夜更けの来客。
ー響視点ー
宿を探しに行くと、
「お前さん説明聞いてなかったろ?旅人は宿が決められてるんだ。
入り口で鍵もらったろ?」
宿のおじさんに笑われた。
言われた場所に行くと、二人一部屋の部屋が割り振られていた。
「……どう分けましょう?」
困ったように、時雨が言ってきた。
「さっきの二人組にする?」
そう提案すると、
「いやー、凪を蓮華と組ませるのは、
不安?というか頼りないというか……」
「え?!時雨なんで?」
「だって、凪。こないだ蜘蛛見て叫んでただろ。
安心して任せるは、どう頑張っても無理だろ?」
「蜘蛛は仕方ないだろ!足が八本バラバラに動くんだ!
見てると、うわってなるだろ?」
「そんなことないわよ!小さくてとても可愛いわ!」
「……ごめん。紫音、ちょっとよくわからない……」
「そう?」
三人がそんなことを言うので、色々揉めた結果、
怜燈兄さんが、優朝、優夜と、
時雨が凪と、
紫音が、鈴音、蓮華と寝ることになった。
その日は皆疲れていたのか、寝るのが早かった。
コンコンコン。
扉を叩く音で目が覚めた。
コンコンコン。
……コンコンコン。
いつまで経っても、音は止まなかった。
「桜花、桜花起きて。」
桜花を起こすと、
「……姉さん。夕飯はさっき食べたわ。」
寝ぼけた声でそう返された。
「違うわ!扉の前に誰かいるの!」
そう言うと、桜花は飛び起きた。
「響姉さん。なんで起こしたの、私お化けは好きじゃない……」
「大丈夫。多分実体はあるわ。」
会話をしている間も、扉を叩く音は続いていた。
仕方ない。
覚悟を決めて扉を開けると、目の前には神殿の部屋にいた女の人が立っていた。
「……夜分遅くに失礼しました。
どうしてもお話ししたいことがありまして、
できれば、ナイフを首から離してはいただけませんか?」
抑揚のない声でそう言われた。
「……わかりました。ですが、怪しい動きをすれば容赦しません。」
「はい。大丈夫です。
私が怪しければ、すぐに殺してくださって構いません。」
女の人はそう言った。
私は女の人を部屋に招き入れた。
「入れてくださり、ありがとうございます。
お陰で、不審者にならずに済みました。」
「……響姉さん、この人不審者の意味知らないのかな?」
桜花が耳打ちしてきた。
「そうね。
……えっと、貴女は何故ここ来たんですか?」
「私は、貴女にこの国から出るよう言いに来ました。」
女の人は平然と言い放った。
「……?あ、自己紹介していませんね。
私は、神桜遥香と申します。
花の国での、今代巫女補佐をしております。」
彼女はそう名乗った。
「巫女補佐?」
「はい。巫女補佐です。
私は、今代の巫女の血縁にあたります。」
この脈絡のない感じ、私には身近に覚えがあった。
「遥香さん。貴女どこか抜けてるって言われませんか?」
「……お恥ずかしながら、その通りです。
どうして、お分かりになったのですか?」
「似た子を知っているので。」
「そうですか。貴女はなんだか私の姉に似ていますね。」
そう言って遥香さんは初めて笑顔を見せた。
遥香さんの笑顔はまだ、幼い少女のようだった。




