第33話 意見を聞かれるだけ
翌日、正式な依頼書が届いた。
都市連合の紋章入り。
簡潔で、逃げ道の少ない文面。
『今後も、判断補助として同席を願いたい』
願いたい、か。
(ほぼ決定事項だな……)
指定された場所は、都市連合の別室。
会議室ではない。
応接でもない。
中間だ。
ミレイが、机を挟んで座っている。
「今回は、非公式ではありません」
「正式な依頼です」
逃げ場が一段減った。
「条件があります」
俺は、先に言った。
「どうぞ」
指を一本立てる。
「決定権を持たない」
「はい」
二本目。
「私の名前を、記録に残さない」
「可能です」
三本目。
「結果の責任は、一切負わない」
ミレイは、少しだけ目を細めた。
「それは」
「最初から、こちらの責任です」
即答。
悪くない。
「もう一つ」
俺は付け足した。
「理由を、求めないでください」
「……理由を?」
「結論だけ言います」
「説明はしません」
沈黙が落ちる。
ミレイは、しばらく俺を見てから言った。
「説明がなければ」
「納得しない者も出ます」
「でしょうね」
「それでも?」
「それでも」
俺は、肩をすくめる。
「説明を始めると」
「“正しさ”を証明することになります」
「証明できた瞬間」
「それは、道具になります」
ミレイは、ゆっくり息を吐いた。
「あなたは」
「利用されるのを嫌う」
「はい」
「でも、呼ばれる」
「面倒ですね」
ほんの少し、彼女が笑った。
「条件、受け入れます」
「記録は、私の責任で処理します」
書類に、署名はない。
握手もない。
ただ、視線が交わる。
「あなたは」
「切り札ではありません」
ミレイが言う。
「判断材料の一つです」
それなら、いい。
部屋を出る。
廊下は静かだ。
(完全に外部顧問ポジションだな……)
だが、役職はない。
権限もない。
ただ、呼ばれる。
建物を出ると、空が少し曇っていた。
学院の時より、空気が重い。
判断が、都市規模になったからだ。
俺は、ため息をついた。
「……意見を聞かれるだけ、か」
それでも。
聞かれた以上、
黙るわけにもいかない。
呼ばれなければ、何もしない。
呼ばれたら、結論だけ言う。
それが、今の立ち位置だ。
そして多分、
ここから先は――
**誰かが、必ず救われない。**
──第33話・完
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