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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
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王の記憶。

ー怜燈視点ー

「四季。お前は種のために作られた存在だ。

我が一族である、月夜族のために生きなさい。」

「はい。」

これは、月夜族初代王「四季」の記憶。


四季は、従順な王だった。

月の王には寿命がない。

だが、月夜族には寿命があった。

どれだけ大切に思っても、別れは来る。

王は生まれながらに、孤独なのだ。


しかし、神族は神にはなれなかった。

心は神族のままだったのだ。

幾度の大切なものとの別れは、彼を苦しめた。

そして彼は壊れた。

「もう楽になりたい。」

これが晩年の彼に口癖だった。

王は自身の手で、終わりを迎えることはできなかった。


「ねぇ、千彩(ちいろ)。私を救ってくれないか?」

それが彼の、最初で最後の願いだった。

彼の恋人であった千彩は、

「それで貴方が救われるなら。」

そう笑って、彼の胸に短剣を突いた。

「……あり、がと、う。すま、な、かった。」

彼はその言葉を持って、千年の生涯を終えた。


時は流れ、二代目の王である水雪(みずき)が誕生した。

ただ一つ違ったのは、彼の中には四季の記憶も宿っていたということだ。

それでも、彼は彼の人生を生きた。

しかし最後は、愛しいものの手で生涯を終えた。


三代目、四代目……

誰もが同じ結末を迎えた。


愛する者に看取られ、

ある者は涙を流しながら、

ある者は笑って、命を終えた。


王の役目は時を越え、月夜族の誰かに宿った。

王の記憶も常に継承された。

長い記憶の中で、役目から解放された者はいなかった。

あれだけ慕われていた夕綺すら、同じだった。

最後は、陽依の手で息絶えた。


「もう嫌だ。」

「どうして私だけ。」

「俺は何のために生まれてきたんだ……」

永遠に救いなどないのだ。

あるのは、一瞬の彩りと絶望だけだった。

この数年、王の記憶を観続けてきた。

感情のない記憶は、情報だ。

どんな生き方をしようが、結末は変わらない。


「俺は、もう次の犠牲を生みたくはない。

我らの神の封印を解き、神を取り戻す。」

そう宣言した。

「お言葉ですが怜燈様。

我らの神コノハ様は、厄災によって堕落し、妖狐となってしまわれました。

封印を解けば、再びコノハ様は世界に災害をもたらすでしょう。

コノハ様はそれを望まなかった。ゆえに、月の王が創られたのです。

怜燈様。どうか、コノハ様の思いを汲んでいただけないでしょうか。」

冬の王族の長である六花(りっか)に、そう言われた。

「大人しく犠牲になれというのか?」

そう圧をかけると、


「いえ。怜燈様は、月夜族を神族として存続させられる唯一無二の存在。

そして、力の源でもあります。

我々は誰も、犠牲になれなどとは申しませぬ。」

「……随分な綺麗ごとだな。冬の長六花よ。

其方は、王の苦しみを知っておるのか?

愛する者が先に旅立つ悲しさ。

自身を思う者の手を汚させる辛さ。

今までの王がどれほど苦しんだか、わかっているのか?」

その瞬間、六花の体が弾かれるように吹き飛んだ。


「怜燈様!どうか気をお納めください!

怜燈様の怒りは、もっともでございます。

ですが、今は身内で争っている場合ではないはずです!」

志彗にそう止められた。


「……すまない。六花、大丈夫か?」

「はい。こちらこそ、身の程を弁えず失礼いたしました。

私の視野が狭くなっておりました。本当に申し訳ございません。」

六花の尻尾は、地面に張り付くほど下がっていた。

「許そう。こちらも熱くなりすぎた。すまなかった。」

俺も謝った。


どうして、こんな話になったのだろうか。

事の始まりは、

「俺は里には戻らない。」

そう言ったことだった。

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