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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
86/101

生命樹。

ー蓮華視点ー

怜燈お兄ちゃんが「菊」

響お姉ちゃんが「栄寿」

時雨お兄ちゃんが「百日草」

凪お兄ちゃんが「木蓮」

紫音お姉ちゃんが「馬酔木」

桜花お姉ちゃんが「菊咲栴檀草」

鈴音お姉ちゃんが「彗星蘭」

優朝が「蝦夷菊」

優夜が「苺」

私が「大待雪草」

共通点を探したけど、わからなかった。

それに、知らない名前の花もたくさんあった。


急に咲いて散る花。

様子がおかしかった響姉さんと、桜花姉さん。

「花選び」とは一体なんなのだろう。

私達はなにも選んでいないはず。

じゃあ、選ばれた……?

その瞬間、ゾクっ。

背筋に悪寒が走った。

「グラシエ様。どうかお守りください。」

私は私の神に祈るしかできなかった。


ーグラシエ視点ー

「……うん?」

「グラシエ。どうかしたのか?」

「いえ。ただの祈りです。」

スパーン!

「痛、お母様!なにをなさるのですか?!」

「この馬鹿息子!なにがただの祈りだ!

私達に届くということは、信仰心の強さの証!無視するんじゃない!」

「え、ちが……」

「言い訳するんじゃない!」

「お母様!待ってください!蓮華です!月の王についていった眷属です!」

「あ、あぁ。なるほど、そりゃ強いわけだ。」

「そうです、お母様。最近手が出るの速くありませんか?」

「お前が以前やらかしたからだよ。」

「いや、それにもちゃんとした訳が……」

「言い訳するんじゃない!」

あの出来事以降、俺は母であるアウラの元に通うようになった。

と言っても、強制的に呼び出されているだけだ。

「グラシエ様。アウラ様はおっしゃることはありませんが、

共に過ごせなかった時間を、埋めようしておられるのですよ。

グラシエ様がくる日は、自ら菓子を焼くほどです。」

カタルシスがそう教えてくれた。

そんな話を聞くと、思わず頬が緩むのだった。


「で、狐君達は花の国だろ?なんで急に祈りなんか。」

「少々雲行きが怪しいようで。」

「……あー、あれか。」

「あれと申しますと?」

「なんだっけな?あのでかい桜。」

「アウラ様。神桜樹のことでしょうか?」

クロニクルが助け船を出した。

「そうそう!神桜樹!クレアシオンが人間のために創った生命樹だ!」

「そんなものありましたっけ?」

俺が聞くと、

「あったよ!グラシエも最近忘れっぽいな!」

母は豪快に笑った。

そして、神桜樹について語ってくれた。

「神桜樹は、生命を送り出すポンプの役割が備わった木だ。

ずっと前に、クレアシオンのお気に入りが、

土地を回復させようと頑張っていたのを見て、与えたものだな。」

「そんな木があるんですね。

で、それがどう話と繋がるのですか?」

「簡単な話さ。木には神と違って寿命がある。永遠には生きられない。」

「では、あの木はどうしてまだ生きているのですか?」

「代わりのポンプを用意すればいい。

ようは、人柱だ。

代わりの命で、木を生かしている。

さっさと代替わりさせればいいのに、愚かなものよ。」

母は呆れたように語った。

「まぁ、決めるのは人間だ。

あやつらが、良いならば妾はなにも言わぬ。」

その口調は、神としてのものに戻っていた。

「そうですね。」

母は人間のように見えても神なのだ。

そして俺も同じだ。

なにも感じないのだ……

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