表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十色の追想  作者: 詩庵
成立編。
56/80

傷跡。

ー怜燈視点ー

蓮華を保護してから三日、俺達は近くの森で休息を取っていた。

暴走の代償は大きく、俺は身体を動かせないでいた。


しかし、俺より響と凪の状態が酷かったのだ。

生々しく残った傷跡以上に、心に負った傷は深かった。

拠点を作ってすぐ響は、まともに会話ができる状態ではなかった。

あの雪山で発した言葉が嘘なのではと思うほど怯え、

会話も食事も何もかもを拒絶したのだ。

「……姉様。少しでいいから何か食べて、身体がもたないわ。」

懇願するかのように紫音が声をかけたが、

返ってきたのは恐怖に染まった視線と沈黙だけだった。

無理にでも何かをすれば、響は壊れてしまう。

それが、全員の共通認識だった。

一方で、凪は拒絶こそなかったものの、まともに話せなくなっていた。

普段から、誰とでも活発に話すわけではなかった凪だが、

いつも一緒にいる時雨との会話すら困難を極めていた。

「凪。すまなかった。」

「だ、だだ、だぁ……だ、あ…………。」


「凪……」

悲しそうに俯く時雨を、凪は申し訳なさそうに見つめるのだった。


何があったかなんて、聞くまでもなかった。

自分の軽率な行動に、腹が立って仕方がなかった。

「ごめん」

その一言ですら、俺は言葉にできなかった。

謝って許してもらうなど、二人が許しても俺は自分を許せない。

行動を示さなければ。

俺はまだ重い身体を叩き起こし、外へ出た。


外は暗く、月の光が辺りを冷たく照らしていた。

その光は、俺の身体を瞬く間に回復させた。

俺は変化を解き、本来の獣人の姿に戻った。

「怜燈兄さん。どちらに行かれるおつもりですか?」

後ろから声をかけられた。

「ちょっとそこまで。」

「兄さん、本当に行くつもりですか?」

「何がだい?」

「響姉さんも凪も、そんなことは望んでないと思いますよ。」

「時雨、何が言いたいんだ?」

「俺も連れて行って下さい。」

「……へ?」

思わず、気の抜けた声が出てしまった。

てっきり止めに来たばかりだと思ったのに。


「時雨、自分が何を言っているのかわかっているのか?」

「はい。二人をあんな目に遭わせた連中のところに行くのでしょう?

俺も連れてって下さい。このままでは、俺の気も収まりません。」

「何故だ、時雨には何の落ち度もなかっただろう?」

「そうでしょうか、あの場での俺の判断は最善だったかもしれません。

ですが、家族を見捨てて逃げた事に変わりはありません。

仕方なかった。

そんなの言い訳です。俺なりのけじめをつけさせて欲しいのです!」

「それを、俺が許可すると思うのか。」

「ええ。許可せざるを得ないと思います。」

「なぜ?」

「許可してくださらないと言うのであれば。」

「言うのであれば?」ゴクッ

「大声で皆に、兄さんの計画を泣き叫びながら言おうと思います。」


「……それが通じるとでも、?」

「では、3、2……」

「わかった。わかったから、少し待て。少し時間をだな、あー……」

「いーーーーーーー。」

「やめなさい。わかった、連れて行くから、泣き叫ばないでくれ……」

「ありがとうございます。」

「頼むから、無茶をしてくれるなよ。」


「「わかりました。」「「わかった!!」」」

「うん??え……?」

「どうかしましたか?」

「どうしたも、こうしたも……優朝。優夜。出てきなさい。」

「あれ、ばれちゃった。」「ばれちゃったね。」


「お前達は留守番に決まっているだろ!!」

「えーー?!何で?!」「何で?!何で?!」

「危ないからに決まっているからだ、それに良い子は寝る時間だ。さっさと寝なさい。」

「「いや!寝ない!!一緒に行く!」」

「だーめだ!」

「「聞こえなーい!」」

「二人とも頼むから、大人しく家に居てくれ……」

「僕、役に立つと思うよ?」「僕も役立てる!」

「それでもだ。駄目なものはダメだ。」

「怜燈お兄ちゃん。いつまでも僕らが純粋だなんて、夢みてない?」


「いやいやいや、お前達、六歳だよな?!まだ可愛い双子でいてくれ……」

「何言ってるのさ。そういうものだよ!

人間族と一緒にしちゃダメだよ!!」

「だとしてもだな、危険とわかっている状態でこれ以上巻き込む訳にはだな。」

「もう手遅れだよ!それにこれは僕達が決めた事!巻き込まれたんじゃないよ!」

「それに、僕達。怒ってるんだ、危険なことはしないからさ、お願い。」

双子に交互に説得され、俺は結局言いくるめられてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ