氷と風。
ー怜燈視点ー
響を怒らせてしまった。
前みたいな奇跡は何度も起こらない。
起こらないことが一番だ。
だけど、可能性は捨てきれなかった。
勝手に行うのは良くないと思って、先に報告した。
軽く言ったつもりが、大事になってしまった。
なにがいけなかったのだろう……
考えているうちに夜が明けてしまった。
朝食の場は、今までで一番気まずい場だった。
早々に切り上げ俺は風に当たっていた。
「怜燈お兄ちゃん。なにしてるの?」
「……蓮華か。考え事。」
「隣座るね。」
そう言って蓮華は座った。
「今日は鈴音と一緒じゃないのか?」
「鈴音お姉ちゃんは響お姉ちゃんのところ。」
「そうか。」
「……私怜燈お兄ちゃんの気持ち、わかるよ。」
「急にどうした?」
「昨日改めて思ったの。
育ちが違うんだなって。」
突然の蓮華の言葉は衝撃だった。
「そんなことはないだろ。」
「ううん。そんなことあるよ。
今までは上手くやってたみたいだけど、今回は難しいと思う。」
蓮華は続けた。
「怜燈お兄ちゃんの考えに納得できたのは、
昨日の段階で、凪お兄ちゃんと私だけだと思う。
気づいてた?」
「……全然。昨日は頭に血が昇って、周りのこと何も見えなかった。」
「育ちが違うもの、仕方ないわ。」
蓮華は言った。
「私達は神族として育ったわ。
だけど、響お姉ちゃん達は神族でありながら人として育った。
考えの癖が違うわ。」
「随分と詳しいんだな。」
「考える時間はたくさんあったから。」
蓮華の声は、とても冷たかった。
「蓮華、俺は……間違ったのか?」
「……正しいけど、正解じゃない。かな?」
「蓮華なら正解がわかるのか?」
「わからない。
だって私も、最初から心が鈍いのだもの。
私は考えを言っただけ。本当のことは知らない。
じゃあ私は遊んでくる!」
蓮華はそう言い残すと、さっさと去っていってしまった。
私も鈍いか……
蓮華の言葉が、頭から離れなかった。
ー響視点ー
「響姉。泣かないで……」
岩の陰で涼んでいると、鈴音に声をかけられた。
「鈴音。大丈夫、泣いてないわ。
どうしたの?お腹空いた?」
「ううん。響姉とお話しにきたの。」
「なんのお話にきたの?」
「制約のこと。」
鈴音も不安なのだろう。
そう思って鈴音を抱きしめた。
「響姉、私は大丈夫。
大丈夫じゃないのは響姉でしょ?」
私の心を見透かしたように言われた。
「私は大丈夫よ。」
「でも、苦しいんでしょ?優朝が言ってた。」
「……優朝が……」
「優朝を怒っちゃだめだよ!私が無理言って頼んだの。」
「別に怒らないわ。
でも、ようやくはっきりしたわ。」
「え?」
怒っているわけでも、悲しいわけでもなかった。
ただ、理解して欲しかっただけだった。
「鈴音、ありがとう。なんかすっきりしたわ!」
「良かった?」
「良かった!」
私は鈴音を連れて、家へと向かったのだった。
「紫音!聞いてちょうだい!」
「姉様、急に大声出してどうしたの?」
「少し協力して欲しくて……」
私はある作戦を計画したのだ。




