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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
97/116

対立。

ー響視点ー

怜燈兄さんの発言のお陰で、空気が一気に重くなった。

最初に、耳飾り用の穴を開けられるかと聞かれた時は、

こうなるとは思わなかった。

怜燈兄さんはきっと、皆のことをまだ子供だと思ってる。

自分も大して変わらないのに……

兄さんの言った意味は、説明されなくとも理解できた。

どうして、私達を守るために自分を犠牲にしようとするの。

私達は、望んでない。


「怜燈兄さん。

怜燈兄さんがそんな制約をかけるなら、

私は兄さんが死んだら、自分も死ぬよう神誓約をするわ。」

「響!何言ってるんだ!そんなことしてはいけない!」

「どうして?

兄さんだって同じことしようとしてるのに、私を止める権利はないわ!」

思わず言ってしまった。

「それとこれとは話が違う!

俺は皆を傷つけないために制約するんだ。

響のすることとは違うんだ。」

「何も違わないわ!

兄さんは私達の心なら傷ついても構わないって言ってるの?」

「そんなことは言ってない!」

「じゃあどうして、どうして、そんなこと言うの?」

「……未来がどうなるかなんてわからないだろ。

だけど俺は、皆に生きていて欲しい。」

どうして兄さんは、わからないのだろう。

もう答えは出ているのに。

心が薄れている。

なんて言ったのが嘘のように、私の心は鮮明だった。

「怜燈は、どうしてわからないの!

怜燈がそう思うように、私達も怜燈のことが大事なの!」

「そんなのわかってる!

だけど、皆を守るためには仕方ないんだ!」

「わかってない!」

私達の言い合いは、徐々に苛烈になっていった。

「怜燈兄さん!響姉さん!声が大きい!

優朝が苦しんでる!」

時雨が私達の間に割り込んだ。

「あ、優朝。ごめんなさい!」

「……優朝ごめん。」

「二人とも熱くなりすぎです。

時間を考えてください。」

「姉様、水でも飲んだ方がいいわ。」

時雨と紫音にそう言われてしまった。

「怜燈兄さん。今日はもう寝ましょう。

今は皆、考える時間が必要です。」

時雨に言われ、寝床に入った。

だけど、眠れなかった。


怜燈兄さんは、何も言わず出て行ってしまった。

怒ったのかもしれない。

だけど、私だって怒っている。

わかっているのに、受け入れたくなかった。


ー紫音視点ー

いつも穏やかな二人が、珍しく喧嘩をした。

私は止めることができなかった。

怜燈兄さんは正しい。

だけど、私の気持ちは姉様に近いのだ。

両親が消えて、怜燈兄さんと出会ってから八年。

他人とはいえない時間を共に過ごしてきた。

両親といた時間より長い時間を過ごした。

私達の気持ちも考えて欲しかった……

私はどうするべきなんだろうか?

考えても、考えても答えが出ることはなかった。


ー凪視点ー

怜燈兄さんの言ってることは、その通りだと思った。

自分が暴走した時に、俺達の手が汚れないように。

俺が同じ立場でもそうすると思う。

自分の意識しないところで、大切な人を傷つけるなんて、

考えただけでもぞっとする。

最悪を考えるのは、悪いことじゃない。

起こらないかもしれないのに……

どうして悪い方しか考えられないんだろうか。

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