真実。
ー怜燈視点ー
「あの日、本当ならば叶和は死ぬはずではありませんでした。」
グラシエはそう話始めた。
「どういうことですか?」
そう問うと、
「だから、それを今から話そうと……」
ベシッ
「グラシエ、口調。」
「はい。今から話しますので、静かに聞いてください。」
そう言った。
「グラシエ様。神力を分けてくださり、ありがとうございます。」
そう叶和は言った。
「気にするな。今は生きることだけ考えよ。」
「ありがとうございます。ですが、私は、私の役目を果たそうと思います。」
「何をする気だ?!」
私の静止を振り切って、叶和は立ち上がった。
「麗。お前のことを一人にはしないよ。
我が名は叶和。氷雪の神力を持つもの。我が命に従い、全てを凍結せよ。」
叶和がそう口にすると、眼下に見える村全てが凍結し始めた。
ゴフッ
凍結が進む村とは反対に、叶和からは生気が抜けていった。
「叶和!やめろ!これ以上力を使うな!」
術の強制停止を行おうとすると、
「グラシエ様。それだけは駄目なのです。これは、かつての誓約。
私達の誇りなのです。」
「それになんの意味がある!子供は、子供はどうするのだ!」
「……あの子達には、申し訳なく思います。
ですが、あの子達ならわかってくれるはずです。
だから、グラシエ様。村を守ってくださ……」
言い終わる前に、叶和は力尽きた。
村を守ること。
それが彼の最後の願いでした。
しかし私は、二人の子供である蓮華達のことを見捨てることはできませんでした。
白霧村は守護者を核として、その存在が保たれた村。
守護者がいなければ滅ぶだけです。
私は、氷に封印された蓮華を核とし今まで村を保存し続けました。
ですが、封印も解け、叶和の凍結ももうすぐ解けるでしょう。
私は村など、もうどうでも良いのです。
ただ、叶和の願いだけが気がかりなのです。
グラシエはそう話を結んだ。
前はグラシエのことをどうしようもない阿呆だと思っていたが、
「蓮華。どうしたい?」
突如グラシエは蓮華の方を見てそう言った。
「……村の存続は、諦めてもらいたいです。」
そう言った蓮華の目はとても冷たかった。
「そうか。では、掘り起こせ次第村人には別の場所へ行ってもらおう。
それで良いか?」
「はい。」
そう言った蓮華の顔は、苦しそうだった。
ー蓮華視点ー
父さんは、最後の最後まで村を思っていたのね。
グラシエ様の話を聞いて、少し寂しくなった。
父さんは、村と母さんを愛していた。
私達兄妹のことはいつも二の次。
寂しかった。
仕方ないと、言い聞かせてきた。
でも、死の間際ですら村のことばかり。
失望した。
「どうしたい?」
グラシエ様はそう聞いてくれた。
私だって村の人は嫌いじゃなかった。
村長のおじいちゃんはいつも、お菓子をくれたし、
雪緒お兄ちゃんはよく遊んでくれた。
でも、私達を裏切ったのも村の人間だ。
なのにどうして?
彼らを助ける必要はあったの?
いくら考えてもわからなかった。
「蓮華ちゃん。大丈夫?」
怜燈さんがそう聞いてきた。
「大丈夫だと思う?父さんは私達を捨てたのよ?」
「……そっか。」
怜燈さんはそれだけしか言わなかった。
ー怜燈視点ー
蓮華ちゃんの怒りはもっともだ。
だけど、叶和さんにはもっと別の意図があったんじゃないか。
そう考えてしまった。
グラシエの話だけではわからない、なにかがある。
そう思えて仕方がなかった。




