から汗が流れてる。



はっ!!?

気がつくと俺は床で寝ていた。

いてて、体がバキバキだ。

いつの間にか寝てしまったようだ。

そうだ。疲れて少し休憩しようと思って横になってそのまま。

壁にかかってる時計を見た。

6時になったばかりだった。

窓から朝日が差し込む。

雨は止んでいた。

窓から外を見てみるといつも通りの日常に戻っていた。

昨日の冠水がまるで嘘のよう。

そういえばあおいは?

部屋にあおいの姿は見当たらない。

微かに寝息が聞こえる。

音を頼りに向かってみるとあおいが俺のベッドを勝手に使って寝ていた。

いつもの破天荒さは寝顔からは見られない。

他人の家で寝ているとは思えないほど安らかな寝顔だった。

...俺には寝たらぶん殴るって言ってたくせにこの理不尽大魔王め。

しかも勝手にベッドで寝てるし。

むかついたけど眠気が勝った。

ベッドに寄りかかるように座り机の上に置いてあるスマホをなんとなく見た。

夜中にメッセージが来ていたのか通知が入っていた。

あおいから?

なんだろうと思って開いてみると

「寝顔見たら殺す」

とのメッセージ。

...どうやらあおいも眠気には勝てなかったらしい。

寝顔見たら殺すって言われてももう見ちゃった。

ここは見てないってことにしておこう。

勝手にベッド使われてるしそれでチャラってことで。

...眠気が襲ってくる。

考えることもおぼつかなくなってきた。

再び瞼が落ちてそのまま意識が落ちていった。


パシャ。

何かの音がした。

その音に気がついて目が覚めてきた。

瞼が上がる。

目の前にはスマホをいじっているあおいがいた。

あおいは俺が起きたことに気づいた。

「おはよう。大地。」

「あぁ...おはよう。あれ?俺寝ちまったのか。」

「大地まだ寝足りないでしょ。ベッドで寝なよ。お母さんから1回帰ってこいって連絡来たからあたし帰るし」

時計の針は8時をさしていた。

「だったら玄関まで送る」

「わざわざいいよ。それより少しでも寝なさい。ほら」

あおいに促されてベッドに横になる。

さすがに疲れてしまっているようだ。

「おやすみ。大地。ありがとうね。起きたら鏡見てね」

鏡見て?それってどういう?という疑念が湧いたが眠気には勝てず再び寝てしまった。


...ゆっくりと瞼が上がる。

窓からは夕陽が差し込んでいた。

時計を確認すると16時前後になっていた。

体がだる重い。

朝方まで起きてたらこんなもんか。

...今日が土曜日で助かった。

部屋に散乱していたゲームやらお菓子やらは綺麗に片付けられていた。

...あおいか。

帰るときに片付けていったな。

申し訳ない気持ちになりながらもベッドから起き上がりリビングに向かう。

水道の蛇口を捻ってコップに水を注ぎ一杯飲む。

なんとなく気持ちに一息ついたところで玄関が開く音が聞こえた。

母さんが買い物袋を持ってリビングに入ってきた。

「あら大地起きたのね。よく寝てたわね」

「あおいは?」

「朝方帰ったわよ。お母さんから連絡あったみたいで。あおいちゃんとの朝食楽しみにしてたんだけど」

答えながら買い物袋の中身を冷蔵庫に移し始めた。

「父さんは?」

「昨日帰ってこれなかったから今日は早く帰ってくるって」

母さんが途中で手を止めて俺の顔をまじまじと見た。

「それより大地。鏡見てきたほうがいいわよ」

母さんはクスクスと笑った。

あおいも帰る間際そんなこと言っていたような。

眠くてあんまり覚えてないけど。

...なんだろう。

とりあえず洗面所に向かう。

洗面所の鏡を見て答え合わせになった。

俺の額には肉の文字。

右頬にはバカ。

左頬にはどんかん。

変なヒゲまで書かれていた。

鏡見てってこのことか!!

急いで顔を洗った。

幸いにも水性ペンで書かれていたのかすぐ落ちた。

くそー!!やられた!!油断しきっていた!!

顔を拭いてすぐに部屋に行き自分の机に置いてあったスマホを手に取った。

文句言ってやらねば!!

するとあおいからメッセージが入っていた。

「泊めてくれてありがとう。お母さんにも改めてお礼言っておいて。すごく楽しかった。大地の寝顔も見れたし」

と俺の落書きされた寝顔写真が送られていた。

くっそ!!すぐに文句を送ろうと思ったときに今日のあおいからの他のメッセージが目に入った。

「寝顔見たら殺す」

...そうだ。

朝、あおいの寝顔見たんだっけ。

その寝顔を思い出したらさっきまでの怒りが自然と消え去った。

俺も寝顔写真撮っておけばよかったかな。

...ダメか。

1人でふふっと笑いが込み上げる。

あおいにメッセージを送った。

「水性ペンで助かったよ」

するとすぐにあおいから返信があった。

「なんだ。もうバレちゃったんだ。次は油性で書くからね」

この理不尽大魔王め。

俺は改めて自分の部屋を見る。

昨日あおいが泊まって一緒にゲームしてたのがまるで嘘だったんじゃないかと思えるくらい静かだった。

スマホのメッセージを開く。

なんだかんだ楽しかったよ。

と打って送信しようと思った。

だけど指が止まった。

...恥ずかしい。

送ろうか送らないか1時間ぐらいスマホとにらめっこした。

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