それぞれの色。
ー鈴音視点ー
「……時雨。先生、課題決めた?」
「なんとなくは。」
凪兄と時雨兄が、話しているのが聞こえた。
「時雨兄は、なににしたの?」
そう聞くと、
「「縁」かな」
そう返ってきた。
「どうして?「縁」なの?」
「俺は既に、歴代当主の型はもう全て教えられてるんだ。
でも、自分だけの型って言うのはなくて、悩んでたんだ。
俺は、怜燈兄さんみたいには強くないからさ、繋げる存在になりたいなって
縁を繋ぐの「縁」かっこいいいいだろう?」
「うん!」
私が言うより早く、凪兄がそう言った。
「別に焦ることは、ないと思うぞ。
なんなら、今ある型を使ってもいい。
大事なのは、自分に合うかだから。」
時雨兄はそう言った。
自分に合う型。
それが何かわからなかった。
「私なら、氷でもいいの?」
沈黙を壊すかのように、蓮華ちゃんが言葉を発した。
「はい。それでも良いと思います。」
「時雨さんは、どうして私に丁寧に喋るんですか?」
「だって、話を聞いたら蓮華さん、怜燈兄さんと年同じでしょう?
年上に、荒い言葉を使うのはちょっと……」
「なるほど。ですが、皆さん私のことは、蓮華と呼んでください。
身体の年齢と中身の差はあまりないので、
年上の方に、それも兄という立場の方に丁寧に接してもらうのは、ちょっと。」
「わかりました。いや、……わかった。
俺のことも時雨と呼んでくれ、敬称以外ならなんでもいいぞ!」
「……わかったわ!時雨お兄ちゃん!」
二人は楽しそうに笑っていた。
「えっと、蓮華ちゃん、さん?」
「紫音お姉ちゃん!蓮華です!」
「そうね、蓮華が「氷」なら私は、「毒」かしら。」
「紫音!そんなこと言わないで!
紫音の薬の力も、すごいのよ!卑下する必要なんてないわ!」
「姉様。卑下なんてしてないわ。
私、薬も好きだけど毒の方が好きなの。
それに毒の方が、未知のことが多くて面白いのよ!」
紫音姉は、心配そうな響姉をよそにどこか晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。
「姉様はもう決めたの?」
「そうね。紫音がいいならそれでいいわ。そうよ。
えっ、今なんて?」
「姉様、話はしっかり聞いてください。課題のことよ。」
「それなら、もう決めてるわ。
私は「生命」にするわ。見た時からなんかしっくりきたの!」
「素敵ね!姉様らしくていいと思うわ!」
「俺は、「想い」にする。」
「僕は、「縁」にする!」
いきなり優朝と優夜が声をあげた。
「「え?!同じじゃないの(か)?!」」
時雨兄と紫音姉が、声を揃えて驚いていた。
私も双子だから同じにすると思ってたから、びっくりした。
「お兄ちゃん、俺達は仲はいいけど、それぞれ別の存在だよ!
意見が違うからってそんなに驚かないでよ!」
優朝が少し拗ねたように言った。
「それはすまなかった。二人は、二人だもんな。
でも、どうして優夜は「縁」なんだ?
優朝の「想い」はわかるけど、優夜のは意外だった。」
「記憶は、繋がっているものだからだよ!
僕は記憶に干渉する力を持ってるけど、一人では完結しないんだ。
だから、誰かがいてこそだなって思って。」
「なるほど。しっかり考えてたんだな。流石で優夜!」
「「でしょ!」」
「そこは二人なんだな。」
時雨兄は苦笑していた。
「もちろん!俺(僕)達は、二人で一つでもあるんだもん!」
二人はとても楽しそうだった。
「……時雨、「水」、「海」、「魚」、「ご飯」だったらどれがいい?」
「うん?今なんて?」
「だから、「水」、「海」……」
「それは聞こえた。後半なんかおかしくないか?」
「?なんで、これ好きなもの、考える話じゃないの?」
「……皆の話聞いてたか?」
「うん。蓮華は氷で紫音は毒って言ってた。」
「断片だけを切り取ったのか……。
凪。少なくとも、「ご飯」はない。」
「そうか、じゃあ「塩」だな。」
「待て、どこから出てきた?!
ここは「水」か「海」、「魚」のどれかの流れだっただろ?!」
「そっか!じゃあ「さか」」
「却下。凪、お前は大人しく「水」にしておけ。
その方が汎用性が高い。」
「わかった!時雨、流石だ!」
「……ありがとう。」
そう言った時雨兄の顔は、少し疲れていた。
「時雨兄さん。お疲れのようだね。」
「うんうん。そんなお兄ちゃんに、汲みたての冷たい水を売ってあげよう。
疲れた頭によく効くよ!」
双子がふざけ始めた。
「……まったく。誰のせいだと。でいくらだ?」
「「じゃあ、五百」」
「やめなさい!時雨兄さんも乗らないでください!」
「「「痛!」」」
双子と時雨兄には、紫音姉の制裁が下っていた。
「桜花!桜花はどうしたいの?」
その横では、響姉が桜花に聞いていた。
「……私はお花が好き。だから、「花」がいい。だめ?」
「桜花、なんて可愛いの!」
響姉は桜花を抱きしめていた。
「俺はだめなのに、桜花、いいの?」
「凪黙って。」
「はい。」
今度は凪兄が紫音姉に怒られていた。
「皆、すごい。もう決まってる。」
そう呟くと、
「鈴音、まだ決まってないのか?」
凪兄が驚いたように返してきた。
「「言い方!」」
そして、二人にしばかれていた。
「ごめん。違う。てっきり「風」かなって。」
そう言われてはっとした。
私には風がある。
アウラからの、愛がこもった風だ。
そっか、それで良かったんだ。
胸の中のモヤモヤが、ゆっくり消えていった。
そして、
「私、「風」にする!凪兄ありがとう!」
「うん!」
凪兄は照れくさそうに笑った。




