消えた金色。
ー鬼鐵視点ー
響達に剣を教えると決めて、しばらく経ったある日。
「鬼鐵さん。しばらく皆のことをお願いできませんか?」
怜燈にそう言われた。
「どこか行くのか?」
「はい。行きたいところがあるのです。」
「一人で行くのか?」
「これは私の問題なので。」
怜燈は頑なに、行き先を話さなかった。
「わかった。皆のことは任せてくれ。」
俺はそうとしか、言えなかった。
ー響視点ー
ある朝、目を覚ますと怜燈兄さんが消えていた。
「兄さん!兄さん!!」
何度呼んでも、兄さんは返事をしなかった。
「姉様。どうしたの?」
目を擦りながら、紫音が家から出てきた。
「あ、紫音。……なんでもないわ。まだ寝てなさい。」
「ううん。起きるわ。それより、兄さんがどうしたの?」
慌てて誤魔化そうとしたけど、紫音には通じなかった。
「えっと、ちょっと出かけたみたいで。びっくりしちゃったの。
……大丈夫。大丈夫よ。なんでもないわ。」
否定するつもりが、言い聞かせるようになってしまった。
「なんでもないことは、ないでしょ?
なにをそんなに焦っているの?」
紫音の紫色の瞳は、見透かしたように私を見つめていた。
あれ以来、夜はうまく眠れない。
昼は大丈夫なのに、夜だけはどうしても駄目だった。
そんな私を支えるかのように、怜燈兄さんはずっと側にいてくれた。
一緒にいるのが当たり前だった。
いないと、どうしても不安になるのだ。
「姉様。落ち着いて。」
そんな私を宥めるかのように、紫音はゆっくりと背中をさすってくれた。
「響!大丈夫か?」
いきなり声がして顔を上げると、凪が鬼鐵さんを連れてきていた。
「先生。大丈夫です。すいません。」
「謝る必要はない。大丈夫だ。」
鬼鐵さんはそう言ってくれた。そして、
「怜燈だが、しばらく留守にするそうだ。
その間、心許ないかもしれぬが辛抱してくれ。」
「兄さんが、どこに行ったか知っているのですか?」
「それはわからぬ。だが、必ず戻ってくるだろう。」
鬼鐵さんは、怜燈兄さんの行方を教えてはくれなかった。
「響姉さん!大丈夫ですか?」
時雨が焦った声で、こちらに走ってきた。
私を見つめる皆の顔はとても、心配そうだった。
「……大丈夫よ。驚かせてごめんなさい。」
皆を心配させたくはなかった。
だけど……
怜燈兄さんに、側にいて欲しかった。




