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十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
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故郷。

ー時雨視点ー

怜燈兄さんと旅を始めてから、気づけば五年の歳月が経っていた。

そして俺は、再び師匠の元に戻ってきていた。

時間が経っているのに、ここはなにも変わっていなかった。

皆で走った林も、遊んだ川も綺麗なまま。

まるで、時間に取り残されているかのようだった。


「師匠。ただ今帰りました。」

そう言うと、

「時雨。おかえり。凪も、よく戻った。」

言い方は五年前と、何一つ変わらなかった。

だけど、表情どこか柔らかく見えた。

久々に食べた師匠の朝ごはんは、少し塩辛く感じた。


「鬼鐵さん。急に来てしまい、申し訳ありませんでした。」

「お気にすることはない。こちらも、弟子達を任せた身だ。

それに、失礼かもしれぬが、俺は怜燈殿達のことも遠い関係だとは思っておらぬ。

好きなだけいてくだされ。」

「心遣い感謝いたします。

私としても、鬼鐵殿にそう言っていただけること、とても嬉しく思います。

ご不便をお掛けするやもしれませんが、しばらくの間お世話になります。」

二人はそんな会話をしていた。


ここを離れてから、たくさんのことが起こった。

あまりにも多くのことがありすぎて、振り返る暇もなかった。

それでも、立ち止まることなんてできない。


「師匠!久々に稽古をつけてはくださいませんか?」

戻ってきた次の日、俺は師匠にそう頼んだ。

「いいだろう。鍛錬は怠ってなかったか?」

「もちろんです。ですが、旅をし己の未熟さを痛感いたしました。

俺はもっと強くなりたい。

師匠。全力でいかせていただきます!」

言い終わった瞬間、俺は師匠との距離を詰めた。

「はぁ!」

勢いよく剣を振り下ろしたが、師匠に剣が届くことはなかった。

キーン!

カーン!

金属がぶつかる音だけが、林に響いていた。

しかし、それも長くは続かなかった。

「太刀筋が甘い!」

師匠がそう言った瞬間、俺の手からは剣が消えていた。

「え、どこに」

そう呟いた途端。

ゴンっ

鈍い痛みが俺を襲った。

「痛!」

「時雨!武器がなかろうが、動きを止めるでない!

その一瞬が、勝負の命運を分けるのだ!

敵は待ってなどくれんぞ!」

そう言って師匠は俺に、迫ってきた。

避けなくては、だけどそれだけではだめだ。

わかっているのに、足が止まってしまった。

「時雨!風!」

突然そう、声が聞こえた。

「!風斬り!!」

俺は、風の斬撃を繰り出した。

師匠は少し驚いた顔をしたが、次に瞬間には

「次!」

再び、剣を構え動き出した。

「風斬り!」

「同じ手が何度も通用すると思うでない!」

目を固く瞑った瞬間。

「だが、よくやった。」

ポンッと頭を叩かれた。

「……師匠。」

「最後、目を瞑ったのは減点だ。

凪もよく考えた。だが、真剣勝負への口出しはいかんな。

二人とも、島を一周してくること。」

そう言って師匠は去っていった。


「凪。声出たのか?大丈夫か?」

「……うん。出た。で、でも、まだちゃんとは、無理。」

会話が成り立った。

それだけで、嬉しかった。

「無理はしなくていいぞ。」

「ありが、とう。一緒、行こ。」

そう言って凪は走り出した。

「あぁ。てっ、速!」

俺は、急いで凪のことを追いかけたのだった。



ー鬼鐵視点ー

「鬼鐵さん。時雨と凪のこと、ありがとうございました。」

走っていく二人を物陰から見ていると、突然声をかけられた。

「……二人の師匠として当然のことをしたまで。

礼を言われるほどのことではありません。」

「いえ、私は兄として彼らになにもできませんでした。

ですから、彼らの兄として感謝させてください。」

そう怜燈に言われた。

「俺は、あいつらになにがあったかは聞いておらぬ。

ただ、稽古をつけただけだ。」

「それが、一番良かったのかもしれません。

今彼らに必要だったのは、安心できる日常だったんだと思います。」

「かもしれぬな。

ところで、なぜ響殿は影に隠れておるのだ。」

「……やはり気づかれてしまいましたね。

響。後は自分で言いな。俺は戻るよ。」

響は、ゆっくりと影から姿を現した。

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