鬼師匠。
ー響視点ー
覚悟はしていた。
だけど、鬼鐵さんの修行は想像以上にきつかった。
初日なんて夕食すら食べられないほどだった。
強い負荷に身体が悲鳴をあげていた。
「構えが甘い!素振り百本追加!
動きが遅い!もう一周走って来い!」
「「はい!」」
誰もが真剣に取り組んでいた。
その様子は何かに取り憑かれたようだった。
「響!雑念が混じっておる!顔でも洗ってこい!」
「はい!すいません!」
私は急いで顔を洗いに行った。
ー鬼鐵視点ー
かなりきつい修行をしているはずなのに、弱音を吐いた者は一人もいなかった。
むしろ、追い込むことで不安を紛らわせている。
そんな気さえした。
「師匠。皆やりすぎではないですか?
このままでは、体を壊してしまいます。」
時雨にそう言われるほどだった。
そう言う時雨も、生傷が絶えない生活を送っていた。
「全員集まれ!」
そう言うと、瞬く間に全員が集まった。
「これより、三日の休憩を挟む!
その間に、これから言うことを考えておくこと!」
そう言って俺は説明した。
今、皆に伝授しておるのは気刀流と言われる流派だ。
気刀流は、和国の一族である刀守家が代々継承してきたもの。
気刀流は、戦いの中で適応を繰り返す。
そのため、多種多様な型が存在する。
これまで、刀守家の当主は皆、自身の型を完成させ戦いに身を投じた。
「この三日で、皆も自身を見つめ直せ。」
「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」
そう言って俺はいくつかの代表的な型を見せた。
初代当主、刀守武の「雨」
九代目当主、刀守白雨の「色」
二十代目当主、刀守桜雨の「生命」
二十三代目当主、刀守五月雨の「時」
「父上……」
五月雨の型を見せた時、時雨は静かに泣いていた。
「皆それぞれに個性があるように、型にも個性がある。
自身の型を想像すること。それまで、鍛錬することは禁止だ。」
そう言った途端、動揺したような気配がした。
「え……」「どうしよう……」
そんな九人を背に俺は、静かに去った。




