第32話 責任の所在
都市連合の会議室は、学院よりも静かだった。
重厚な扉。
長い机。
壁には各都市の紋章。
空気は整っている。
だが、温度がない。
「レヴァントの件」
「再発の兆候あり」
ミレイが、淡々と報告する。
俺は、端の席に座っている。
正式な出席者ではない。
ただの同席。
「学院式の運用手順に問題がある可能性が高い」
「だが、証明はできない」
都市Aの代表が言う。
「証明できないなら」
「責任は問えない」
都市Bの代表が返す。
「だが、被害が出ればどうする?」
「まだ出ていない」
いつものやつだ。
(出てから動くんだよな……)
ミレイが、俺を見る。
「参考意見を」
全員の視線が向く。
俺は、報告書を閉じた。
「三都市のうち」
「一つは、今すぐ運用停止」
「一つは、補助線を修正」
「一つは、そのままで問題ありません」
部屋が静まる。
「根拠は?」
誰かが問う。
「運用の癖です」
「都市ごとに、魔力の扱いが違う」
「学院式は、それを前提にしていない」
それだけだ。
「どの都市を止める?」
「レヴァントです」
即答。
数人が顔をしかめる。
「理由は?」
「一番、戻せない位置まで進んでいるからです」
説明は、しない。
数字も、理論も出さない。
沈黙。
「止めれば」
都市Aの代表が言う。
「経済的損失が出る」
「止めなければ」
ミレイが返す。
「事故が出ます」
全員が、黙る。
俺は、椅子にもたれた。
これ以上は、言わない。
決めるのは、彼らだ。
数分後。
「……運用停止」
議長が言った。
「暫定措置とする」
誰も、俺の名前を出さない。
それが条件だった。
会議は終わる。
廊下に出ると、ミレイが隣に立った。
「あなたは」
「説明しませんね」
「求められていないので」
「不親切だと言われませんか」
「慣れてます」
彼女は、わずかに笑った。
「レヴァントは、反発します」
「でしょうね」
救われない側が、必ず出る。
窓の外を見る。
学院は遠い。
だが、“学院式”はもう都市を巻き込んでいる。
「……責任は、誰が取るんでしょうね」
俺は、ぼそりと呟く。
「私たちです」
ミレイは即答した。
それが、都市連合の役目らしい。
だが俺は知っている。
責任は、決して消えない。
形を変えて、
必ずどこかに積み上がる。
そしてその上に、
“正しい判断”は置かれるのだ。
──第32話・完
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




