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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
89/102

選別。

ー桜花視点ー

「樹に、神桜樹に選ばれました。」

遥香さんはそう言った。

選ばれた?

どうして、響姉さんが……


「……遥香さん。……どうして、私、なのですか?

私は、この国の人間では、ありません。」

姉さんの声は、途切れ途切れだった。

「皆さんは、花選びをされましたよね?」

「はい。」

「安心してください。花選びはただの占いです。」

「「え?」」

「ただの占いです。ですが、よく当たりますよ。」

遥香さんは言った。

「じゃあ、花選びは関係ないのではないですか?」

「いえ、関係はあります。

皆さんが手を当てた鉢。

あの中に入ってるのは土ではなく、様々な植物の種です。

鉢は触った人の気を増幅し、種に伝えます。

その気に感応し、種が一気に育つ。

私はただ、その花の名前を言っただけです。」

「……遥香さん。本当に合ってます?」

「合っていますよ?

その種の中には、神桜樹の種もあるのですから。」

遥香さんは、そう言って続けた。

「神桜樹は、生命力の高い者を好みます。

ですから種も、生命力が高い気に反応するのです。

響さんから出現した桜は、今まで見た中で一番大きいものでした。

あれほど大きければ、百年は保つかも知れません。」

「……生命力。だから私なんですね。

では、何故あの時誰にも言うなと言われたのですか?

遥香さんにとっては、良いことではないのですか?」

姉さんは妙に納得したような顔をして、遥香さんに尋ねていた。


「さぁ、何故でしょう。

わかりませんね。

気が乗らなかった。

そう言うことにしておいてください。

私はこれで失礼いたします。」

そう言い残して、遥香さんは去っていった。

「姉さん?」

「うん?桜花どうしたの?」

「えっと、大丈夫?」

「えぇ、大丈夫よ。

私は気にしてないわ。だけど、ここにはもういない方が良さそうね。

怜燈兄さん起こしてくるわ!」

「私も行く。」

私達は、怜燈兄さんの部屋に向かった。


「兄さん。怜燈兄さん起きてる?」

響姉さんが、怜燈兄さん達の部屋の扉を叩いた。

「……起きてる。どうした?」

そう答えた兄さんの声は、どこかげっそりしていた。

「えっと、兄さん大丈夫?」

「大丈夫。ちょっと今、扉開けれないから、自分で開けて入ってくれ。

鍵は開けた。」

扉を開けると、狐姿の怜燈兄さんが双子の下敷きになっていた。

「兄さん、何があったの?」

響姉さんが問うと、

「今日は双子の寝つきがやけに悪くて、こっちの姿であやしてたんだ。

もふもふだろ?」

そう言った怜燈兄さんは、得意気だった。

「怜燈兄さんは、どうして敷物になってるの?」

「桜花も触るか?」

「いい。で、どうして?」

「響、桜花どうして機嫌悪いんだ?」

「寝起きよ。いつもこんな感じよ。」

怜燈兄さんと響姉さんがこそこそ話していた。

「いやー、最初は抱き枕だったんだけど、二人とも寝相悪くて、

気づいた時には下敷きになったんだ……」

「……私も、寝る。」

「あぁ。おやすみ。」

怜燈兄さんを枕に、私は再び眠りに落ちた。


ー響視点ー

遥香さんの話を最後まで聞くと、不思議と怖さは減っていった。

理にかなってる。

そう思っただけだった。


「兄さん、重くない?」

「三人は少し重い……」

兄さんと少し談笑した後、私は切り出した。

「兄さん。話聞こえてた?」

「……どう答えて欲しい?」

兄さんは、金色の真っ直ぐな視線を私の向けた。

「正直に答えて欲しい。」

「わかった。聞こえてたよ。」

兄さんはそう言った。

「全部?」

「全部。」

「ねぇ、兄さん聞いてくれる?」

「なにを?」

「全部。」

今日は全てを話したい気分だった。

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