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あおいだいち  作者: 佐々木 栞
第1章 出会い

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2/17

第2話 対決【小学生編1】

小学校1年生の春。

今年の桜は遅く咲いたみたいでまだ桜の花びらが地面に残っていた。

僕たちの間でポコモンが流行った。

ポコモンとは簡単に言うとモンスターを捕まえてストーリーを進めたり対戦したり交換できたりするゲーム。

クラスにはいくつかのグループがあった。

どのグループがポコモンで一番強いか決めようという話になった。

放課後、増田公園に集合となり僕は遅れてしまった。

到着するとすでに三連勝している人物がいた。

それが清水あおいさんだった。

さっそく清水さんと対戦することになった。

清水さんは控えめな態度をとっていたがどこか自信に満ちていた。

入学したばかりだというのに清水さんはもう有名人だった。

可愛い子で勉強もできて運動神経も抜群、友達付き合いも良いと評判だった。

僕はそんな清水さんとの対戦に緊張した。

三連勝もしてるとなればどんな強さなんだろうとも思った。

対戦の結果は僕の圧勝だった。

呆気なく終わった。

皆が「清水さんに勝っちゃうなんて前田くんすげー」と歓声を上げた。

皆の歓声に照れてしまった。

山口くんによく勝ったねと言われたので「思ったより楽勝だった」と答えた。

清水さんはわかりやすくうなだれていた。

高めにまとめられたポニーテールが揺れた。

大盛り上がりしてたところで町中に夕方のチャイムが鳴った。

ここらへんの地域の子はこのチャイムが鳴ったら帰る合図だった。

皆が帰り始めて僕も準備してたときに清水さんから声がかけられた。

「ちょっと待って。皆が帰った後時間ある?」

柔和な笑顔だった。

「ちょっとだけならあるけど」

「じゃあ待ってて」

なんだろうと思いながらも待った。

皆が帰った後清水さんと2人きりになった。

え?なにこの空気?変な空気だ。

「...かい」

小声すぎてよく聞き取れなかった。

「え?」

「もう一回勝負!!!」

再戦の申し出だった。

「それならまた」

「もう一回勝負!!!」

清水さんは譲らなかった。

...しぶしぶ了承して再戦した。

再戦の結果はまたも圧勝。

清水さんは今度はなりふり構わず、

「もう一回!!!」

と言ってきた。

「でも僕そろそろ帰らないと」

「もう一回!!!ラスト一回!!!」

...これは対戦したほうが早いな。

3戦目、圧勝。

膝をついてうなだれる清水さん。

めちゃくちゃ凹んでるなぁ...

なんて声をかけようか迷っていたら、

清水さんはすぐに立ち上がった。

どこか泣きそうになりながら、

「ぜっっっったいリベンジするから!!あたし相手に楽勝って言ったこと後悔させてやる!!このことは誰にも言うな!!!」

と捨てゼリフを残して帰っていった。

僕は呆気に取られてぽかーんとしてしまった。

クラスの優等生の裏の顔を見てしまった気分だった。


あの日から1週間ぐらいは経っただろうか。

僕は清水さんのリベンジ宣言をすっかり忘れていた。

授業が終わり帰ろうと下駄箱まで向かう。

靴箱から靴を取り出そうとしたら何か入っていた。

なんだろう?

不思議に思いながら手に取ると1通の封筒が入っていた。

そこには「はたしじょう」の文字。

はたしじょうってなに?理解できなかったが封筒の中身を見てみることにした。

「ほうかご、とりでやままちの、あらきこうえんにてまつ。このことはだれにもいわないように しみずあおい」

と書いてあった。

砦山町は隣町で荒木公園は遊具もあまりない地味な公園だった。

なんのことかわからなかったが清水さんからの手紙でピンときた。

こないだのポコモンの再戦かな?

普通に声をかけてくれればいいのに。

隣町まで行くの?と思いながらも僕は自転車で向かうことにした。

清水さんってちょっと変わってるのかも。

清水さんに対するイメージが変わりつつあった。



僕が公園に着くと清水さんは仁王立ちで待っていた。

清水さんの青い自転車が隣にあった。

僕が到着したのを見て、

「遅い!!!」とさっそく文句。

「...ごめん。手紙気づくのに遅れちゃって。でもこんなところまで来なくてもよかったんじゃない?」

「こんなところ誰にも見られたくないの。いいからさっさと勝負するわよ。準備して」

よくわからないと思いながらも対戦の準備をしていく。

「こないだと同じと思ったら大間違いよ!!吠え面かかせてやる!!」

ほえずらってなんだ?清水さんはいろんなことを知ってるなぁと感心していた。

いざ勝負。

どこが変わったのか楽しみだ。

...なんて思っていたのに。

決着はあっという間だった。

僕の圧勝。前回と変わらなかった。

「...嘘」と呟きうなだれる清水さん。

「ええっと...なんか...ごめん」

清水さんはかなりショックを受けていた。

なぜか僕が悪い気がしてきて謝ってしまう。

でも清水さんは挫けなかった。

「もう一回!!!」

そこから再戦。

清水さんが負ける。

再戦を何度も繰り返した。

10回目の対戦が終わると同時に夕方のチャイムが鳴った。

「もう一回!!!」

「...ええっと、今日はもう帰らなきゃ。家まで遠いし」

「うぅーー」

清水さんはとても悔しがっていた。

「ぜっっっっっっったいリベンジするから。次こそは必ず!!このことは誰にも言うな!!!」とまた捨てゼリフを言って自転車に乗って早々に帰って行った。

これ次もあるの?と疑問に思ったが僕も帰らなきゃいけないと自転車に乗り急いで帰った。

この後、1週間ごとに4回も同じことを繰り返すことになるとは当時の僕は予想もしてなかった。


6回目の再戦の日

今日も清水さんは負けていた。

悔しがっているのも変わらない。

ただ今日は伝えなきゃいけないことがあった。

毎回隣町まで来てた。

それで帰りが遅くなってしまっていた。

そのことを母さんから注意されたのだ。

そろそろ諦めてくれないかな。

それがダメでもせめて場所変更だけはしたい。

「...清水さん、あのさ」

「...なによ?」

負け続けでものすごく不機嫌になっていた。

怖気そうになったが勇気を出した。

「もうちょっと近くの公園にしない?ここまで来るのに時間がかかっちゃって」

「いや!誰かに見られたくない!!」

...困った。早速却下されてしまった。

近くに秘密基地みたいな場所があればいいんだけどそんな場所はないし。

うーん...。

清水さんの家に行くのは気まずいし。

かといって他の公園は学校の人と会う確率高いし...。

...結局1番提案したくない場所しか思いつかなかった。

「...じゃあ僕の家は?」

「...前田くんの家?」

露骨に嫌そうな反応をされた。

それはそうだ。クラスが一緒でも友達って訳でもない男子の家に誘われてるんだから。

でもここで屈したらこの公園に通うハメになっちゃう。

「僕の部屋があるからそこで遊ぼうよ」

「えぇー...」

「お菓子もいっぱい用意するしジュースも好きなだけ飲んでいいから」

「お菓子!?ジュース!?」

急に清水さんの目が輝き始めた。

...あんまりおうちで食べてないのかな?

ここはもうひと押し!

「僕のポコモンどれでも1匹好きなのあげるよ」

清水さんの目がさらに輝いた。

「...それならしょうがないわね。でも嫌だったらすぐにここに戻るからね」

ふぅー...

渋々でも了承を得られて心の中で一安心した。

「いつにする?」

「あたしが今週の土日は習い事入ってるから、来週の土曜日はどう?」

「大丈夫!じゃあ今日は早いけど帰ろう」

「そうね。遅くなっちゃうし」

清水さんが青い自転車に跨る。

ゆっくりと漕ぎ始めて帰って行った。

...来週の土曜日か...

母さんに言ってお菓子とジュースいっぱい用意してもらわなきゃ。

僕も自転車に乗って帰り道を走る。

これが僕の安寧と平和の日々を奪い去るきっかけになってしまうのだった。

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