記憶の渦。
ー優夜視点ー
神殿の中は、奇妙な記憶で溢れていた。
甘ったるいくらい幸せに見える記憶。
泣き叫び嫌がる記憶。
相対する様々な記憶が、流れ込んできた。
たくさんの情報が処理できず、気持ち悪くなってしまった。
怜燈お兄ちゃんは俺を連れて、出ようとしてくれたけど、
神殿の女性は許してくれなかった。
「ごめんな。もう少し我慢してくれ。」
怜燈お兄ちゃんは僕を抱えて、扉の奥へと進んだ。
扉の先も薄暗く、怜燈お兄ちゃんの足元すらはっきり見えないくらいだった。
「嫌です!私はなりません!」
「お願いです!姉さんを連れて行かないで!」
「おぉ!我が家から巫女の誕生だ!」
色んな記憶が流れ込んできた。
流れ込む記憶は、進めば進むほど強くなっていった。
「お兄ちゃん。もう無理……」
口を押さえて呟くと、
「ごめんな。できるだけ早く終わらせよう。」
そう言って足を速めた。
進んだ先には扉があった。
扉の前には、また白い服を着た女の人が立っていた。
「こちらへどうぞ。」
女の人は扉を開けた。
「では、こちらの鉢に手を当ててください。」
部屋の中央に連れていかれ、一つの鉢を渡された。
「優夜。立てるか?」
怜燈お兄ちゃんの手を借りながら、鉢に手を当てると、
鉢がゆっくりと輝き、小さな芽が生えてきた。
芽はみるみるうちに大きくなり、花が咲き、枯れていった。
女の人は、枯れた花から種を取り出し渡してきた。
「貴方は苺。」
「貴方は菊。」
「出口はこの先です。足元お気をつけて。」
そう言われ、追い出されるように外に出された。
外は、空気が澄んでいた。
「優夜、大丈夫か?」
「……大分ましになった。」
怜燈お兄ちゃんは、ほっとしたようだった。
しばらく待つと、今度は時雨と優朝が出てきた。
「なんて言われた?」
「俺は、「蝦夷菊」って言われた。
時雨お兄ちゃんは確か、「百日草」だったよね?」
「あぁ。一体なんだったんだ?」
「花選びだったか?俺達は何を選んだんだ?」
怜燈お兄ちゃんも時雨兄さんも首を傾げていた。
次に出てきたのは、凪お兄ちゃんと蓮華だった。
「時雨!「木蓮!」同じ?」
「凪、主語を言え。俺は、百日草だ。」
「違うのか……」
凪お兄ちゃんは少ししょんぼりしていた。
「蓮華はなんだったんだ?」
怜燈お兄ちゃんが聞くと、
「「大待雪草」って言われたわ。」
そう言って蓮華は、考え込むように黙ってしまった。
その後出てきた、紫音お姉ちゃんと鈴音お姉ちゃんのも聞くと、
紫音お姉ちゃんが、「馬酔木」
鈴音お姉ちゃんが、「彗星蘭」
と皆違った。
「後は、響お姉ちゃんと桜花お姉ちゃんだけだね。」
そんな会話をしていた。
しかし、二人はなかなか出てこなかった。
不穏な空気が流れ始めた。
「怜燈兄さん!戻りましょう!」
「待て時雨。多分もう少しすれば出てくる。」
怜燈お兄ちゃんの言葉通り、しばらくして二人は出てきた。
だけど、二人はどこか疲れたような顔をしていた。




