制約。
ー蓮華視点ー
「蓮華!こんな感じの、氷細工作れたりするか?」
ある昼下がり、怜燈お兄ちゃんに聞かれた。
「絵、ちゃんと描けたのね……」
「一応な。てか蓮華、俺のことなんだと思ってるんだよ……」
「お兄様?」
可愛く見えるように首を傾げた。
「そうだな……(可愛い。)作れそうか?」
「できると思う。溶けないやつ?」
「そう!じゃあ頼んだ!」
怜燈お兄ちゃんから頼まれたのは、ピアスの作成だった。
装飾品を頼まれたのは何回かあったけど、
ここまで指定されたのは初めてだった。
かなり難しそうだけど、頑張ろう。
ー優夜視点ー
夜、珍しく怜燈お兄ちゃんが家にいた。
「怜燈お兄ちゃん珍しいね。なにかあるの?」
「そうだ。」
「「なになに?」」
「ひ・み・つ」
優朝と聞いたけど教えてくれなかった。
でもその答えはすぐ知ることとなった。
「皆聞いてくれて。
ここに十人分の耳飾りがある。」
そう言って、怜燈お兄ちゃんは十個の耳飾りを並べた。
「怜燈兄さん。耳飾りって、誰も穴開いてませんよ?」
時雨兄さんが聞くと、
「大丈夫だ。響が今から開けてくれる。」
「「え……」」
凪兄さんと優朝が同時に動き始めた。
「怜燈兄さん。俺、先端恐怖症なんだ。」
「怜燈お兄ちゃん。俺用事思い出した。」
そういえば、二人とも痛いの苦手だったなって思っていると、
「大丈夫だ。多分痛くない。
それと、これはただの耳飾りじゃなくて、制約を込めるための物なんだ。」
「せいやく?」
紫音お姉ちゃんが聞き返した。
「そう。制約だ。
俺達は皆、能力の制御ができない部分があるだろ?
それを抑えるためにするんだ。」
「それがあれば、記憶流れ込んでこないの?」
思わずそう聞くと、
「そうだ。意思のない能力の発動を抑えれる。」
その言葉は、とても魅力的だった。
無理矢理流れ込んでくる感覚には、辟易していた。
「俺付けたい!」
「わかった。じゃあ説明するな。」
怜燈お兄ちゃんは、制約について教えてくれた。
俺達ができる誓いは大きく分けて四種類ある。
ただの口約束。
制約。
誓約。
神誓約だ。
一つ目の口約束は、誰でもできる約束だな。
簡単に破れるが、信頼を失くすからできるだけ破らないことをおすすめする。
で、大事なのは残りの三つだ。
俺達が今回行うのは、二つ目の制約だ。
これは、自分の気を媒介に能力を制限する誓いだ。
制約をすれば、自然と力を抑えられる。
生活は今よりしやすくなるはずだ。
「怜燈兄さん、残りの二つは?」
「それはまた必要な時に教えてやる。今日はここまで。」
凪お兄ちゃんの質問に怜燈お兄ちゃんは答えなかった。
「この耳飾りは、蓮華が頑張って作ってくれたものだ。
皆言いたいこと、わかるよな?」
怜燈お兄ちゃんは、笑顔で皆を見渡した。
優朝が悲しそうな目で助けを求めてきた。
「優朝。妹の頑張りを無下にはできないから……諦めよ?」
「……う、うん。」
優朝は渋々頷いた。
「怜燈兄さん。どうしてこの形にしたの?」
桜花姉さんが、怜燈兄さんに聞いていた。
確かに僕も不思議だった。
この耳飾りは、三つの球が繋がっていて、その下に飾りが付いているのだ。
媒体に必要なのが一つなら、この形は変だった。
「桜花、いいところに気づいたな。
この耳飾りには、最大四つの誓いを入れられる。」
「どうして?」
「今回入れようと思ったのは、能力制御の制約。
それと、家族に危害を加えない制約を、俺のに入れたかったんだ。」
怜燈お兄ちゃんは、突然そう言った。
驚く俺達を他所に、怜燈お兄ちゃんは続けた。
「前に皆を襲いかけただろ?
次同じことがあった時、上手くいく保証なんてないからな、
念のためだよ。
それと、耳飾りは俺の好みだよ。
ちゃんと考えたから、似合うとは思うぞ!」
怜燈お兄ちゃんは、誤魔化すように笑い飛ばした。
確かにこの先どうなるかなんて、わからなかった。
だけど怜燈お兄ちゃんは失う可能性を、自分で用意しているように見えた。
……そんな未来、考えたくもなかった。
ー怜燈視点ー
花の国から出てから、生きやすさについて悩むようになった。
周りの影響を受けやすい優朝と優夜。
突然暴走するかもしれない俺と紫音。
壊れるまで無茶をする、響と凪。
この世界は俺達には生きづらいのだ。
人と違う能力があるだけなのに……
暴走したあの日、俺は見えていた。
なのに、身体を制御できなかった。
あと少し遅ければ、響達の事を八つ裂きにしていたかもしれなかった。
自らの手で、家族を殺めるなんて……
想像しただけで震えが止まらなくなった。
悩んだ末に、能力を封じるという結論に至った。
そうすれば、双子は、
感情に弄ばれることも、記憶に飲まれることもなくなる。
急な別れに怯えることもなくなるはずだ。
聖燈兄さんが、次も助けてくれるなんてことは期待できない。
今度は、俺自身で制御しなければ……




