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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
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居場所。

ー怜燈視点ー

「怜燈様。紹介させていただきます。

こちらが夏と冬の王族の長になります。」

そう言って、二匹の狐を紹介された。

「お初にお目にかかります。

夏の王族の長、海狐(みこ)と申します。」

そう言って黒い狐が挨拶した。

「冬の王族の長、六花と申します。

これからよろしくお願いいたします。」

白狐はそう言った。

「私の名は怜燈だ。よろしく頼む。」

俺もそう挨拶した。

しかし、言葉の扱いに迷う。

過去の記憶から、王の喋りを真似てはいるが、

目の前にいる長達は、俺よりずっと年上だ。

こちらが敬語を使うべきなのに、立場が許してはくれなかった。


「さっそくですが、怜燈様。これからどちらに住まわれますか?

怜燈様なら、皆心から喜ぶでしょう。」

海狐にそう言われた。

正直とても驚いた。

俺はここで暮らす気など、少しもなかったのだ。

「せっかくの申し出だが、遠慮させていただこう。

俺は既に、家族がいる。一刻も早く家族の元へ戻りたいのだ。

今回ここにきたのは、俺の今後について先に報告するため。

期待させて申し訳なかった。」

そう言うと、

「何をおっしゃいますか!怜燈様は、私共の神。

ここで暮らすのは当然の義務ではないのですか?」

六花が怒ったようにそう言ってきた。

「六花殿!口を慎むべきじゃ。夕綺様のお言葉は神の言葉!

反対するなどあり得ぬ!」

「陽依殿こそ少し、現実を見た方が良いのではありませぬか?

目の前にいるのは怜燈様です。

それに、神が消えて困るのは私達だけではない!月夜族全体を考えていただきたい!」

「なにを!怜燈様こそ夕綺様じゃ!本人をそう呼んで何が悪い!」

二人の言い合いは、だんだん苛烈になっていった。


「やめろ!怜燈様の御前であらせられるのだぞ!

無意味な争いはやめんか!」

志彗がそう言って、止めてくれた。

「ですが、志彗殿!王は、強いですが死ぬ時は一瞬で死んでしまいます。

さすれば、次の王がいつ誕生するかなど、わかりません!

月夜族のためには安全な場所へ居ていただきたい!」

「その押し付けこそが、王を苦しめておるのだぞ!」

再び陽依が口を挟んだことで、争いが起こりそうになった。

「怜燈様。失礼とは存じますが、どうかその理由を教えてはいただけないでしょうか。」

今まで静かだった海狐がそう言った。


「私の父と母は早くに亡くなった。それから今まで私は、旅をしてきた。

その過程で、得難い縁を得たのだ。

……もう失う訳にはいかない。

それにここには、一部の王族と色持ちしかおらぬ。

他の者は外で暮らしておるのだろう?

ならば、私だけ安全な場所で暮らす訳にはいかぬ。」

そう答えると、

「王が安全な場にいるのは当然のこと。

貴方は我々の要、失う訳にはいきません。」

素早く海狐に返された。

「それでも私は、今の家族と暮らしたい。

これは決定事項だ。変える気はない。」

そう言い放つと、答えは三者三様に返ってきた。


「流石!夕綺様!英断で御座います!」

俺を否定することを知らない陽依。

「貴方様がそこまでおっしゃるなら。

……承知しました。それ以上は申しません。」

大人しく引き下がった海狐。

「危険です。どうかお考えください。」

考え直すように諭す志彗。

「怜燈様!貴方様は一族のことを、見捨てるおつもりですか?

王としての責務を果たしてください!」

必死に訴える六花。


皆意見が違うのだ。

月夜族は豊穣をもたらす一族。

満月の夜に月へ舞を捧げることで、その土地の作物への豊穣を授ける。

これが公には知られていない、我らの役目だ。


芽吹の舞を舞う、春の王族。

彼らは、王を支えて守る役目。

成長の舞を舞う、夏の王族。

彼らは、天候を読み、最善を考える役目。

実りの舞を舞う、秋の王族。

彼らは、月夜族の歴史を管理する役目。

癒しの舞を舞う、冬の王族。

彼らは、暴走した月夜族の封印を行う役目。


皆それぞれ、役割も性格も違うのだから……

この結果になったのは当然だったのかもしれない。

それでも、俺は、俺を選んでくれた皆を、

家族を手放したくなかった。

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