神桜樹。
ー紫音視点ー
「入国された代表者の方は、こちらに集まってくださーい!」
「あ、行かなくちゃ。」
入ってすぐに、私達は呼び止められた。
しばらくして、怜燈兄さんが帰ってきた。
「どうしたの?」
思わず尋ねると、
「この国にいる、二十五歳以下の者は「花選び」に参加しろってさ。
旅人も例外じゃないらしい。」
「「花選び」ですか?」
時雨が首を傾げていた。
「えっと、なんか神殿に行って、花を選ぶらしい。」
怜燈兄さんも、あまり理解しているようではなかった。
「前来た時は、こんな事言われなかったんだけどな……」
ただ不思議そうに、首を傾げるばかりだった。
「とりあえず、神殿に行ってみましょう?」
姉様がそう提案した。
花の国は、人で賑わっていた。
「時雨、お団子ある!」
「あとでな。」
さっそく食べ物に釣られる凪を、時雨が止めていた。
「ねぇ、怜燈兄さん。あれはなに?」
蓮華がなにかを指さしていた。
「あれは神桜樹だな。花の国を象徴する大樹だよ。」
蓮華に釣られ前を向くと、目の前には大きな桜が聳え立っていた。
「……大きい。」
思わず呟くと、
「神世代からある樹らしいわ。」
いつの間にか、案内書を手に入れた姉様が説明してくれた。
「この国の全ての生命は、神桜樹を中心に回っているんですって。
どの季節でも、あらゆる花が咲く国。それが花の国の由来だそうよ!」
姉様は朗らかに笑った。
「地図で見ると大きいのがよくわかるわ。
この国の半分が湖と、神桜樹なのね。」
「すごいわよね!」
「そうね!」
「そうそう。神桜樹を囲む湖も有名なのよ!
生桜湖って言って、怪我によく効くそうよ!すごく気になるわ!」
「響姉さん!実は美容にもいいらしいよ!」
優夜が、こっそり耳打ちをしていた。
「それは楽しみね!まずは優夜で試してみようかしら?」
「いや、僕はいいよ……響姉さんこそ、ね!」
そう言った逃げていった。
「全く……」
姉様は呆れたように笑っていた。
姉様が元気になって良かった。
そんなことを考えていると、突然袖を引っ張られた。
桜花だ。
「紫音姉さん。あの木泣いてる。」
「え?」
突然のことに、理解が追いつかなかった。
「木が苦しいって、もう嫌って泣いてる。」
私の困惑など気にする様子もなく、桜花は続けた。
泣いている。
そう言われても、私の目に映るのは美しい神桜樹なのだ。
一体桜花には何が見えているのだろうか……




