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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
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王の在処。

ー怜燈視点ー

ただ話をしただけなのに、全員が跪いていた。

「俺はこうしたい。」

そう言いたかっただけなのに、小難しい言葉になってしまった。

六花にいたっては、先程の口の悪さが嘘のように静かになって、

気味が悪かった。

「聞いてる?」

「「「「はい!」」」」

軽く確認しただけなのに、かなり緊迫した返事が返ってきた。

陽依が言いかけたことも気になるけど、

六花の言ったことの方が、気にかかった。

人間を消す。

間違いではないけど、意味は違う。

でもそれは、アウラ様との約束で言えなかった。


「提案だ。コノハ様を安全に復活させるために旅をする。

これならいいか?」

そう聞くと、

「なんて崇高な志!流石でございます!」

「怜燈が望むなら、俺は従います。」

「そう言うことを言ってるわけじゃ……」

「……」

陽依と海狐の回答は予想通りだった。

けれど、志彗と六花は何か言いた気だった。

思わず首を捻ると、

「怜燈!そろそろ圧をかけるのやめてくれ!

止めてって頼んだのは俺だけど、もう限界だ!」

海狐がそう叫んだ。

「……そんなつもりはなかったけど。」

「その喋り方もだけど、圧がすごい。もう少し緩い感じにして!」

「……ごめん。志彗、六花。二人の意見を聞きたいです。

聞かせてくれませんか?」


「私は、貴方が寿命をもたない存在であることは、

先代を見ていたので知っているつもりです。

そして、残される辛さも……

怜燈様の家族と居たいと言うお気持ちも、理解はできるのです。

ですが、同族ではない家族はいつ失うか予想ができません。

私はただ、怜燈様に傷ついて欲しくないのです。」

志彗は静かに語った。


「私は、怜燈様の遠縁にあたります。貴方の母の従兄弟です。

彼女は若くして亡くなりました。ですが、ここに居れば死ぬことなどなかった。

私はこれ以上、同族を失いたくありません。

家族を、あんな形で亡くすのはもう嫌なのです!

失礼な物言いが続いてしまいましたが、どうか私に貴方を守らせてください。」

そう言った六花は、地面に頭を擦りつけた。


二人とも、俺のことを思っての反発だった。

記憶で知っているつもりだった。

でも、違った。

記憶の中の存在と、目の前の彼らは同じようで違うのだ。


「俺のことをそこまで大切に思ってくださること、本当に嬉しく思います。

ここまで思っていただけたのは、初めてです。

皆さんと同族であれることを、誇りに思います。

私、怜燈は約束します。

一年に一度、ここに必ず顔を出します。

皆さんを忘れないように、安心させられるように。

外の素敵な話や美味しいものを沢山お持ちしましょう。

ですから、今はそれで納得していただけませんか?」

ようやくちゃんと、思いを言葉にできた気がした。

「「「「怜燈様の御心のままに。」」」」

声を揃えた四人の姿は、美しく頼もしく感じた。


「この話はこれでおしまいにしましょう!

怜燈様!ご飯はいかがですか?」

沈黙を破ったのは、陽依だった。

「あぁ!食べたい!」

「では、すぐに御用意いたします!」

陽依は何故か、生き生きしていた。

「海狐。どうして陽依は嬉しそうなんだ?」

「その質問には、私がお答えいたしましょう。」

志彗が割り込んできた。

「実は陽依は、ここ数百年料理を趣味にしておりまして、

誰かに振る舞うのを楽しみにしていたのです。」

「なるほど。それは楽しみですね。」

「えぇ!そこの六花も、陽依の料理にだけは文句を言わぬ美味さですぞ!」

「なんだとばばぁ!文句あんのか?!」

「このくそがき!口が悪い!」

「……どっちも変わんないよ。」

「「うっさい!このやる気無し狐!」」

そんな会話を聞いていると、いつの間にか豪勢な料理が並んでいた。


「怜燈様!たんと召し上がりください!」

「いただきます。」

陽依の料理は、なんだか懐かしい味がした。

「俺も、料理してみようかな。」

そう小さく呟くと、

「怜燈様。怜燈様はただ食べてくださるだけで、いいのですよ!」

「その通りです!料理は陽依にお任せください!」

陽依と志彗が慌てたように、止めてきた。

食事の後は、五人でゆっくりと話をした。

皆が俺に話を楽しそうに聞いてくれた。

楽しい時間は直ぐに終わってしまった。


「じゃあ、俺は帰るよ!今日はありがとう!」


「こちらこそ、来てくださりありがとうございます。」

「怜燈!またね!」

「怜燈様。お気をつけてください。」

「怜燈様!いつでもいらしてください!」

四人の声に手を振りながら、俺は一歩を踏み出した。

帰ろう。

……俺のいるべき場所へ。

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