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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
93/117

歩き旅。

ー桜花視点ー

「鈴音ちゃん!元気でね!!」

花の国を出る直前、そんな声が聞こえた気がした。

「桜花姉!どうしたの?」

鈴音が首を傾げていた。

「ううん。なんでもない。」

私達は鈴音の手を引いて、皆を追いかけるのだった。


「桜花。せっかくお花見るって約束してたのに、ごめんな。」

怜燈兄さんが謝ってきた。

「ちゃんと見れたからいいの。

それに見たかったら、自分で作れる。

それより……」

そう言って荷車の上に座る、時雨兄さんと凪を見た。

「時雨兄さんと凪兄さん、食べ過ぎ。

お店の人も、びっくりしてた。」

「ごめんって、美味しくてつい。」

「ごめんよ、あと三十分待って、そしたら動く。」

二人は平謝りをしていた。

「じゃあ俺先に村を見てくる!

それまで休んでな!」

「「俺(僕)達も行く!」」

そう言って怜燈兄さんは双子を連れて歩いていった。


「二人共これどうぞ!胃薬よ!」

紫音姉さんが、すごい上機嫌で薬と水を渡していた。

「「ありがとう!」」

そう言う二人を、紫音姉さんが楽しそうに見つめていた。

その横では、鈴音が二人を憐れむような目で見ていた。


「……苦……紫、音さん?これなに?」

時雨兄さんが、真っ青な顔で聞いていた。

凪兄さんは、蹲って言葉すら出ないようだった。

「うん?なにって普通の胃薬よ!

さっき花の国で買ったの!良く効くそうよ!」

紫音姉さんは、見たことないくらい笑顔だった。

「……そ、そそ、そっか。よく、聞くわけだ。

もう無理、凪水くれ。」

「……」

凪兄さんは、ぴくりとも動かなくなった……


「全く、紫音!二人をいじめちゃだめよ!

ほら、時雨、凪、砂糖菓子よ。」

「つい。ていうか、姉様、それ本当に砂糖菓子?」

「え?」

「辛!!!」「……痛い!」

二人がそんな声をあげた。

「……響姉。それ唐辛子飴だよ。砂糖菓子はこっちだよ。」

鈴音が困ったように言っていた。

「時雨兄、凪兄。水どうぞ。」

渡された水を、二人は凄い勢いで飲み干した。

「「おかわり!」」

「どうぞ。蓮華、氷作って!」

「うん!……はい!」

「ありがとう!」

そう言って、二人に氷もあげていた。


「俺、しばらく薬とお菓子はいいかな……」

「俺も……」

凪兄さんに同意するように、時雨兄さんが呟いていた。


「響姉さん。姉さんはそのお菓子、どうするつもりだったの?」

「私のおやつに買ったんだけど、間違えちゃって……」

響姉さんは、気まずそうに顔を逸らしていた。

「「「…………」」」

鈴音と蓮華と顔を見合わせて、苦笑いするしかなかった。


「おーい!皆!村あったぞ!商売してもいいって!」

怜燈兄さんが優朝と優夜を連れて帰ってきた。

「じゃあ行こう!って何かあった?」

「「「「なにも!」」」」

時雨兄達が、声を揃えて叫んでいた。

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