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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
85/96

桜。

ー桜花視点ー

響姉さんと進んだ先には、一人の女の人が居た。

ただ、さっきの白い女の人とは違って、髪が若草色だった。

「こちらへどうぞ。」

女の人に、部屋の中央に案内された。

「こちらの鉢に手を当ててください。」

そう言われて手を当てると、

あっという間に花が咲き散っていった。

「え……」

その声に、横を見ると、

「下がってください!」

後ろからいきなり引っ張られた。

目の前には、大きな桜の木と小さな花が咲いていた。

「なにこれ……」

戸惑う響姉さんに、女の人は言った。

「貴方は栄寿(えいじゅ)です。桜は咲きませんでした。

何を聞かれても、栄寿と答えてください。」

話してる間に、桜は散り消えていった。


「貴方は……」

「「菊咲栴檀草(キクザキセンダングサ)」」

同時に答えると、

「わかったのなら良かったです。

では、早くここから出て行ってください。

大きいお嬢さん。絶対に言ってはいけませんよ。」

種だけ押し付けられ、追い出された。

外に出ると、心配そうに紫音姉さんと時雨兄さんが駆け寄ってきた。

「姉様!桜花!大丈夫?何もされなかった?」

「響姉さん!桜花!大丈夫ですか?」

「え、えぇ。」

「大丈夫だよ。」

答えを聞くと、二人はほっとしたようだった。


「ねぇ。響お姉ちゃん。桜花お姉ちゃん。二人はなんの花だったの?」

いきなり蓮華に聞かれた。

「私は「栄寿」だったわ。

桜花は「菊咲栴檀草」だったわよね?」

「うん。」

響姉さんは、さらっと答えた。

「桜花。さっきのことは二人の秘密よ。」

こっそり耳打ちされた。

「……なるほど。ありがとう。」

蓮華はそれ以上聞いてこなかった。


「……さぁ!皆早く観光しようか!」

空気を切り替えるかのように、怜燈兄さんが声をあげた。

「そうね!」

「じゃあ、神桜樹から行こうか!」

響姉さんも、いつもの笑顔に戻っていた。

私達は、怜燈兄さんに連れられて神桜樹の近くまで行くことができた。


「あれ?ここまでしかいけなくなってる。」

怜燈兄さんは、首を傾げていた。

「かなり近いわよ?」

紫音姉さんが聞くと、

「前は、木に触れるくらいまで行くことができたんだ。」

「そうなの?でも、綺麗に見えるし、いいんじゃない?」

「……そうだな!」



足りぬ!足りぬぞ!

新しい贄はまだか?!

……神桜樹だ。

間違いない。

神桜樹が、そう言っていた。

足りぬ!喰いたい!

神桜樹は叫び続けていた。

しばらく続いた声は、次第に静かになっていった。

「……花!桜花!」

「!あっ、紫音姉さん。どうしたの?」

「どうしたのって、桜花。貴方顔色が悪いわ。

熱があるんじゃないの?」

そう言われ、額に手を当てられた。

「熱はないわね。疲れが溜まったのかしら?

怜燈兄さん!今日はもう宿に帰りましょう!」

「そうだな。戻ろう。」

「さぁ!桜花のって!姉さんがおんぶしてあげるわ!」

紫音姉さんが目の前に、しゃがんでくれた。

「……紫音姉さん。私赤ちゃんじゃないよ。」

「赤ちゃんじゃなくてもいいのよ。私がしたいの。

さぁ、いらっしゃい!」

「……ありがとう。」

ゆっくりと紫音姉さんの肩に掴まると、ふわっと抱え上げられた。

「桜花。帰りましょ。」

姉さんの背中は、昔より小さく感じた。

「紫音姉さん。小さい?」

「……桜花よりは大きいわよ!余計なこと言うと落としちゃうわよ!」

「いや。」

今度はしっかりと掴まった。


「紫音。代わろうか?」

「凪。うるさい。黙って。」

凪兄さんは、そう言われて蹴られていた。

紫音姉さんの背中は、暖かかった。

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