時雨の覚悟。
ー時雨視点ー
夜、微かな物音に目を開けると、兄さんが家から出ていくところだった。
おそらく復讐に行くのだろう。そう思い追いかけた。
最初は兄さんを止めるつもりだった。
けれど、兄さんの紅く光る目を見ているうちに、
「俺だって。」
そんな考えが湧き上がってきて、次の瞬間、
「俺も連れてって下さい。」
そう言っていた。
理性では、止めなければと思ったのに気持ちが抑えられなかった。
俺だって悔しかった。
苦しかったのだ。
あの時は、それが一番良い選択肢だと思った。
だけど、もっと違う選択もできたんじゃないだろうか?
そう思う自分がずっといた。
だからこそ、行かなければならなかった。
ただ、双子が付いてきたのは想定外だった。
その力は凄まじかった。
思わず「えぐ……」と言ってしまったほどだ。
双子を怒らせてはいけない。
そう思った瞬間だった。
奥に進むにつれ、敵は増えていった。
だけど、そこまで強いものは一人もいなかった。
それに、怜燈兄さんが想像以上に強かったのだ。
出会ってから一度も戦闘する様子は、見たことなかった。
兄さんは火、水、風、土、光全ての属性の気術を使いこなし、敵を圧倒したのだ。
その姿は、踊り子のようで、辺りの惨状には似つかわしくも美しかった。
優朝と優夜の力もあって、砦の制圧には一時間もかからなかった。
中にいた連中は、誰一人生き残らなかった。
砦はとても静かだった。
全てが終わり、自分がした事を目の当たりにしても、俺の心は揺らぐことはなかった。
いい気味。
そう思うほどだった。
同じ人間のはずなのに不思議だった。
ー怜燈視点ー
時雨の剣術は、人を前にしても崩れる事はなかった。
むしろ洗練されたようで、つい魅入ってしまったほどだ。
「気刀流」適応を繰り返す剣とはよく言ったものだ。
そう思いつつ俺は、目の前の敵を黒焦げにしたのだった。
「や、や、やめてくれ!」
「お願いします!命だけは……」
「だ、誰か!助けてくれ!殺される!!」
今日だけで、数多くの命乞いを聞いた。
しかし俺の心は動く事なく、次々と敵を手にかけた。
やはり、神族と人間族は大きく異なるな。
神が愛した人間との差を突きつけられたようだった。
神族は理性的で冷徹な種族だ。
目的のためなら、どこまでも冷酷になれる。
……だが、そんな神族すら惹きつけたのが人間だった。
その結果が、これだ。
あっという間に砦は壊滅してしまった。
「時雨、戻ろう。」
「はい。」
そこに、殺した人間への情などなかった。
俺達は、何も言わずに優朝達の元へ向かったのだった。




